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序.夜明けは遠く、深き闇に惑う

 月光を弾いて禍々しく輝く直刃(すぐは)を、蓮瓔(れんよう)は呆然と見上げていた。


(なぜ……)


 (しび)れたような頭で、そんな(らち)の明かないことを考える。逃げなければと思うのに、足に根が生えたように動けない。

 ギラリとした光を放つ刃が自分に向かって振り下ろされるのを、蓮瓔は()(すべ)もなく見つめていた。あんなものに斬り付けられれば、どれほどの血が出るのだろうか。


 ああ、でも。


(あれに斬られてしまえば、もう、楽になれる──)


 誰にも愛されない悲しみも、誰にも愛されない虚しい自分も、全て捨ててしまえる。


 不意に甘美な誘惑に囚われ、蓮瓔は唇を震わせた。

 彼女を斬り捨てるよう命じたその人物は、(うっす)らと微笑みながら、固まったまま動かない蓮瓔を見下ろしていた。


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