第三十八話 後始末
バンジス魔薬事件を暴いたマミは、
行政舎に来ていた。
マルコスを始めとする、
6人の貴族達が集まっている。
「バンジスは永遠に裁かれなければならない。幻獣様の血を飲み不老不死になってしまったが、世に放つ訳にもいくまい」
「それもそうなのですが、マミ様!幻獣様がいらっしゃるとは本当でありますか?!」
「わたくしもそれが気になって仕方ありませんわ。マルコス卿は何かご存知なのでしょう?」
「私も知りません。あのサクラ殿の娘が、仔猫を連れていたのは知っておりましたが、幻獣様がいたとは…。」
「こ、これは1000年前と同じく戦争が起こるのではないですか?!大問題ですぞ!」
「それよりサクラと言う男は何者なのですか?!我らに危険はないのでしょうか?!」
「いやいや、幻獣様こそ危険ではないか?!何故このような街に現れたのでしょうか。」
「不老不死など、そんなお伽話な事があるのでしょうか、恐ろしい」
貴族達はパニック、
会議室は収集がつかない状態だった。
それも無理は無かったのだが、
その喧騒を破ったのは、
他でもないマミだ。
「黙らっしゃい!!」
「「「「「「!!」」」」」」
マミの一括で一同が黙る。
「卿等の不安や言いたい事は分からんでもない。まずは整理してから話し合おう。まずは佐倉大作の事から話そう。佐倉は異世界人だ。元々この世界の人間では無い」
「なんと!異世界人!そのような異世界などと言うのが存在してると言うのですか?!」
「あ、悪魔などと同類なのでは?!」
再び騒ぎが始まった所で、
「黙らんか愚か者!!!」
マミが物凄い剣幕で怒鳴る。
「最後まで話を聞かんか!そんなだからバンジスのような者が蔓延るんじゃ!この愚か者ども!」
「も、申し訳ありません」
「よいか、異世界人と言っても、サクラは我らと同じ人間だ。いや、むしろ我らよりも高い志しがあるかもしれない。彼はこの世界よりも遥かに進んだ世界から来た。戦争を嫌い、奴隷制度を嫌い、暴力を嫌う。平和的な解決に尽力できる人格者だと言い切れる」
「発言をよろしいかな?」
こう言うのは一番の年長者である子爵。
権力No. 1と目される子爵だ。
「マミ様は何故そう言い切れるのですかな?」
「ふむ、それは私の夫が異世界人だったからだ。名を田中雅之と言う。」
「「「「「「!!」」」」」」
皆驚いて声を上げようとしたが、
それぞれ発言を抑えている。
「恐らく佐倉はここの誰よりも、人格者ではないだろうか。少なくとも私はそう思える。そうではないか?マルコス卿。」
話を振られたマルコス卿は、
一瞬驚いたようだが、
ゆっくり口を開いた。
「はい、そうですね、実は私もサクラ殿が異世界人だと存じておりました。しかし彼の仕事は一言では言い表せない素晴らしい物があり、誰もが賞賛しますが、彼は驕り高ぶる事は一切ありません。そして貧困の子供を買われ、今も一緒に過ごしてるようですが、彼は慈悲深く、その買われっ子に大変良い名前を付け、良い服装も与えています。そして何より、我々が貧民街の改革に手を子招いている間に、炊き出しや日雇いなどと言うこれまで見た事のない雇用方法で、貧民街を変えようとまでしております。私は、その、私事であるのですが、自邸を建てて貰っておりますが、その事を差し置いても、彼には、サクラ殿には大変感謝しております。マミ様の仰る通り、確かにサクラ殿は人格者です」
場に静寂があった。
皆、今のマルコス卿の話を聞いて黙ってしまった。
そこでまたマミが口を開く。
「マルコス卿、もし、佐倉大作が其方の上に立つ人物になったらどう思われるか?」
「えっ?!こ、これはなんと…。いや、しかし…。」
何人かはざわついたが、
皆黙ってマルコス卿の返事を待つ。
マルコス卿も初めは戸惑う顔をしていたが、
清々しい表情になって言った。
「今は、サクラ殿に自邸を建てて頂き、私の方が立場が上になっておりますが、もしあの方に爵位を与えるお考えならば、私はマミ様を支持致します。伯爵位でも侯爵位でも私に異論はありません」
マルコスはマミを真っ直ぐ見て答えた。
マミは満足気に頷く。
「そ、それは誠ですか?!マルコス卿、伯爵位という事はこの街全体の領主になるという事ですぞ!その者はそれほどの人物なのですか?!」
