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びんかんはだは小さい幸せで満足する  作者: 樹
第四章 異世界
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61話 後悔

61話目投稿します。


異世界の景色は予想を大きく上回る。

されど彼方に想いを馳せるその身に這い寄る闇は唐突に牙を剥くのだ。

キュリオシティを出てすぐ、丘陵地帯のその先、森を挟んだ地平の彼方。

王都の姿を見た私は驚きと戸惑いを隠せなかった。

『あれ…王都、なの?…』

私の知っている王都の姿と、大きく異なるところが一つ。

遠目でも明らかに解るほどの違い。

視界いっぱいの丘陵の先、森を挟んでその彼方に見える大きな都市、初めて見た時に目を奪われた空に浮かぶ城が何度瞬きしても無いのだ。

城そのものは確かに見える、が本来「異質」であるはずのソレは、今の私には逆に異質に感じてしまった。

ノザンリィの町で感じた世界の違和感が、まさに、明確に、私の頭に焼き付いた。




はっきりと分かった世界の相違点。

ならば次はこの世界は何なのか?それを考えないといけない。

『ここからは推測…』

視界に映る景色から感じる違和感以外で今分かっている事…

冒険都市と開拓都市。

同じ場所にある町の相違点。

『開拓中って事はキュリオシティそのものが出来たばかり…』

しかし、宿屋で味わった特性スープは以前訪れた際に出された物と大きな違いは無かった。

例えば10年以上同じ物を食べてない、とかであれば指して気にもしなかったが、同様の食事をとってから1年も経ってはいない。

『美味しかったなぁ…』

思い出して涎が出そうになる所をハッとして首を振る。

『いや、それは置いといて。』

危ない危ない。


『つまり…えーと…過去?』

と考えては見たものの、時間を遡ったり進めたり、そんな事が出来るのか?

少なくとも私が知る限り、そんな魔法は無いし技術も無い。

『…王都の技術研究所とかなら何かやってそうな気がしなくもないけど…』


元の世界で学術研究所に居た短い期間で一度だけ技術研究所に訪れた事がある。

魔法を動力とした装置「魔導機」もしくは「魔導具」とか言うものの研究に没頭する者たちが研鑽していたのを思い出す。

『あそこにはあまりお世話になりたくないなぁ…』

ちなみにパーシィの仕事場である昇降機や、小さな物で言えば民家や町の街灯に設置されているランプ、果ては王城を浮かせていた技術も…

『ぁぁあ…』

改めて思い出してみて落ち込む。

もしこっちの王都に技術研究所があるとすれば、必ず訪れる必要がある、という結論に及んでしまった。


『ハァ…』

大きな溜息をつきながらもトボトボと進む道はそれでも王都へと近づく。




キュリオシティと王都の間を遮るように広がる森は、早朝から出発した甲斐もあって僅かに差し込む木洩れ日が心地良い。

浮いていない王城に驚いたものだが、近づく森の様子もまた私の記憶との相違を見せ、新たな驚きを私に与えた。

『湿地…ってどうやって出来るんだろ?』

元の世界ではこの森は多くの木々がありながらも大地は水気で溢れ湿地帯となっていた。

そのため馬車でも通過するのにそれなりの時間を要したのだが…足の裏から伝わる感触にそこまでの水気は感じられない。

『この分だと今日中に抜けれるかな?』

森を迂回して小川沿いに歩くか、などとも考えてはいたが、予想外に歩きやすい道程で助かった。


しばし森の中を歩いてはいたものの、ふと思い返し、街道を少し離れ、場合に依って、とは行路として考えていた小川に向かう。

『確か…この辺りだった、かな?』


王都への旅路の途中、シロとの修行を終えたカイルは、ここで水浴びしてて、それで…

『うー…』

思い出して顔が紅くなるのが解る、けど…それ以上に…

『…行こう。立ち止まってる場合じゃないんだ。』


小川沿いの森の街道に戻ろうとした、その時だった。

(…誰か、居る…)

街道の脇。

茂みの中に人の、少しばかり嫌な気配を感じた。

『誰!?』

腰に下げていたナイフ。

石剣では心許無いという理由でクレンが持たせてくれたその柄に手を添える。


少しの間を置いて茂みから飛び出したのは、見た感じ私より少し年上と見られる女性だった。

「っと、と。」

足を縺れさせるように蹌踉めきながら、私に向かって掌をぶんぶんと振っている。

「いやぁ、薬草集めてたら茂みにハマっちまってさぁ…」

はははっと、笑いながら近づくその姿と話し方は、どことなく良く知る女性、私たちが小さい頃から姉のように慕っていた人に似ていた。

「お嬢さん、驚かせて済まなかったねぇ…」

ポリポリと頭を掻きながら陽気に話しかけてくるその目は何処となく鋭さを感じさせる。

「ってことで、その手に添えてる物騒なのは勘弁して欲しいんだけど…」

と私の警戒心を緩めようと試みるが…


『…貴女、一人じゃないですよね?』


スゥーッと女性の目が細くなるのを私は見逃さなかった。

「へぇ〜?、とっぽい田舎娘と思ったんだが…案外いいモノ持ってるようじゃないか、ねぇ?」

背後に呼びかけるように声を飛ばし、同行者…いや、この場合は「同業者」を呼び出す。

木陰から姿を見せたのは二人の男。

見た目だけで人を判断するのは良くない…とは言うが、この状況も相まって。

『…人攫い、なんて初めて見ました。』




もう少し「旅」というものの危険さを理解していれば…

いや本当なら旅立ちを決めた時に考えておくべきだった。


危険なモノは、獣や災害だけではない。という事を私はこの時知る事となる。

感想、要望、質問なんでも感謝します!


王都を目前に迫る危機。

油断はしていない、つもりだった。


次回もお楽しみに!

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