↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
20/45

ここにいる理由 10 「ソフィア」

 バカだ、と私はよく言われる。


 直接的に言われたことは少ないが、そのニュアンスを含む言葉を言われたことは数えきれない程あった。

 実際に考えが足りてなくて怒られる、ということが昔からあったので事実その通りなのだと思う。

 それがいけないことなのかどうかを考える前にやりたいことをやるし思ったことを言ってしまう。

 反省も後悔もするけどなかなか変えられない。昔からの悩みだ。

 姫様に相談しても、「考えなさいよ・・・。」と呆れられるのみだった。

 それでもなんとかやって来たし、姫様のお付きとして親衛隊にも入ることが出来た。

 これからもそんな風になんとかやっていくのだと思っていた。


 そして、二日前、あの人と出会った。


 正確には「見た」だけで、初めて話をしたのは昨日のことだけど。

 その彼を初めて見た時は酷いものだった。物理的に。

 ぐちゃぐちゃになって、死んだだろうと思ったけれど彼は生きていた。

 そして彼の顔を初めて見た私は、「かっこいいな。」と思った。

 けど、それは口に出ることは無かった。

 今まで思ったことを深く考えずに口走っていた私が、口には、しなかった。


 初めて隠し事を、したのだ。しかもそれがなんだか心地よくて。


 ロスアレス隊長に言われて彼を看病した私は、彼の事情を聞いて、それから姫様にも言われて、彼のお世話をすることになった。

 近くに居られることが、なんだか嬉しい。けど口には出さない。私は少し成長できたように思えた。言わないのは、心地良い、と知った。


 そして今日。いきなりやらかしてしまった。

 寝間着姿のままで彼の部屋を訪ねてしまった。きっと色々見られたと思う。

 彼はそんな私のことを何も言わないでくれた。私の体の感想なんて言われていたら、恥ずかしくて死んでしまっていたと思う。

 私なら言うとこだ。でも彼は言わなかった。

「言わない」ことで人を傷つかせないこともある、と知った。

「恥ずかしい失敗は指摘しなくてもいい時がある。」と、気付けた。

 また、私は知らなかったことを知った。


 彼と一緒に居ると、知らなかったことを知ることが出来る。私は彼と一緒に居たい、と思うようになっていた。


 その後、彼と別れて学校に向かう。

 特に何事もなく、勉強をして終わりだ。

 そして急いで彼を迎えに行く。たぶん親衛隊の練兵場だろう。


 彼は剣を振っていた。一振り、一振り、丁寧に。

 どうしてこうも、彼に惹かれてしまうのだろう。

 最初は「かっこいいな」と思ったけど。顔の造りで言えばロスアレス隊長の方が整っていると思う。

 わからない。

 なら、聞いてみようかな。

 いやいや、ちょっと待って。それは「いいこと」なの?

 せっかく言っていいのかどうかを考えるようになれたのに、それではいけないんじゃないだろうか。

 少し考える。

 彼に「可愛いね」「好きだよ」と言われたら、私はどう思うだろうか。

 そんな妄想をして、人知れず悶える。幸い彼には気づかれてないようだ。

 私は、嬉しい。なら、彼はどうだろうか。

 わからない。

 彼が私に気づく。こちらに近づいてきた。

 言いたい。でも、迷惑だったらどうしよう。

 言えない。怖い。


 その後はあちこちを周る。彼は作戦のことを必死に憶えようとしていた。

 自分のことでも手一杯だろうに、様々なことに悩んでいるだろうに、彼は前を向く。

 そんな彼を見ているうちに、私にも勇気が湧いてくる。


 言おう。

 彼と色々お話がしたい。

 私は決意して。

 その夜、彼の部屋を訪ねた。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。