第四十話 マルコス様邸
次の日、俺達は仕事の為にマルコス様邸に向かっていた。
いつもの現場に到着した俺達を待っていたのは、
マルコス様一家だった。
「おはよう御座いますサクラ様」
仰々しくマルコス様に挨拶されて、
俺は何で?!
と戸惑う。
「ど、どどど、どーしたんでしゃか?」
噛んだ。
「この度は伯爵叙爵おめでとうございます、本来ならばこちらから伺うべきでしたが、その、お泊まりになられてる場所に、我らが赴く訳にもいかず、こうしてお待ち申しておりました」
なんとなく事情は察した。
俺が伯爵の爵位を賜る事は、
この街の貴族達は既に知っている。
マルコス卿は子爵だ。
俺より位が低い。
「マルコス様、やめて下さい。今まで通りでお願いしますよ、やりずらいです。あと、ご心配おかけしました。マミさんから何て言われてるか分かりませんが、マルコス様邸はきちんと責任を持って最後まで完成させます。俺はその後に王都に行きますから、安心して下さい」
俺の言葉を聞いて、
マルコス卿はじめ、
他の家族の面々が明るい表情になる。
俺の立場が変わった事で、
自宅が完成しないのではないかと心配させてしまったようだ。
「あぁ、それはなんとありがたい。お恥ずかしい話しですが、お察しの通りです。住む家が今後どうなるのか気が気では無く、あ、し、失礼しました。その、疑ってた訳ではないのです…」
「マルコス様、俺は変わりませんよ、ご心配おかけして申し訳ないです」
「さ、サクラ様、敬称は不要で御座います」
あ、そうか、俺が様付けで呼ぶのはおかしいよな。
「あ、あぁ、そ、そうじゃったな」
思わずマミちゃん言葉になってしまった。
『何を言っとるんだ?』
「あははは、大ちゃんおもしろい!」
慌てる俺に二人が突っ込んでくる。
俺も笑ってしまった。
マルコス卿一家も、
つられてクスクスしている。
マルコス卿は苦笑気味だ。
おほん
「じゃぁマルコスさん、これからも頑張りますので、よろしくお願いします。肩書きがくっついただけで、俺は俺ですよ。何も変わりませんから」
マルコス卿は安心したようだ。
「そうですか、安心しました。昨夜サクラ様が伯爵になられると家族に話したところ、大騒ぎになりまして」
「それは申し訳ないです。みなさん、まだまだ時間はかかりますが、必ず完成させますので、安心して待ってて下さい」
「それは良かったです」
「よろしくお願いします。」
「寛大なお人で良かったです」
などなど声が聞こえる。
「あ、あとマルコスさん、俺は異世界人なのを隠すのをやめましたので、これからは堂々と、『異世界人だからこの世界の事には疎いです』って言いますね」
マルコス卿一家から、
軽くどよめきが起こる。
「はい、私は構いませんが、宜しいのですか?」
「世間知らずで迷惑かけてましたからね。異世界人だと最初から分かっていれば、おかしな誤解もされないで済むかと思いまして。マミちゃんの助言もあるんですけどね、ほら、あの方の夫って異世界人ですから」
「なるほど、解りました」
マルコス卿は家族に向かって言った。
「みな、良く聞きなさい。このサクラ様は異世界から来られた方で、今建てて頂いている我が家も、異世界の技術が使われている。その素晴らしさはアルバの家を見ればわかる通りだ。私はこのような方と知り合えて誇りに思う。皆もサクラ様の事で戸惑う事があるかもしれないが、誤解なきように頼む」
「解りました」
「異世界人なんてかっこいいな」
「どのような世界なのでしょう」
などと聞こえる。
この世界の人達は簡単に受け入れてくれるからありがたい。
「あれ?そう言えばイリス嬢が見当たりませんね」
「あぁ、あれは魔法学校に行かせました。あの跳ねっ返りが、どんな娘になって帰ってくるのか、楽しみでもありますよ」
マルコス卿が苦笑気味に言った。
家庭教師では手に余るという事なのかな。
「そうなんですね、では、マルコスさん、仕事を始めますよ」
「ああ、これはお邪魔してしまい申し訳ありません。今後も是非ともよろしくお願い申し上げます」
「おや?皆さんお揃いでいかがされましたか?」
と、声を掛けて来たのはアルバだ。
いつものように様子を見にやってきたらしい。
アルバは俺が伯爵になる事をまだ知らない。
「マルコスさん、すいませんがアルバさんに説明してやって下さい」
「さん?サクラ殿、仮にも子爵様をさん付けで呼ぶなどと、いくらサクラ殿でも無礼ですよ」
「まぁまぁまぁまぁアルバよ、私が話そう」
顔色を変えたアルバに、
マルコス卿が事の顛末を話す。
俺は面倒なので仕事に取り掛かった。
遠くから、
「は、伯爵ですとぉお!!」
と言う声が聞こえてきたが、
知らん顔しておこう。
「ところでさぁベル」
「ん?」
「そろそろベルの誕生日だけど、プレゼントは何が欲しい?」
「んー、何でもいーの?」
「ああ、伯爵様は何でもあげられるのだよ」
「あはは!、じゃぁね、お家が欲しい!」
何ですと?!
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白村
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