7話「可愛い」
今回は少し闘いは休憩…?
「えっと…お疲れ様?」
「え、あーうん。」
僕は橋川と別れた後に何と無く、気分を変えたくなり外の蛇口があるところに行き、顔を洗ってたら、櫻井に話しかけられた。
でも、櫻井はどこか動揺を隠せない様子で話しかけてきた。
「どうしたんだ?」
服で顔についた水を拭いてから櫻井に聴いた。
「え、あっ、えっと…。」
「本当にどうかしたのか?」
いつも以上に言葉に詰まっている櫻井が気になって、彼の顔を覗き込む。
こいつが喧嘩強いとか、今のこいつからは全然想像つかないんだが…。
「柚樹、お前…さっき、あいつと…。」
「さっき?あいつ?」
僕はそのキーワードに関する事を思い出そうと少し考えてたら、あぁ!と声を出していた。
「お前忘れてたのか!?」
櫻井が驚いた顔をして聴いてくる。
そんなに血相を変えるほどの事なのだろうか。
キスをしたと言う事は。
「あー今。だってあれ事故だし。それに僕ら男同士だろ?」
今の設定上、僕は男だし、別になんとも思わない。
今は、そんな事より橋川の怪我の方が気になる。大丈夫だろうか。ケガ…ひどくないだろうか。
あとで、時間が経ってから橋川と会おう。
「そうだが…」
何か言いたいのか櫻井の言葉には濁りを感じる。
「もしかしての、もしかしてだが…空我は橋川の事…」
「んグッ」
櫻井がいきなり僕の口を両手で抑えてきて息が出来ない。
「ないない!ぜってーない!」
両手で僕の口を抑えたまま声を荒げる。
そこまで否定されると、人間は怪しいと思うのが普通だと言う事を櫻井は知っているのだろうか。
必至に誤解を解こうと喋ってる櫻井が可愛く思えてきた。
僕は櫻井の腕を持ち、彼の手を払う。
「空我。お前、可愛すぎ。」
「はぁ!?」
僕は微笑んでいて、櫻井の頬は赤くなっている。
今、他人から見れば危ないやつらとでも思われてるのかな?
でも、ここ男子校だし、キャーキャー言ったり気持ちがられたりすることは無いだろうからひとまずは安心できるかもな。
腐男子がいなければ…。
と言うかまず、僕は女だ!
「柚樹、お前そんなことをさらりと言うやつだったか?」
沈黙が浮いたあと、櫻井が聴いてくる。
柚樹だったら、言わないだろうな。
実の双子の妹でも思うこと。
「…たまに?」
息苦しい嘘をつく。
「お前らやっぱ兄妹だな。」
櫻井が笑った。
「お前ら?柚葉のことか?」
そうそう。と櫻井が頷く。
「その子に言われたんだ。可愛い。って。」
そう言えば、始めてあった時そんなことを言ったかもしれない。
「お前らの中で可愛いって言葉で流行ってんの?」
「流行ってない。」
断言する。
「空我が可愛いだけだろ。」
「なんか、今日の柚樹気持ち悪いぞ…?体調でも悪いのか?」
櫻井が僕の額に手を当ててくる。
「さっきまで、可笑しかった奴に言われたくねー。」
「うわっ、ひでぇー。」
櫻井がマジな顔で言ってくる。
ぷっ。
二人で吹き出した。
「お前、そこマジな顔するなよ。」
僕の言葉を合図にまた二人での笑った。
「えーテステス……。次の対戦に入ります。」
アナウンスが聞こえてくる。
「これに勝てば次は準々決勝だな。」
櫻井がアナウンスが鳴り響いたあとに言う。
「そうだな。」
「俺とお前が戦えるのは決勝のみ。負けるなよ?」
窘めてくる。
「負けるかよ。」
僕は笑っていた。
可笑しかったからじゃなくて勝負が楽しみだったから。
「あーはやく、空我と戦ってみてー。」
「散々俺と戦ってまだそれ言うかよ。」
「そうだっけ?」
「そうそう。」
柚樹と櫻井が対戦ねー。
まぁ、柚樹の完全敗北だろうけど。
でも、櫻井は柚樹のことライバルって言ってたし、少しは競ってたのかな。
「ま、お互い頑張ろうな。」
櫻井の笑顔が見える。
「あぁ!」
そして二人で体育館へと入って行った。