表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
48/49

第048話 持ってる少女と最低限のお仕事

 二回裏の私達の攻撃と三回表の相手の攻撃は、下位打線の為、私と愛梨さんが技と力でそれぞれきっちり抑えた。二回裏先頭の六番はツーボールツーストライクまでカウントがいったが、どうやらそれで愛梨さんは修正しきったようだった。


 やっぱり次に試合が動くのも上位打線やクリーンアップかな。

 ベンチに戻りそう思っていると瑞季ちゃんに声を掛けられた。


「さ、紗友さん、私、二打席目は絶対出ます」


 一打席目に三振してしまった際の遣り取りを意識しているのだろう。その表情には決意が滲み出ていた。


「うん、期待してるよ! ホームに返すのは任せてね」


 三回裏先頭の九番は緩急を上手く使われてアウトになってしまったが、一番の瑞季ちゃんに回ってきた。

 さて、瑞季ちゃんはどう打つのかな?


 打線が二巡目に入ったそこで、愛梨さんの投球が変わった。初球、外から入ってくるスライダーでストライク。瑞季ちゃんもコースからおそらくスライダーと分かってはいたのだろうけれど、外からの大きい変化に、流石にスイングしにいけなかったようだ。


 ワンストライクとなって二球目は、外の際どいコースのストレート。若干ボール気味に思えるが、今日の主審はそのコース、ストライクのジャッジをしている! 私が投げてストライクになったコースだ。

 そんな私の心配をよそに瑞季ちゃんは躊躇なく踏み込んでスイングし、最後は左手一本のフォロースルーでライト前ヒットを放った。


 そっか。瑞季ちゃんのことだから、私が投げてストライクの判定になったボールもセカンドの守備位置から見ていたはず。きっと相手の三番打者から情報を得た愛梨さんが、そのコースを使ってくるかもって思ってたんだね。それにしても、セカンドから見るのと打席で見るのでは大違いのはずなんだけど、よく打ってくれたよ!


 ワンアウト一塁とランナーが出て二番。ここで向井コーチは送りバントのサインを出した。ただし二番は最初からバントの構えはしない。送りバントをしますよ、と示してしまえば、愛梨さんは初回のセーフティバントのように高目のストレートで打ち上げさせたり、スライダーなどの変化球でバント空振りを狙ったり出来る。だから送りバント一つとっても一発勝負だ。


 二番への初球はアウトローへのツーシーム。安易に振りに行くと引っ掛けてしまうこの球を、二番はしっかりとバントして一塁線に転がした。ワンアウト一塁からのバントは想定外だったのか、相手の内野が構えを見てから慌てたように動き出す。瑞季ちゃんは無事二塁へ行き、バッターランナーはアウトとなった。


 ツーアウトランナー二塁で前の打席でホームランを打っている菜月。もう一度ホームランをとは言わないが、タイムリーを打つか私に繋いで欲しいな。


 初球はアウトロー、ボールになるカーブで慎重に入ってきた。菜月は余裕を持って見送る。うん、良い感じだね。二球目はインハイにストレートが来る。果敢にスイングするも、真後ろへのファウルボール。一打席目にホームランにしたストレートだけど、緩急とコースを上手く使われるだけで捉えきれなくなってしまう。


 ワンボールワンストライクとなって三球目。インコースのボールからストライクになるスライダーが決まる。菜月は中途半端なスイングになってしまって悔しそうな表情を見せる。四球目、アウトローにチェンジアップが投じられた。初回に瑞季ちゃんを三振に打ち取った球だ。


「このっ!」


 だが、菜月は堪えて堪えて……バットに当てた。しかも左打者特有の駆け出しながら打つようなスタイルで。打球はショートの斜め前、勢いが死んでボテボテのゴロが転がる。早くもトップスピードに乗った菜月は一塁目掛けて大きなストライドで走る。ショートが全力で前進して捕球し、一塁へ送球する。ファーストが捕球するより先に菜月の足が一塁ベースを踏んで駆け抜けて行った。


 ショートへの内野安打となり、その間に瑞季ちゃんは三塁へ進んでいる。これでツーアウト一、三塁だ。うん、今日の菜月は何か持ってるね。

 さて、追加点のチャンスで私に打順が回ってきたよ!


 一番から三番が作ってくれたこのチャンス、是非ともモノにしたい。前の打席はホームランの直後でコントロールを乱してフォアボールだったけど、この打席は勝負しかないだろう。四球だとファーストランナーまで得点圏に進んでしまうしね。それに祐一も第一打席で綺麗に打ったし、五番が与し易いとは愛梨さんも思っていないはず。


 打席に入り、初球。愛梨さんは自分の投げる球で最も信頼を置いているのであろう、外からのスライダーを投じてきた。だけど、第一打席でスライダーの軌道を見たし、それはついさっきの瑞季ちゃんへの入り方と一緒だ。私も思いっきり左足を踏み込んでスイングすると、鋭く曲がり入ってくるスライダーを芯で弾き返した。打球はセンター前で弾み、サードランナーの瑞季ちゃんがホームインして、待望の二点目が入る。


「ふう。最低限の仕事は出来たかな」


 私は一塁ベース上で安堵して独り言ちた。

 なおもランナー一、二塁で打席には五番の祐一というチャンス。


 二人の勝負はファウルでカウントを稼ぐ愛梨さんに対して、ボールになる誘い球の変化球を見極める祐一といった構図で、フルカウントまで粘ったものの、最後はインローのストライクからボールになるスライダーで空振り三振に倒れてしまった。愛梨さんのあのコースへのスライダーは、右バッターにとっては突然視界から消えるように感じられるだろうから仕方ない。フルカウントでバッターが手を出したくなるのを利用された感じだね。


 二点目も取れたことだし、しっかり守っていこう!


お読み頂きありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