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彼女が死ぬ三日前。
一枚の手紙を担当医師に渡していたそうだ。
僕宛ての手紙。
可愛らしい桜色の便箋に入れられた、たった1枚の手紙だった。
彼女からの最後の言葉。
僕は見たくはなかった。
これを見ると、手紙を読んでしまうと
僕と彼女との関係が終わる気がして。
彼女との日常が思い出に変わってしまう気がして、
僕は手紙を読むことを躊躇っていた。
だけど、彼女からの言葉を拒否できるほど
僕は強くはなかった。
震える手をなんとか動かし、
ゆっくりゆっくりと手紙を取り出す。
固く閉じた目を恐る恐る開く。
薄く開けた目に飛び込んできたのは、
大きく書かれた、彼女らしいたった一言だった。
驚きと喜びと―――。
決してマイナスではない感情が心を支配する。
「あははっ。」
温かい。
どこまでも温かい感情が僕を満たした。
空を見上げ、彼女のことを想う。
「ちーちゃん。
――――――ありがとう。」




