76話 時の導
76話目投稿します。
再開の姉妹は2人で居られる事に感謝と細やかな幸せを感じている。
憧れを礎に積み上げるは、時の世界か
リルの声…リルの…声?
「フィルさん。」
星のような光が駆ける暗闇の中、声の元を探すが姿は見えない。
「大丈夫です。思い出して…私やメルの姿を…」
言われた通り、2人の姿を頭の中で形作る。
「ゆっくり、ゆっくり目を開けて…」
開く瞼の端から届く視界の中に、薄い光を纏った足…手…顔…もう随分長い間会ってなかったような感覚に襲われる。
2人に向かって飛びつく。
勢いにバランスを崩し、倒れるかと思われた私たちの体は中に浮くように暗闇を漂う。
『なんで!、なん、でこんな事!』
再会の喜び以上に2人の決断への理由が解らず、涙が溢れる。
「フィルおねぇちゃん、メル、楽しかったんだよ?」
『メルちゃん…』
微笑むメル。
牢獄で助けてくれた私は、彼女にとっては両親以上に格好良かったと。
まるでおとぎ話の勇者のようだったと。
そして、短くとも私と過ごした時間は、日常から遠く離れて一層強く、彼女の興奮を掻き立てた。
故に姉から私の力に、役に立ちたいという想い聞いた時、その想いを後押しするように、その身を賭したのだ。
『ごめん…ごめんね!』
「ううん、嬉しい。だって、メルはずっとここにいられる。お姉ちゃんたちと一緒に!」
握り返された私の体は、その内に留まっていた闇を払われた。
彼女の笑顔はこの暗闇の中でも解るくらいに眩い。
『リル…』
「フィルさん。私もメルと同じだったんですよ?」
メル同様に、彼女の目に映った私はとても力強く、輝いていたのだという。
「もしもフィルさんが男の人だったら、何としてもお嫁さんにしてもらおうとか思っちゃうくらいに。」
フフッと笑うリル。
涙でボロボロになっている私の顔に、伸ばされた手が頬に触れ、優しく撫でる。
『でも、もう戻れないんだよ!?』
僅かに曇る表情。
「確かに、両親に会うことはもう叶わないんでしょうね…でも…」
メル同様に微笑むその顔もまた、何かをやり遂げたような晴れやかさを持ち、眩しさを感じさせた。
「貴女の未来はきっと、私たち姉妹だけじゃなく、もっと沢山の人を助ける事が出来るはずです!」
頬に添えられていた手が、私の両手を力強く握りしめ、その瞳は言葉より強く、その意志を私に伝えた。
「だから…」
続く言葉より早く、私の腕はリルの体を抱きしめた。
『うん…うん!…きっと、もっと…2人に負けないくらい!、頑張るから!』
まだ私の涙が枯れる様子はない。
そして、リルの目にもまた、大きな雫が溜まり、こぼれ落ちた。
けれど彼女は、涙を流しながらも、子をあやすかのように私の頭を撫で続けた。
どれ程の時間が過ぎたのか、この暗闇の中では解らない。
いや…そもそも、グリムたちの研究が成功を見たのであれば、今私たちが居るこの場所は、時間という概念の外。
改めて見るこの景色は星が駆け抜ける夜空のようにも見えるし、大きな川の流れにも見える。
「グリム様は私に一つの使命を言い渡したんです。」
後ろ手に回し、戻した手に持っていたのは、ランタン。
中に宿る灯火は、どこか優しく輝く。
まるで彼女の温もりそのもののように。
「時の船頭になってほしい、と。」
『でも、門の維持は出来ないって…』
頷き、口を開く。
その様子はこの空間の成り立ち、在り方を理解しているかのような説得力を以ていた。
「あの時代に開かれた門はもう閉じています。恐らく私たち姉妹はあの世界には戻れないでしょう。」
寄り添うメルも僅かに顔を曇らせる。
「けれど、フィルさん。貴女が約束してくれたように、私たち姉妹はこの場所でずっと一緒に居られる。」
ね?とメルに聞く、メルもまた笑顔で返す。
それが…私が2人に与えられたモノだとするなら、手放しに喜べない。
「それに、凄くないですか?、だって…時の船頭ですよ?。おとぎ話の中にはいっちゃったみたいじゃないですか!」
っと、何か…妙な方向で興奮している気がしなくもないのだか…隣のメルはメルで…
「へへっ、メルね、グリムおじさんとニコラお兄ちゃんにヤミマホーっての教えてもらって凄いんだよー!」
みてて!と嬉しそうに…えっ、何か一瞬で移動して…これカイルが使ってたのと…はちょっと違うか。
2人の唐突な行動は独特な緊張感を吹き飛ばし、ついつい笑い声を上げてしまう。
『ふ、ふふっ…は、ははっ!』
それに釣られ、2人も笑い声を上げ、3人でしばらくの間、はしゃぎあった。
『ねぇ、リル。ここって結局なに?』
うーん…と顎に指を当てる。
「説明するの、ちょっと難しいんですけど…そうですね…」
立ち上がったリルがランタンを振りかざすと、周囲の景色が変わり…
「こんな感じでしょうか?」
あ、出来た。などと、自分の行動に驚いている風。
円形の部屋にいくつかの扉。
「例えば、この扉が色んな世界…というより時、でしょうか?、に繋がっている。と言ったら分かりますか?フィルさん。」
扉の一つに手をかけ、取手を捻る。が動かない。
『鍵がかかってる…?』
「そうです。元居た世界では門が開きました。つまり…」
『鍵が開かれた。と?』
頷くが、同時に、
「今はあの世界の扉も鍵がかけられている、といったところでしょうか。」
と付け加えた。
『つまり、行きたい時代に自由に行けるわけじゃないって事ね。』
「フィルさんの行きたい世界への扉は…分かります。」
リルの言葉で一つ解った。
グリムがこの姉妹を選んだ理由。
それは、私の想いに応えてくれる、心を通わせる存在が必要だったと。
とすれば、メルの力は…
「メルが扉を開けばいいんだね!」
と元気よく言う少女は腕まくりをして、その腕をブンブンと振り回している。
『えーと…そういう事…になるの?』
なるのか?
感想、要望、質問なんでも感謝します!
姉が造り上げた扉を貫くは、妹に秘められた力。
画して開かれる扉の先でフィルを待っているものは?
次回もお楽しみに!




