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【第二章開幕!】異世界で待ってた妹はモーニングスターで戦う魔法少女(物理)だった件  作者: 未知(いまだ・とも)
第1章 〜魂の帰る道〜

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第9話「妹の初任務、いきなり国王案件!?女王様からのご指名クエスト、受けて立ちます!」

前回は『妹』のみきぽんの正式入団を祝う大宴会!


酒場でわいわい大盛り上がりの中、まさかのスマホ配信バレ事件もあって、ギルド仲間もリスナーもみんなで大はしゃぎでした。


そんな楽しい夜が明けて……今回はなんと、女王陛下とご対面です!

新人冒険者のまきぽん、いきなり国のトップと謁見しちゃって大丈夫なの!?


不安とドキドキいっぱいのまま、初めての『女王からのクエスト』を受けることに——!?

では、どうぞ……!

「……ん……」

柔らかな朝の光が差し込んできて、私はゆっくりとまぶたを開いた。

そこにはギルドハウスの木製の天井があった。


(……やっぱり、夢じゃなかったんだ)

昨夜の宴も、賑やかな市場も、そしてバロールとの死闘も——。

全部、現実。

もしかしたら、目が覚めたら自分の部屋かも……

なんて、ちょっと期待してたけど……甘かったかな。


だけど。

すぐ横から聞こえてくる寝息に、ホッと胸を撫で下ろす。


小さな身体を丸めて、私の布団に潜り込んでいる女の子。

(みきぽん、いてくれた……夢でも幻でもないんだよね)

そう思った瞬間、自然と口元がほころんでいた。


「もにゅ……おねーたん……ぷりん……」

寝言をつぶやきながら、みきぽんがもぞもぞ動いた。


「ふふ、食べ物の夢見てる……」

私は吹き出してしまった。


大きな伸びをすると、みきぽんは起き上がった。

髪は寝癖でポワポワに跳ねていて、ツインテールもめちゃくちゃだ。


「仕方ないなぁ……ほら、ここ座って」


私は木製の櫛を取り出し、背後から髪を丁寧にとかしてあげた。


「おねーたん……?」

まだ眠そうな目で私を見上げながらも、大人しくちょこんと座っている。

長い髪を二つに分け、高い位置でツインテールに結ってあげると——。


「はい、できたよ」

「わーい! あいあとでち♡」(注・ありがと)

嬉しそうに抱きついてくるみきぽんに、胸がきゅんとした。


この子に出逢えて、本当によかった——。


 * * *


食堂に降りると、エプロン姿のバルガンの豪快な声が響いた。

「おう! 寝坊助ども、朝飯はもうできてるぞ!」


長机の上には、湯気の立つポリッジ(オート麦の粥)、焼きたての黒パン、野菜がたっぷり入ったスープが並んでいた。


「またやさい……」

「野菜を食わんと、大きくなれねーぞ!」

口を尖らせて不服そうなみきぽんの頭を、バルガンはポンポンと叩いた。

(あーあ、また始まった……w)


その光景を見て、ノエルは

「大丈夫よ〜、お姉さんがあまーい蜂蜜をかけてあげるからね」

と笑い、リゼは

「おい……甘やかしすぎだ」

と呆れている。


そんな微笑ましいやりとりで、今日もギルドは朝からにぎやかだった。


その空気に一区切りつけるかのように、奥の扉からエリアスが現れた。

まだ朝早いというのに、すでにもう濃紺のローブに身を包み、仕事モードに入っているようだ。


「まきぽん」

「えっ、なに?」

思わず背筋が伸びてしまいそうな、真面目な声色だった。


「女王陛下が、あなたにお目通りを望んでおられます」

「——えっ!? じょ、女王陛下!?」


思わず声が裏返る。

ノエルは驚いて竪琴を落としそうになり、リゼは表情を引き締めた。


「本日の午後、みきぽんを連れて王城へ来てください——皆さんも一緒に」


「ん、俺もか?」

「あら、何かしらね〜?」

バルガンとノエルにも、緊張が走る。


王宮使えのエリアスやリゼと違って、王城は、私たちのような一般冒険者がおいそれと入れる場所ではない。


「おしろ……? おひめたま、いるでち?」

「いや、いるのは女王様だから……って、そこじゃなくて!」

パンを頬張りながら首をかしげるみきぽんに、私はツッコミを入れた。

みきぽんのあどけなさは、緊張を一気にほぐしてくれる。


でも——。

女王陛下が直々に……なんのために?


答えの出ない疑問を抱えたまま、私たちの新しい試練が始まろうとしていた。


 * * *


リアンナハの王城は、白い石で築かれた堅牢な城壁に囲まれ、その中心にそびえる塔はまるで天を貫く槍のようだった。


幾重にも用意された厳重な門や扉を通り、赤い絨毯が敷かれた大広間に足を踏み入れると、私は思わず息をのんだ。


「す、すご……マジでこれ、ゲームのムービーそのまま……!」

思わず小声でつぶやくと、リゼに横目で

「静かに」

と睨まれて、慌てて口を押さえた。


「おねーたん、しーっでち!」

「おうおう、みきぽんの方がお姉ちゃんみたいだぞ」

「みんな静かに〜、陛下がいらっしゃるわ」


「女王陛下、ご入場!」


儀仗兵の声が響いた途端、広間に並んでいた兵士たちが一斉に胸に拳を当てる。

リゼも同じように静かに構え、黒翼戦士団の団長らしい気品を放っていた。


(え、えっ……これって私もやらなきゃいけないの!?)

思わず混乱した私は、日本人らしく慌てて深々と頭を下げてしまう。

「……!」


横目でちらりと見たみきぽんも、慌ててまねをして、ぺこりと小さな体でお辞儀。

(……あ、やば。絶対おかしかったよね、これ……!)


