Step29. 魔法の検証
魔導書(猫の表紙)が、手に入ったどー!
早く試したい。
街中で魔導書を広げていたら、間違いなく不審者だ。
公園に行って、無難な魔法を試してみよう。
* * * * *
野鳥観察のフリして、池に向かって、望遠視!
目の前に、15インチのバーチャルスクリーンが現れた。
おお! 水鳥の泳いでる姿が、見える!
視力が上がるという訳ではなかった。
遠くの映像が、近くに見える系。
スクリーンにバーのUIがあって、距離や向きの調節が出来た。
距離は、20~100メートルってとこか。
注視してるものが、他の人と共有できるメリットはあるけど、見てるものがバレるデメリットもあるな。
……やましい使い方なんて、考えてませんよ?
ついでに、水流球発動!
野球のボールくらいの大きさだ。
重力に従って、池にぽちゃんと落ちる。
5メートルって、案外ショボい。
水鉄砲だって、もっと飛ぶ。
他にも試したい事があるし、京都に帰ろう。
地元の方が、土地勘がある。
* * * * *
やってまいりました。
下鴨神社にある糺の森。
葵祭や御手洗祭り、プロジェクションマッピングなどのイベントが無いときは、人があまり居ない。
木々の中に入れば、人目を避けれるので、魔法を試すのにうってつけだ。
森と名前が付いているが、舗装された砂道の横に、数十メートル木々が生い茂っているだけだ。
まずは、やりたかった浮遊だ。
魔法陣に指を置いて、呼吸を整える。
……な、ん、だと?
魔法が発動しない。
慌てて、実績のある望遠視を使う。
……ダメだ。
魔法陣は光らないし、魔力の流れも感じない。
こちらでは、魔法が使えないらしい。
理由があるはずだ。
原因究明は、エンジニア魂がくすぐられる。
こういう時は、思い込んで決めつけたら良くない。
当たり前だと思っている事でも、事実関係を積み重ねて、結論を導くのが最短だ。
検証していこう。
* * * * *
手持ちの魔法を全て試したが、何も起きない。
予想通りの結果に満足だ。
もし、一つでも様子が違っていたら、前提が変わってしまう。
これは、重要な確認作業だ。
やっぱり、魔力を感じないことが原因な気がする。
全身の力を込めて絞り出してみよう。
「はぁぁぁぁあ…… ハッ!!」
……口だけで、何も出なかった。
突然、空が飛べなくなった、魔法少女を思い出した。
今なら、あの子の気持ちがわかる気がする。
どうやって、飛べる様になったんだっけか。
いったん異世界に戻ろう。
* * * * *
異世界に戻ってきた。
行き来して、試したい事があるので、異世界との境目にいる。
まずは、安定の望遠視。
……スランプが嘘の様に、綺麗に発動した。
ここまでは、予想通り。
発動しなかったら、どうしようと内心怯えてたのは秘密。
魔法を発動したまま、京都に戻る。
お!
バーチャルディスプレイは、2〜3秒かけて消えていった。
一瞬で消えなかったのは、新たな発見だ。
再現性があるか、確認しよう。
……3回やったけど、結果は同じだ!
異世界にあって、地球にないものがあるな。
推測でしかないが、魔法に作用する物質Xが、あるに違いない。
ファンタジー風に、これをマナと名付けよう。
空気中にマナが含まれていると、仮説を立てる。
ビニール袋を被ったまま望遠視して、京都に移ど……う、する前に消えてしまった。
なんだ、なんだ!?
マナは空気中に含まれていて、常に供給されるが、ビニール袋で遮断される。
袋の中に残存しているマナを消費し尽くすと、魔法が作用しなくなるといったところだろうか。
そして、地球にはマナが存在しない。
そういや、拡大視の魔法があったな。
魔法陣を大きくしたら、マナが見れないか試してみよう。
望遠視とは違って、かなり小さい部分まで見れる!
こっちは悪用される危険性が、ないからだろう。
倍率をあげていく。
――10倍。
――100倍。
――1000倍。
――1万倍。
――10万倍。
――100万倍。
何か動いているのが見えた!
……えっ!? ナニコレ!?
