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Lapis-landiA  作者: 八広まこと
Season1

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22/74

EP6.:紅石英(ローズクォーツ)①


「公開剣技会?」

「そ。明日。」 

 道端でばったりと会ったリシリィにピラリとみせられたチラシ。

 そこには、軍の剣技指導の様子を見学、体験できるという一般向けの会のお知らせだった。建国記念式典の前のイベントととして、小規模ながらも、お祭りのような催し物だという。

 ただ、その一方で、

「勧誘と、なにより牽制。他国のスパイも勿論、可能性があるから、そこに、こちら側の戦力の一部を提示することで歯向かう気力をなくさせる、ってのもある。」

「そんな、小さなイベントで、意味があるのか?」

「まぁ、ね・・・。」

 過去に合った二つの戦争。後者は完全に一個人の力など、到底及ばない世界だった。降り注ぐ炎の雨に、ただ成すすべもなく、呆然と空を仰ぐしかできなかった記憶は、シオンだけではなく、味わった人間の脳裏から決して、消えることはないだろう。

 ただ、悪魔の様な時間はそんなに長くは続かなかった。不意に天災の様な日々が消え、気付けば世界最大の大国と謳われた国が崩壊し、ルミナスプェラの建国されたのが、今から8年前の、3週間後。ただの一度も空から炎の雨が降ることはない。

 リシリィが言葉を濁すのは、そこに機密事項があるのだろう。もしかしたら、公開剣技会が牽制になる理由というのも、またなにかあるのかもしれない。

 それ以上は問うことをせず、シオンは、リシリィの言葉をまった。

 そんな様子を好ましく思えて、あまり、表情の崩れないリシリィが小さく笑う。

「勿論、一部の区間だけだけど、普段入れない場所を見れるって言うので結構人がくるし。」

「へぇ・・・。」

「おまけに、今回担当するのが第四でうちらだから。」

「・・・そう、なのか?」

「うまく行けば、うちのボスと立ち合えるかも。」 

「本当か!?」

 リシリィの言葉にシオンが身を乗り出して目を輝かせる。

( やっぱ、そういうとこ可愛い・・・。 )

 そんな事を考えながら、リシリィは、待ってると手を振った。







「あー・・・。」


   ─── クソッタレが・・・。


 眼の下に隈を作った状態で。

 模擬刀片手に、クロウが思いっ切り舌打ちをする。


 公開剣技会当日。

 年に1回開かれる定例の公開行事は、本来なら何てことないが、今回は建国式典まで一ヶ月を切った段階での実施となった。準備に追われた第四大隊長の面々は連日多忙となり、特にクロウ=シキジマ第四大隊長は日々不機嫌の閾値を限界突破させ、見事な面で当日を相迎えることとなった。

 隣で同様にいつもの好青年がガラの悪いチンピラ風に笑って、ハルオミ=シェラ=アルトシアンは肩を落とす。

「口がわるいです、ボス。」

「悪くもなるわ。コイツのせいでマジ時間がねぇんだけど・・・。」

「それなりに愛想よくお願いします。」

「勧誘はオレの仕事じゃねぇもん。どーせオレは牽制でしょ?なら、それなりの愛想でいきますよ?」

「はいはい・・・。」

 おざなりの返事の後で、ハルオミは大あくび。眠い目を擦りつつ、今日の運営の為の資料を丸めて首を叩く。

「式典まで、あと3週間、ですからねぇ・・・。」

「誰だよ。こんなタイミングに公剣(=公開剣技会)ぶっこんだ奴ら。」

「そうですねぇ・・・。ファウスト爺に聞いてみます?」

「・・・・・。絶対あのジジイだ。嬉々としてぶっこみそうだわ。」

「はははは・・・。」

 そうして、薄暗い関係者通路から演習場へと出てきた二人は、まぶしさに目を細めた。睡眠時間の足りない頭と目に、昼間の太陽光は強過ぎる。グラグラと回る頭に、いっそしゃがみ込みたい気持ちをぐっと堪えて、クロウは息を吐いた。


 一般開放スペースは、中々のにぎわいを見せていた。3週間後に控えた式典の事も会って、その、前祭の様にも扱われている。小規模ながらも、周囲に屋台が並び、辺りには食べ物を口にしながら、思い思いの方法で、公開剣技会を楽しんでいた。

 そして、柔剣道場で行われていたメインイベントは予定通り進んでいた。

 隊員達の剣技披露後、模擬刀を使用した剣撃指南および体験は、子供向けに行われているものから、対剣術経験者を対象とした軍式の体験試合などが行われていた。

 中でも、毛色の違う大隊長が直々に来る、ということもあり、物珍しさや興味で見学に来るものや、どんなものか体験したい、実は一矢報いたい者までがそれなりにこの柔剣道場へ集まっている。

 子供たちへの指導が行われているかたわら、道場の端で待機しつつ、クロウは観客の方へ目を向けた。幾人か、牽制すべき人物として該当する面構えが、何人か、見える。

 ソイツらを眺めながら、もはや、眠気と疲労が限界のクロウは、体外用の表情などしていなかった。

 彼の前を通った人間が、尽く萎縮して通り過ぎて行く。

 完全に目が座った状態。頭にあるのは


( とっとと終われ。 )


 それだけだった。


 そんなクロウの様子を横目に、自身も限界が近いハルオミも、ただ、

( も、いいやー・・・ )

と、やや投げやり気味で、サクサク進行を進めていた。

 そうしてようやっと、最後の演目として、クロウが道場の真ん中に立つ。彼が中央へ歩みを進める度に、彼がそうだと、ヒソヒソ声が周囲を震わす。しかし、それが徐々に小さくなり、消え、先程まで賑わいを見せていた雰囲気が、一変する。


 見事なほど凶悪な面した大隊長に、周囲の空気が絶対零度に下がった。


「はーい、最後になりましたが、あのーえとー、ぼくらのボスに、挑んでみたいひとー!」

 この極寒の空気に似合わない、軽すぎるハルオミの言葉に、周囲の観客が無言のまま全否定してくる。

 一矢報いてやろうとまで考えていただろう大柄な男達の表情が、こぞって萎縮するのがわかったが、それを読み取りフォローするほどの思考が、もはやハルオミには残されてなかった。


 いないならそれで終わり、とハルオミは終了のアナウンスをしようと、して・・・


 すっと上がった予想外の挙手に、ふと目を向ける。

 

「へ?え?あ、あれ・・・?」


 しっかりと、混乱を声にだしたハルオミと、なによりも、


「・・・・・。」

( いやいやいや・・・。なんでいんの? )


 表情を変えない中で、脳内大混乱のクロウが、挙手の相手に視線を向ける。



 周囲の、注目をあびながらも、しっかりと手を上げてみせたのは、あの時同様、目を輝かせた、シオンだった。








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