第13話:筋肉の休息(チートデイ)
魔人ザルバスを「物理的な抱擁」で星にした翌日。王都には平和が戻ったが、アレンの財布には激震が走っていた。
「剛田さん……あの、確かに世界は救いましたけど。タンクトップの買い替え費用と、魔石プロテインの代金で、僕のBランク報酬が消し飛んだんですけど」
「少年よ、案ずるな。筋肉が満たされていれば、金などという紙切れは後からついてくる。それよりも重要な問題がある……今日は**『チートデイ』**だ」
剛田の目が、かつてないほど鋭く光る。それは魔人と対峙した時よりも、はるかに恐ろしい執念を宿していた。
王都最大のバイキングにて
一行がやってきたのは、王都でも有名な高級ホテル「ゴールデン・ミート」の食べ放題会場。
「さあ、全種類持ってくるがいい! 私の40兆個の筋細胞が、炭水化物と脂質の『お祭り』を待っているッ!」
剛田が席に着いた瞬間、会場の空気が変わった。
剛田は皿を使わない。大皿ごと、あるいは調理器具ごと料理をテーブルに運び込む。
「剛田さん! それ、ローストビーフを塊のまま持ってきたらダメですよ! 他のお客さんの分が!」
「案ずるな少年。これは私の『前菜』だ」
剛田が猛烈なスピードで肉を咀嚼し始めると、その咀嚼音だけで周囲の客が「地鳴りか?」と窓の外を確認し始める。
シュールな光景
隣の席では、エレナが「ああっ、頬張るたびに動く顎のライン……野生の獣のようで素敵……」と、自分の食事を放置して、剛田の「咀嚼する筋肉」を熱心にデッサンしていた。
一方、ジャックは店員から「あのお客様の支払いは大丈夫でしょうか?」と何度も確認され、半泣きでアレンの背中に隠れている。
「ジャックさん、諦めましょう。剛田さんの食欲は、魔王の呪いよりも解除不能なんです」
「おい見ろ、アレン! あの筋肉ダルマ、今度は**『パスタを茹でる前の乾麺のまま』**食おうとしてるぞ!? 消化器官どうなってんだよ!」
「ふむ……。乾麺のアルデンテ、歯ごたえ(レジスタンス)があって悪くないな」
ボリボリと音を立ててパスタを貪る剛田。もはや食事というより、口内の筋肉トレーニングである。
店長の絶望
「も、もう勘弁してください! 当店の在庫が……王都の食糧庫が空になります!」
店長が涙ながらに縋り付くが、剛田のフォークは止まらない。
「店長、安心しろ。私は食べた分だけ、明日からのトレーニングで『還元』する。……少年、仕上げだ。**デザートのプロテイン・ケーキ(特大)**を注文しろ」
「そんなメニューないですよ!!」
結局、剛田は会場にある全てのタンパク質と炭水化物を胃袋に収め、お腹が全く膨らんでいない(全て筋肉に吸収された)という怪奇現象を披露して店を後にした。
夕暮れの街角。
パンパンに張った(パンプした)胃腸をさすりながら、剛田は満足げにゲップ(衝撃波)を一発放った。
「少年。食欲を制する者は、バルクを制する。今日は良い『給油』ができた」
「少年。覚えておきたまえ。ダイエットとは『食べないこと』ではない。食べたものを全て筋肉という名の燃焼炉で焼き尽くす、覚悟のことなのだ」
(……店長、出入り禁止の張り紙に剛田さんの似顔絵描いてたよ。しかも指名手配犯よりデカいサイズで。)
【剛田の今節の名言】
「胃袋もまた筋肉である。限界まで詰め込むことで、消化能力という名のポテンシャルを引き出すのだ。……ところでアレン、二軒目はどこだ?」




