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(9)
この日は雨だった。
綺麗な夜景には似合わない、
灰色の雨だった。
とても嫌な予感が頭をよぎり
胸騒ぎを覚え急いで向かったけど、
手遅れだった。
病室には彼女は居なかった。
否
この世から彼女は消えてしまっていた。
いつも彼女が居たベッドは空で。
当たり前が崩れる音がした。
病室は寂れてしまっていた。
僕は中へ入り、
空のベッドにそっと腰を下ろす。
「こら!たっくん!
そこはちーちゃんのベッドよ!」
「―――っ!?」
声が聞こえた気がして
振り返ってみても、そこに彼女は居ない。
『あら。ふふふ。
先生には内緒よ?
添い寝しましょ!』
そう言って悪戯っぽく笑う彼女は、
『たっくーん!!ねぇねぇ!一緒にかくれんぼしましょー!』
無邪気に笑う彼女は、
『たっくん!』
彼女は、
『……たっくん?』
ちーちゃんは、
『―――――たっくん。』
君はもうっ、
『おにーさん』
いないんだ―――。
『ねぇ、約束よ?
死んじゃダメよ。』
「―――っ!!」
自然と涙が零れる。
「うぅ……あぁ、、、あああああああああ!!」
――――――君はもういないんだ。