24話『空を見上げる』
彼を始めて見てから二年と3ヶ月が経った。
俺は毎日のように彼と出会った公園に行っては遠回しに彼を探して、結局は空を見上げている。
季節はあれから三回目の冬になろうとしている。風が冷たくてつい武者震いをしてしまう。
「…生きてんだよな。」
こんな寒い中、彼は無事に生きているのだろうか。縁起もないことを考えてるかも知れないけど、姿を見ていないのだから心配するしか出来ない。
学校の中で彼を探して見たけど、彼らしき姿はどこにもなかったし先生に聴いても分からなかった。
だがら、違う学校に通ってるんだと思う。そしたら俺はやっぱりここで彼を待つことしか出来ない。
「あぁー!もう!!」
そんな無力の自分に腹が立ってつい大声を出してしまう。
つんつん。
肩が何かがのったようなそんな軽い重みを感じる。
「んだよ。」
その方に乗ったものを払おうとしたらそのには生暖かいものがあった。
幽霊とかじゃないよな?まだ、夜になってないし。そんなわけねぇよな。うん。
「あっ、やっぱり君だった。」
勢いで後ろを向いたらそこには俺が興味を持っている彼が嬉しそうな顔をして立っていた。
「お前…なんでここにいるんだよ。」
嬉しさを出すのはやめたら、こんな思ってることとは裏腹の態度の言葉が出た。
「え?うーん。君に会える気がしたから。」
「なんだよそれ。」
俺と同じじゃないか。心の中ではそう思っていても素直に言葉にすることが出来ない。結局嘲笑ってそれしか言えなかった。
「君も同じと思ったのになー。」
彼は腕を後ろで組んでほおを膨らました。
「俺もお前と同じ気持ちだってわかって嬉しい。」そんな言葉がなぜか恥ずかしくて言えない。
「そんな分けないだろ。」
こんな思ってもいない言葉しか、俺の口からは出なかった。
「ふーん。まぁ、いいけど。それでね!君にはお礼をいいたくてここにきたんだ!」
「お礼?」
「そっ!君に自信をもらって僕は成し遂げることが出来ました!なーんてねっ。」
自信?成し遂げる?思いあたりがなくて言葉を繰り返す。
「えー忘れたの?僕、君のためにも頑張ったんだけどな。」
また、彼は頬を膨らませる。
「リス見たい。」
俺は笑っていた。
「いいね。その顔。でも、忘れたって言われるのショックなんだけど!!」
笑ったのはいつぶりだろうか。そんなことを思って笑わせた本人を見てみると、同学年とは思えないほどの大人びた優しい笑みを浮かべている彼が見えた。
でもそれはほんの一瞬で、その後は拗ねたように口を尖らせて明後日の方を向いてしまう。
「お前が死んでないだけで俺は嬉しい。」
「え?」
自分でも自分の言葉に驚いたが、それ以上に彼は目をまん丸にして俺のことをじっと見てくる。
そしてから彼は得意げに明るい笑顔を作って「ありがとー!」と言って俺に抱きついてきた。
「抱きつくなっ。」
彼の額に手のひらを付けて距離を作る。そしたら彼はさみしいと言うよな顔をしていて、でも一瞬でそれを消すように笑顔を作る。
「君だって僕に出会えて嬉しいよね?」
「なんで決まり口調なんだよ。」
「だって僕、君の事見てたもん。ずっと」
見てた?どこで?俺はお前の事を探していたけど、見た日は一日としてなかった。なのに俺を見てた?可笑しいだろ。
「あー、信じてないねー?」
彼は俺をからかうように笑ってくる。
「信じるもなにも俺はあの日以来お前の姿は見てないからな。」
自分でぶっきらぼうに言い放ったその言葉に寂しさを感じた。理由は良く分からないけど…。
「…見てないのは当たり前だよ。だって僕、死んだもん。」
その時の彼の瞳は俺を写してはいなかった。ただ、空を見上げて独り言のように呟いてから俺の事を見てへへっ。と辛そうに笑った。
「死んだ?な訳無いだろ。じゃあなんで俺は今、お前の事が見れてる?」
「霊感でもあるんじゃない?」
彼は楽しそうに笑った。
自分が死んだと言う衝撃的な発言をして人はこう簡単に笑う事ができるのだろうか。…もしかしたら死んだからこそ笑えるのかも知れない。
未練とか後悔とか、そう言うので人は幽霊になって人々の前に現れるってなんかのテレビでやってた。じゃあ、こいつのそうなのか…?
「名前、教えて。」
「名前?」
彼が、うーんと考え込むように唸ってから「いいよ。」と言った。
あの間は何だったんだろうか。名前を知られたくないとか?でも彼はいいよって言ったし…そう言うわけではないんだよな?
「僕の名前は“暁 桐生”だよ。」
「あかつき…きりゅう?なんか変わった名前だな。」
「うん。良く言われる。」
桐生は照れ臭そうに笑った。
桐生。なんかかっこいいな。名前…。
名前を聴いてやっと彼の事を少し知って、もっと興味を持ったのか俺は彼の、桐生の顔をマジマジと見た。
…とても綺麗な顔立ちだと思った。そう言う人を美形と言うんだっけ?…美少年。その言葉にぴったりだと思った。
「で、君は?」
桐生が首を少し傾ける。
「…橋川 流星。」
自分の名前を言うのはなんだが照れ臭い。毎回自分の名前を言うのが嫌で今まで自己紹介とかは軽く流してきた。なんかただたんに好きじゃないんだと思う。自分の事を言うのが…。
決して名前や苗字が嫌いなわけじゃないけど、何かが嫌なんだ。
「はしかわ、りゅうせい?カッコイイ名前だね!」
桐生がなぜが自分の事のように嬉しそうに笑う。
そんな桐生を少し羨ましく思った。
自分の思ったことを口に出せる。
それが、すごくかっこいいと思った。




