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一ノ瀬兄妹(に)は伝えたいことがある  作者: 久川梓紗
桜丘高校について
16/59

16話「授業」

 “キーンコーンカーンコーンキーンコーンカーンコーン”


 相変わらずのチャイムがなる。

 学校というものはチャイムが必須アイテムらしく毎回耳に響くその音はどうも聞き飽きてしまう。


「一ノ瀬ー。」

 橋川が左側で僕の名を呼ぶ。

「柚樹。」

 櫻井が僕の右側で名を呼ぶ。

「「授業出ずに遊ぼうぜ。」」

 両サイドから喋り方は違えど、同じ言葉が耳に聞こえてくる。

「お前らは黙ってろ!!」

 二人のひそひそ声を無視して大声をあげてしまった僕は先生から注意を受けてしまった。


 あいつら、この授業が終わったら本当に覚えてろよー!!

 僕が授業中ずっとそんなことを考えているのに対し、橋川は携帯をいじり、櫻井は気持ち良さそうに寝ている。

 ここの生徒は、真面目に授業も受けれないのか!!

 僕が二人だけを見るのをやめ、辺りを見渡すと…案の定、授業をまともに受けているのはごく数人。生徒会メンバーと4、5人と言うクラスの人数の五分の一にもたたない人らしか授業という授業を受けていなかった。


 何なんだよこの学校は…!!!!!


 その時の五十分の授業の中身を僕は、何一つ覚えていなかった。


「福田!」

「はいっ!?」

 僕は隣の教室へ足音をいつも以上に鳴らせながら移動し生徒会の会計、福田の名を彼の後ろで呼ぶ。

 福田は背筋をピンッとしてから後ろを振り返る。

「会長…何か、会計間違ってましたか?」

 福田が恐る恐る聞いてくる。

 僕が、彼の直しを怒りにきたのだと思ったのだろう。

「いや、なに一つ間違っていない。安心しろ」

 福田が胸を撫で下ろす。

「じゃあなぜ、僕の所へ?」


「授業での校則を変えよう。」



「…はぃ?」


 福田からの返答がきたのは数秒後だった。

 でもそのわりには間抜けた言葉が口から零れていた。

「ふんっ。それはどういうことですか?」

 福田が咳払いをしてから、平常心に戻す。

「ここの学校の授業態度が悪すぎる。」

 彼の顔色が青ざめた気がした。

「会長。」

 福田が耳を貸して下さいと言わんばかりに手を仰ぐ。

 僕は耳を福田に傾ける。

「今、ここでそれを言うのは控えたことが良いかと。それと、今更の事ですよ?」


 福田の言葉が終わったあと背後から気配を感じて後ろを振り向いた。

「お前、会長だからって余計な事に顔突っ込むなよ?」

 金髪に染められていた髪が太陽に当たり嫌な光を放っている。

 男は僕より大きくて、筋肉が腕を中心についている。


「はぁ?」

 僕が視線を上に向け首を傾げ、何言ってるんだこいつは。とでも言うかのように威嚇を含んでいる声音を出す。

「ちっ、こいつ…!」

 男が僕に殴りかかろうとする。

 その拳を避けようと身体を逸らそうとしたが、いつのもにか僕の背後に回っていた男の仲間が僕の身体を押さえつけていた。


 殴られる。目をつぶってそう思った。



 “ガシャン。パリパリパリッ。”



 窓ガラスが割れる音が真横から聞こえ、思わず男の拳の事を忘れ、窓を見てしまう。

「ひっ!!」

 福田の悲鳴が聞こえた。

 それと同時に、割れたガラスの先から出てきた野球ボールがコントロール良く男の顔にぶち当たる。


「うっ…!」

 男の悲鳴が聞こえたのは、それが分かった後だった。


「大丈夫っすか!?」

 僕を抑えていた方の男が、殴りかかろうとしていた男に近寄り言葉をかける。

「あぁ…」

 男が野球ボールが当たった側の自分の頬を、僕に殴りかかろうとした拳でぬぐい、倒れた状態で僕の事を見てくる。


「一ノ瀬。お前の名前、覚えててやるよ。」

「覚えなくていいよ。」

 大男の捨て台詞を否定する。


 覚えられても無駄なだけだし。

 暴力振るわれるだけだし。

 そんなの僕は勘弁だ。


「じゃあ、福田。後でな。」

 僕は倒れている男を無視して、福田に軽く手を降ってから自分の教室へと戻った。

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