ホテル 2
夜の8時ころに、ドレス姿のマリが帰ってきた。
「明日だと思ってた……」
「夕焼け、一人で見てて、急につまらなくなっちゃってね……」
わざとらしくならないように、注意深く咳払いした。「マリ……」
「なに?」
「いっしょの、ベッドで眠ろう……?」
マリは、まっ赤な顔して、コクンと頷いたのだった。
二人して、ワインで乾杯した。クスクスと笑い合った。
シャワーを浴びた。
マリが、本物の白いバスタオルを一枚、体に巻いただけの姿で、緊張気味にベッドに横たわった。
裸の僕は、その上に覆い被さろうとして――
そのタイミングで――
大音量の緊急通信が入ったのだった。
『※※※!※※※※?※※※!!※※※?※?※※※※※※※?!※※!!!』
「えっ、えっ、なんだこれ――?」
「なに、なんなのこれ――?」マリにも届いている!
――それは!?
本能の叫び!
瞬間、僕は“悟る”と大声を上げていたのだった。
「マリー!!!」
走り出す。
「いかないで――!!!」背中にマリの絶叫が聞こえた。
それへの応え代わりに、僕は裸の体に花を吹雪かせる。
止まるわけいかなかった。マリーの緊急事態なのだから――
ビーチに出た。
オリハを操り、波の上を駆けた。
「ブラン!」
マッコウクジラが潮を吹いて場所を知らせる! 先ほどの緊急通信は、この賢いブランのものだったのだ!
黒い背中に飛び乗った。「ゴー!」大洋を走り始める!
「マリーに何があった!?」とは聞いても、さすがに答えるすべのない鯨だった。ただ、一心不乱に主の元へと爆泳するのみ!
ふと頭によぎった。
『原石のムー大陸の独占契約がとれました』
『だけど、海原さんとは縁が切れてしまいました――』
こんな時に僕は何を考えているんだろう。だけど――
親父は、けっして、許しちゃ、くれねーだろーな、と思う。ばかりか、ムーさえも拒否ってしまうかもしれん。父は母は、そんな商売人、人間だった。
もしそうなったら……。
「……」
でも、しゃーねーじゃん……。
一度首を振り、意識を集中する。僕は、沖に目をこらした。




