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【第一章完結】異世界で待ってた妹はモーニングスターで戦う魔法少女(物理)だった件  作者: 未知(いまだ・とも)
第1章 〜魂の帰る道〜

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10/30

第10話「角笛団と黒翼団、初めての共闘!!今晩のご馳走が向こうからやってきました!?」

魔物の群れから市場を救った最強姉妹の功績は王都を駆け巡り……

なんといきなり国王案件のクエスト発生!?


女王さま直々に、魔物討伐の名を受けたまきぽん&みきぽん。

そして仲間たちは、王都リアンナハを出発!

《黒翼戦士団》の精鋭たちとの共闘で、向かうは北の洞窟——。


……のはずが!?

行軍の途中で現れたのは、なんと“今夜のメインディッシュ”!?

バルガンの料理魂に火がつき、みきぽんもモーニングスターで参戦!?


異世界×配信×冒険×飯テロ(!?)が炸裂する、波乱の旅立ち回です!

朝焼けに染まる空の下、ギルドハウスの扉がぎぃ、と音を立てて開いた。

私とみきぽん、ノエルにバルガン——

それぞれがしっかり旅支度を整え、荷物を背負って外に出る。


「ふぅ……ついに、女王陛下の依頼に出発ね〜」

ノエルが竪琴を抱え直し、少し緊張した声を漏らす。


「ダーッハッハッ! 任せとけ! 俺の大盾と斧があれば百人力だ!」

豪快に笑うバルガン。その背には大きな戦斧と盾がしっかり背負われている——。

だけど荷物袋の中には、保存食や香辛料がパンパンに詰まっているのを、私は知っている。


(どこまでも料理人だなぁ……いや、一応肩書は戦士なんだけど)


もちろん、そんな彼の腰には、戦いの場には場違いな愛用の包丁と革製のエプロン。

武装した屈強な体に、そのエプロン姿が不思議と似合っていて、思わず吹き出しそうになる。


「おねーたん、はやくー!」

先を駆けるみきぽんは、リュックをかついでぴょんぴょんと跳ねている。

遠足にでも行くみたいなその姿に、緊張も少し和らいでいく。


 * * *


城門の前にはすでに、《黒翼戦士団》の兵士たちが整列していた。

今日のために、戦士団の中でも選りすぐりの兵士が十人ほど集められてたと聞いている。


それぞれ革の鎧や鉄の胸あてを身につけているが、皆共通して、団の象徴でもある羽を広げた黒い鴉の紋章が入っている。

彼らの先頭に立つのはリゼ。

鋭い眼差しをこちらに向けると、静かにうなずいた。


「遅いぞ、角笛団」

「ご、ごめん……!」


さらに、エリアスの姿もあった。

彼はドルイドらしく杖を携え、朝の光を受けて佇んでいた。


「……準備はよろしいですね?」


私たちは顔を見合わせ、小さくうなずき合った。


王都リアンナハ北門。

朝靄を割って衛兵たちが角笛を短く鳴らす。

重厚な城門がゆっくりと開かれると、草原から爽やかな朝の風が吹き抜けてきた。

《白銀の角笛団》と《黒翼戦士団》の混成隊が整列し、リゼが一歩進み出た。


「目的地は北の洞窟! 速やかに行軍し、夕刻までに前進拠点を築け——進め!」


リゼが掲げた剣が朝日に煌めく。

こうして——私たちは王都を発ち、北の洞窟へと歩みを進めた。


 * * *


「んー……どこまであるくでちか?」

みきぽんが眉をしかめる。

重いリュックを背負っての行軍は、まだ小さいこの子には辛かったようだ。

「少し我慢してね、きっともうすぐ休憩だよ」


私とみきぽんの左右は、戦士団の精鋭が守るように固めてくれている。

その中の一人が笑顔で近づいてくると、そっとみきぽんのリュックを持ってくれた。

「……ありがとうございます!」

「おにーたん、あいあと!」


先頭を歩くエリアスが杖を掲げると、その先に刻まれたオグム文字が朝日の中でかすかに光った。


「南から微風、湿り気が強い……午後には霧が出るでしょう。

 丘陵の獣道に回りましょう。そうすれば泥濘ぬかるみは避けられます」


——すごい、ドルイドってそんなことまでわかるんだ!


