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異世界で待ってた妹はモーニングスターで戦う魔法少女(物理)だった件  作者: 未知(いまだ・とも)
第2章 〜私たちの還る場所〜

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第51話「処理落ちの断崖」

雪山で凍える夜を過ごし、再び聖域に向かって歩き始めたまきぽんたちですが……?

一晩を過ごした岩の窪みを後にすると、私たちは再び歩き出した。


空はすっかり晴れて、純白の雪と抜けるように青い空が、とても綺麗なコントラストを描いている。


一歩、また一歩と進むうちに、さっきまで白一色だった景色は、少しずつ表情を変えていく。

雪はだんだん薄くなり、ところどころ黒い岩肌がのぞき始めた。


「このあたりまで来ると、ようやく緑も生えてきたわね〜」


岩場に揺れる背の低い草花を見つけて、ノエルは嬉しそうだ。

彼女が吐く息も、もう白くない。


「でも、道はむしろきつくなってる気がするんだけど……」


目の前には足場の悪い山道が続いていて、私はげんなりとした気分になった。


——すると。


ゴゴゴゴゴゴゴ……


「な、何!?」


激しい地鳴りがしたかと思うと、突然、前方の山肌が雪崩のように崩れ落ちた。


「危ねえ、逃げろっ!」


バルガンに庇われるようにしながら、私たちは慌てて元来た道を走って引き返した。


ズズ、ズゥゥゥゥン……


「きゃっ!?」


ノエルは、飛んできた岩のかけらを腕で払った。

私たちは地面に臥して、地響きと激しい土埃が静まるまで待った。


しばらくして。

恐る恐る顔を上げた私たちの前には……


とても歩いては進めそうもないような、切り立った断崖絶壁が生まれていた。


「参ったな……」


「これじゃ、先に進めないよね……」


「おねーたん」


クイクイっと、みきぽんが私の裾を引いた。


「じょおーたまに、きいてみるでち」


「はっ、そうだね!」


私はローブからスマホを取り出すと、通信アプリを立ち上げた。


《……はい、こちらブリギッド》


「大変なの、これを見て!」


スマホの画面に崖の様子を写すと、ブリギッドは急いで状況をスキャンしてくれた。


《……なるほど》


ブリギッドは空中に魔法陣を描くと、そこに周囲の地形の3Dモデルを表示させた。


《この辺りは、まだ開発途中のエリアで、仮の地形データが置かれていました。

 でも、そこが——》


ブリギッドの言葉が途切れると、3Dモデルの中で山肌のポリゴンが崩れ始めた。


《地形の更新処理中に演算リソースが尽きて、崩落した形で固定されています》


「じゃ、どうすれば……」


《……話はわかりました》


「エリアス!」


画面の中に、エリアスが入ってきた。

休まず作業していたのだろうか、目の下にクマができ、前に見た時よりもさらに疲れているように見える。


《ブリギッド、一時的に演算リソースを集中。ここに道を作ってくれ》


《……承知いたしました》


「道! そんなこともできるの!?」


《……そりゃ、この世界は全て、僕たちが作ったものだからね》


彼はいたずらっぽく笑った。


(あ、開発者の瑛士さんの顔だ……)


《ブリギッド、このエリアの天候演算を一時的に停止して、代わりに地形データを書き換えて》


エリアスはそう言うと、高速でキーボードを叩き始めた。


《イエス、マスター……》


ブリギッドがモニターの前に手をかざすと、彼女の髪は淡い光を放ちながらふわりと浮かびあがり、瞳はパライバブルーに輝いた。


  《env.suspend("weather")——(天候演算、一時停止)

   terrain.rebuild("cliff_path")——(崖道ポリゴン、再構築)》


不思議な呪文を操る姿は、ドルイドの助けを借りながら魔術の儀式を行う、神秘的なケルトの女王そのものだ。


「見ろ、空が……!」


バルガンが指をさした先では、さっきまで青く晴れていた空や白い雲が消え、色のない、ただのグレーの空間に変わっていた。


「崖も……見て!」


驚いて口元に手を当てたノエルの目の前では、土や岩が宙に浮いて、形を変えている。

ブリギッドが天候、風、雲の描写を止めて、地形のポリゴンを書き替えているのだ。


みるみるうちに、目の前には、崖の中腹に沿うように伸びた細い一本道ができた。


「す、すげえ……」


「女王さま、このようなお力までお持ちになっていたなんて……」


二人は目を丸くして、女王の力に感心している。


「エリアス、フィオナさま、ありがとう!」


《皆さん、お気をつけて》


「はい!」


ブリギッドたちに合図を送ると、私は一度ここで通信を切った。


「よし、先に進むか」


「うん、道はできたけど……」


だがその道は、人がすれ違うことも難しそうな幅しかなく、

右側はそそり立つ絶壁。

そして左側は風が吹き抜ける断崖絶壁——


落ちたら真っ逆さまコースだ。


崖下を覗き込んだら、ゾワゾワと背筋を恐怖が這い上がってくるような気がした。


「うわぁ……これ、落ちたらアウトだよね」


「落ちたことにも気づかないほど、一瞬で終わっちゃうかもしれないわね……」


「ちょ、ノエルw そういう言い方やめよ!?」


「ふふ、冗談よ。気をつけましょうね」


ノエルは茶目っ気たっぷりに笑ってみせる。

でもそのおかげで、私は少し緊張がほぐれた気がした。


「よし、ここは一列になって進むぞ」


バルガンは先頭に立ち、一歩ずつ踏みしめるようにして歩き出す。


「まきぽんとちびっ子は真ん中だ。後ろはノエルが見ていてくれ。

 何かあったら、すぐに知らせろよ」


「わかったわ」


「みきぽんは、私の手をしっかり握っててね」


「あい! おねーたんから、はなれないでち」


みきぽんは、私の手をぎゅっと掴んだ。

頼むから、そのままずっと離さないで……!


挿絵(By みてみん)


そんなふうに慎重に崖道を進んでいた、そのときだった。


《——ひぃ……っ、ひぃ……ん……》


かすかなすすり泣きが、どこからともなく聞こえてきた。


「ん……?」


私は思わず足を止める。


風の音……にしては、やけに悲しげだ。

しかも、一人じゃない。

あっちからも、こっちからも、陰鬱な声が聞こえてくる。


「なに、今の……」


「バルガン、止まって」


ノエルが低い声で言った。


「む?」


バルガンの肩が、わずかに強張る。


「……何これ、人の泣き声?」


崖を吹き抜ける強い風に混じって、地の底から響いてくるような、不吉な女の泣き声が辺りに響き始めた。


最後までお読みいただきまして、ありがとうございます!


崖の崩落が「処理落ち」のアイディアは、お風呂の中で思いつきました。

良さげなアイディアは、いつもこうして、お風呂の中とかウォーキングの最中とか、メモの取れない無防備な状態の時に思いつくことが多いんですよね(^◇^;)


皆さんは、そういう時はどうしているのでしょうか……?


次回、狙われたのは……思いもよらない人物!?

お楽しみに♪

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