広間の奥の荘厳な扉が開き、従者を引き連れながら一人の女性が入ってきた。


真紅のマントをまとい、白金の髪を背に長く垂らした少女。

まだ若いはずなのに、その眼差しはどこまでも澄んでいて、揺らめく炎のような力強さを秘めている。


『神聖なる炎のフィオナ・ブリーデ』——この国を治める若き女王だ。


「皆の者——よくぞ参りました、おもてをあげなさい」


彼女の声は澄み渡る鈴の音のようで、広間の空気を一瞬で崇高なものに変えていった。


顔を上げると、壇上に立った女王フィオナは、薄く唇をゆるめて微笑んでいた。

その眼差しは「仕方ない子たちね」という温もりを帯びていて、叱責ではなくむしろ慈しみのように感じられた。


黄金に輝く玉座と、その背後には、永遠の炎を湛えた燭台が燃え続けていた。

その神秘的な雰囲気に圧倒され、膝が震えそうになる。


(……あ、やっぱりただの女の子じゃない。この方は、この国を守る『女王』なんだ)

冗談じゃなく、本当に『選ばれた存在』って感じがする。


「まきぽん。あなたと、その隣の小さき者が……市場を救った、と聞いています」


「は、はいっ!」

「おねーたんとみきぽん、がんばったでち!」


小さな胸を張るみきぽんを見て、女王の背後に控えたエリアスが微笑みながら頷いた。


「ふふ……愛らしい子ですね」

女王はかすかに微笑み、しかしすぐにその瞳を真剣な光に変える。


「今日皆を招いたのは、他でもありません」

皆が陛下の発言に静かに耳を傾ける。


「今、王都の北の洞窟に『闇』が広がりつつあります。

人々を襲う魔物がそこから溢れ出し、民を脅かしているのです」


「……闇、ですか」

私は掠れた声でつぶやいた。

声を発するのにも勇気がいる雰囲気だ。


「兵士の一団を遣わせましたが……数名の兵が消息を絶ちました」


(……えっ!)


「無事に戻ってきた者も……『闇』に心を蝕まれ、言葉を発することができなくなった——

 そう聞いています」


(……それ、かなりヤバいやつじゃ……?)


……誰も言葉を発さない。

唾を飲む音すら憚られるほど、張り詰めた沈黙。


「大変難しい任務であることは、承知しています。

 しかし……この国を……民を守るためには、あなたたち冒険者たちの力が必要なのです」


女王は沈痛な面持ちになったが、一息置いて厳かに告げた。


わたくしはここに、神聖なる炎のフィオナ・ブリーデの名において——

《白銀の角笛団》並びに《黒翼戦士団》に洞窟の魔物の討伐を命じます」


その瞬間、広間にぴんと張りつめた空気が走る。


兵士たちは一斉に直立し、女王の背後の炎が大きく揺らめいて影を伸ばす。

ノエルは息を呑み、バルガンですら背筋を伸ばしていた。


「はっ!仰せのままに!」


最初に胸に拳を当てて、力強く答えたのはリゼだった。

彼女にとって、女王の命は絶対だ。

どんなに危険でも、拒否するという選択肢は——最初からない。


「まきぽん、あなたと……その妹も、共に向かってもらえますか?」


——え、女王陛下直々にご指名!?

いやいやいや! 私、まだレベルも低いし、そもそもこの世界に来たばかりで——。

「あの、ええと……」


そんな私の気も知らずに、みきぽんは

——まるで『遠足に行きたいおともだち、手をあげてー?』

と呼びかけられた幼稚園児のように——

にっこり笑って、元気よく手を挙げた。


「あーいでち! みきぽん、おねーたんといっしょに、がんばるでち!」

「いや即答!?」


私は慌ててみきぽんにだけ聞こえるように小声で囁いた。

「……ちょ、ちょっと待って、みきぽん!?

そんなに軽く引き受けちゃダメでしょ、みんな死んじゃうかもしれないんだよ!?」


「だいじょぶでち、どっかーん! でやっつけまち!」


この世界がゲームの中じゃない以上、もし『何か』があった時にどうなるのか予想もできない。

この子はそれがわかっているのだろうか。


「ふっ……幼いけれど、肝が据わってるな」

リゼがぽつりとつぶやく。

「あい! おーせのままにー、でち☆」


女王フィオナは小さくうなずき、再び玉座の炎を背にして告げた。


「では——《白銀の角笛団》よ。

 王国の未来のために、どうかこの務めを果たしてほしい」


それはただの依頼じゃない。

命を懸けた“使命”を告げる声だった。


「「「「はっ!」」」」


ギルドのみんなの決意が広場に響き渡る。

(……やるしかないんだ、よね)

胸の奥で、不安と決意がせめぎ合う。


 * * *


こうして私たちは——初めての“女王からのクエスト”を受けることになった。


けれど、その先に待ち受けているのが想像もしなかった“運命の扉”だなんて——

このときの私は、まだ知らなかった……。


※今週は毎日更新予定です!

 次回もお楽しみに♪

ここまで読んでくださってありがとうございます!

第9話ではついに、若く美しいリアンナハの女王、フィオナ陛下が登場しました

彼らが恐れる「洞窟の闇」の正体とは一体……?


次回はいよいよ、《白銀の角笛団》初のクエストに挑戦!

道中ではコミカルな掛け合いも健在です。そして最奥部で待つのは、衝撃の結末……?


評価やブクマの一つひとつが、次の執筆の力になります。少しでも楽しんでいただけたら、応援いただけると嬉しいです!

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