「この街の新しい領主にサクラ殿が……」
「して、マミ様、そのサクラ殿と言う方に、爵位をお与えになるのですかな?」
「本人が承諾すれば、伯爵位を与えるつもりだ。まぁ本人が承諾すればな」
「私共は、アストレア様のご意向に従うまでで御座います」
マミは満足気に頷く。
そして次の議題に移る。
「次は幻獣様だが、実は幻獣様はな、今話した佐倉大作の守護獣なのだ」
「「「「「「はぁ??」」」」」」
「幻獣様はルースと名付けられている。その名付けの儀式を行ったのも私だ。そして成り行きとは言え、その時に幻獣様の血をほんの僅かだが、私は舐めたのだ。」
「いや、マミ様のお姿を見れば、幻獣様の血を頂いただろう事は察しがついておりましたが、サクラ殿の守護獣と言うのは、これはまた驚きです。ではサクラ殿も血を?」
「うむ、サクラ殿も血を舐めている。ついでに言えば一緒にいるベルと言う貧民出身の少女も舐めているし、実は幻獣様は使い魔の契約もしている」
「「「「「「はーいー!?!?」」」」」」
「つ、使い魔の?!一応確認しますが、幻獣様が使い魔なのですよね?」
「ああそうだ。だから、佐倉大作が人格者であるうちは、幻獣ルース様の暴走も無いと思われる。まぁ実際はベルの使い魔なのだがな」
「「「「「「はーいー????」」」」」」
「いずれにしてもあの二人の元にいるルース様は驚異ではない。むしろ周りにたかる人間の方がよっぽど驚異になるだろう。バンジスのようにな。」
「しかしバンジス卿は、幻獣様に血を頂き、不老不死になったと聞き及んでおりますが」
「それはな、拷問官とセットでそうなった。拷問官が死ぬまで、バンジスは拷問を受け続ける。しかも死なないのだ、どんなに酷い拷問も死なずに受け続けるんだ。これ以上ない罰はないだろう」
全員嫌ぁな顔になっていた。
「卿等も不老不死など考えぬ事だ、まぁ私が言っても説得力に欠けるが、私も永遠ではない。幻獣ルース様の話では、300年程度寿命が伸びたそうだ。」
「さ、左様でございますか。いやはや羨ましい限りですが、バンジスに関しては自業自得ではありますが、気の毒にも思えますなぁ」
「いや、全くですな」
「では諸君、サクラ殿の件は私に任せて貰う。サクラ殿が伯爵になればこの街はサクラという街名に変わり、この街全体の領主は佐倉大作となる。そしてバンジスの領地は佐倉大作専有の領地となるが良いか?」
「基本的に意義はありませんが、我らはどうしたらよいのでしょう」
「今までと変わらないじゃろうの。各々任された領地をこれまで通り取り仕切って行くがよい」
「「「「「「はっ異議ありません」」」」」」
「では幻獣ルース様の件だが、人間が幻獣様の行動など決める事は出来ない。と言うより、初めから何もできないのだ。よって静観する事とする。ただし、他国などの勢力が接触してくる可能性が大いにある、なるべく戦争はしたくないが、もし何か動きがあれば早急に報告する事」
「「「「「「異議ありません」」」」」」
「バンジスの件だか、今の拷問官もかなり罪深い。なので拷問官を変える。それが今のダルマ拷問官にはかなりの罰になるはずだ、その後犯罪奴隷20年を課す。バンジスは10年拷問の後、犯罪奴隷とする。この世が朽ちるまで働いてもらおう、拷問に比べれば、天国だと感じるだろうな」
「「「「「「異議ありません」」」」」」
「最後に貧民街の件だが、これは佐倉大作に一任しようと思う。ただし、必要ならば人手も支援して、貧民街改革に関しては佐倉大作を全面的に支援せよ」
「「「「「「異議ありません」」」」」」
「本日の会議は以上だ。皆ご苦労。まぁ言いたい事、聞きたい事もあると思うが、皆自分の役目を全うしてくれ。頼む」
最後にマミは頭を下げた。
6人は驚いたが、
皆立ち上がりマミに頭を下げ返して、
解散となった。
マミはダイサクを思う。
さて、どう説得するかの。
【読者の皆さま】
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白村
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