「おねーたん! あれ、ながい石! おっきいでち!」

みきぽんが指さす先には、草原に突き刺さる巨石メンヒル

そしてその根元には、薄紅色の可憐な花がゆれていた。


ノエルはしゃがみこむと、その葉を摘んで小瓶に採取した。

「セイヨウサンザシ……心を落ち着ける作用があるわ。


 ——はいみきぽん、こすって匂い嗅いでみて。

 少し疲れが取れるわよ〜」

「うわぁ……いいにおいでちー!」


私もノエルも、みきぽんにつられてほっこり笑顔になった。

行軍は順調——だった、お昼を過ぎるまでは。


 * * *


軽く休憩と食事を取り、再び歩き出した、その時——。

茂みがざわつき、低い唸りが聞こえてきた。


グルルルルル……。


食事の残り香を嗅ぎつけたのか、雄牛ほどの獣が現れて私たちのゆく手を阻んだ。

肩に石の瘤を持つ“石背の猪(ストーンバック・ボア)”だ。


「構え!」

リゼの掛け声と共に、黒翼の弓隊が一斉に矢を番える。

その矢じりは紫色に濡れていたが——


「おっと、その矢は待ってくれよ!」

バルガンが前に出て大盾をズドンと地に立てた。

「毒矢はナシだ。

 なぜなら——こいつは今夜のメインディッシュになるんだからな!」


「……めいんでぃっちゅ!!」

みきぽんの瞳がキラキラになる。

「「「おおおっ!!!」」」

兵士たちからも歓声が上がり、一気にみんなの士気が爆上がりする。


リゼの判断は素早かった。

「毒矢やめ! 皆、脚の腱を狙え、短期決戦で仕留める!」


「良い判断です」

一歩前に出たエリアスの詠唱と共に、霧がすっと地を這う。

「霧よ、敵の目を覆い、我らに好機を。——《霧の帷(ミスト・ヴェイル)》」


突如現れた濃霧に包まれてストーンバック・ボアが怯んだ瞬間、剣士が側面へと回り込み——


「おねーたん! いくでち!」

「配信、ちょっとだけオン!」

私はスマホを掲げた。


【なんだなんだ、突然の狩配信!?】

【やべー、飯テロ回の予感……】

【リゼ団長かっけぇぇぇぇ!】


即座にみんなのコメントが宙に舞う。


「プリンを食べて、華麗に変身——魔法少女☆マジカルみきぽん!!」


(今日も敵さんは変身を待ってくれる世界……ありがたい)


「みきぽん、ぶっ飛ばしちゃダメよ、加減して」

「あいでち☆」


雷を帯びた鉄球が振り上げられて——


「マジカル☆……ちょっぴりモーニングスターーー!」


ズドーーーーーン!


大地に向かって振り下ろされた。

(……いや、「ちょっぴり」でこの衝撃!?)


【アレンジ技きたw】

【魔法少女に不可能はない(断言)】


……ブモモッ!?

衝撃波でボアの足元が一瞬ふらついた。


「みきぽん、ナイスちから加減!」

「ちからじゃなくて、まほーでちよ?(きっぱり)」


「今だッ!」

リゼの剣が合図となり、両脇から剣士たちが一斉に突撃する。


一人は大きな戦斧を振り下ろし、もう一人は槍で脚を突き刺す。

その衝撃にボアの巨体がぐらりと傾いた瞬間——


「とどめ!」


リゼの身体が大きく宙に舞い上がる。

流星のように閃く白刃は、寸分の狂いもなくボアの首元を狙った。


石の鎧が分厚く覆うその部位——石と石のわずかな継ぎ目に、鋭い剣先を巧みに突き立てる。

巨獣は苦しげに地を踏み鳴らし、最後に一声、天地を揺るがす咆哮を残して——


ドォォォォンッ!!


大地を揺らす轟音とともに、ゆっくりと崩れ落ちた。


「ダーッハッハッ! 今夜はごちそうだぞ!」

「おにくいっぱいでちー!!」

みきぽんは飛び跳ねて大喜びだ。


エリアスが杖を胸に寄せ、一礼する。

「大地の恵みに感謝を——」


【さすがドルイド礼儀正しい】

【このあとはスタッフが美味しくいただきました】


「みんなー、応援さんきゅー♪」

私の配信もここで一旦終了だ。


「さあ、今夜の野営地を見つけて、丸焼きパーティーといこうぜ!」

「うおーーーーーっ!」

バルガンの掛け声に合わせて、皆の歓声が空へ響いた。


——こうして賑やかな異世界キャンプ飯の夜が、幕を開けた。


※今週は毎日更新予定です!

 次回もお楽しみに♪

最後まで読んでくださり、ありがとうございました!


王都を発ち、仲間と共に踏み出した最初の一歩。

そして、まさかの「メインディッシュ襲来」で士気爆上がりの一行……。

すっかり飯テロが、この作品のもう一つの目玉になりそうです(笑)


次回はついに『異世界キャンプ回』!

焚き火と星空の下で交わされる仲間たちとの語らい、

そしてまきぽんの胸に芽生える『祈り』とは——?


「食べてみたい異世界キャンプ飯」や「推しキャラ」もぜひ感想で、お気軽に教えてくださいね♪

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― 新着の感想 ―
ステッキで素敵なステーキ出来上がりぃぃぃ(○`〜´○)モグモグ すんません、モーニングスターでしたぁ_(:3 」∠)_
      ))  ))   ∩∩  ((  (( ( ;゜ー゜) ε⌒ヘ⌒ヽフ /  o━(  ( ・ω・)  し-J  しー し─J     │炎炎炎│ きん♪ きん♪き〜ん♪…
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