発光しているので、分かりにくいが、アームの様なものがあって、せっせこせっせこ、やってる。
菌やウイルスに詳しい訳じゃないけど、素人目から見ても違うと思う。
……10のマイナス9乗、つまりナノの世界。
ナノマシーン?
やっべぇ。世界の謎に迫ってしまったかも。
でも、機械ならプログラムで動くってのは、しっくりくる。
んじゃ、Red Blueって何だろう。
急に怖くなって来て、身震いしてしまった。
マナを動かすための、ナノマシーンか?
製造元は、何か知ってるな。
裏がありそうだ。
考察が楽し過ぎて、やばい。
謎の組織に薬を飲まされて、子どもになったりしないだろうか。
とりあえず、Red Blueを買って来て確かめよう。
* * * * *
Red Blue買ってきた。
会社の自室で、試そうかと思ったが、万が一監視されていたら怖いので、異世界の境界に戻って来た。
人通りもなくて、直ぐに逃げれる絶好のポイントは、ここしかない。
颯爽とビンの蓋をあけて、手の甲に垂らす。
拡大視! 100万倍!!
――マナっぽいの居たーー!!
発光してないので、マナより見やすい。
目の様なレンズに、アームがある。
――体は剣で出来ている。
いや違う。金属質ではないな。
体は半透明で、液体と固体の間、ゲル状に近い。
これを飲んでいたのかと思うと、気分は良くないな。
今も体内で、活動しているのだが……。
真実には、近づいているが、まだまだ分からない事が多い。
誰が何のために、マナやRed Blueなどのナノマシーンを作っているのだろうか。
知らず知らずのうちに、洗脳されてたり、爆弾を仕込まれてたらいやだなぁ。
爆弾魔に気をつけろよ。
とか言われて、ある日、カウントダウンが始まるのは避けたいなぁ。
Red Blueの成分を見ていると、ナチュラルミネラルウォーターって書いてある。
地下水? 意図せずナノマシーンが入っているワンチャンもあるのか?
水源について、調べてみよう。
* * * * *
水源は、調べてみるとすぐに分かった。
逆に宣伝してるっぽい。
ウルズの大森林というところで、汲み上げた水を使っている。
自然が豊かな場所だと、商品のアピールになるよね。
場所は、意外と近い。
魔法の力で動く電車で、2時間くらい。行ってみよう。
これ、なんて表現するのがいいのだろう。
魔車は車っぽい。
魔列車は悪くないんだけど、超有名なゲームソフトで、死者の魂を冥界に送るとされる列車の名称なので、誤解を招く可能性がある。
フェ〇ックスの尾を使うと、一撃で倒せるよね。
それとも、バニ〇ュデス派?
* * * * *
――ウルズの大森林に着いた。。
乗り物は、静かで心地よかったです。
速度は、時速100kmは出てた。快適。
Red Blueの水源の上にある、ウルズの泉という場所に行くのが良さそう。
綺麗なところで、観光名所になっているらしい。
ウルズの大森林前駅から、徒歩10分で、向かっている人も多い。
自然を楽しむには、適度な距離だしね。
* * * * *
……やっばいこれ。
言葉を失うくらい、幻想的な泉だ。
背の高い木々に囲まれていて、日が届きにくく、薄暗いんだけど、淡く光る結晶があって、雰囲気がとてもいい。
恋人と来たら素敵な場所だと思う。居ないけど。
……あっ、周りはカップルだらけだった。
自分はやるべきことをしよう。
ウルズの泉の水を、手ですくって、人目のつかない場所に移動する。
拡大視! 100万倍!!
――Red Blueと同じの居たー!
でも、色が違っていて、無色透明だ。
Red Blueは、着色されてしまっているだけかも。
水にナノマシーンが含まれているとすると、ただの天然成分配合なだけだ。
陰謀論を疑ってしまったな。
となると、ロストテクノロジー説かな!
超古代文明があって、滅んでしまったのかもしれない。
図書館で、歴史を調べてみよう。
今日はもういいや、ウルズの泉を楽しみたい。
――癒される。
いつも最後まで読んでくださってありがとうございます。
読み始めてくださった方は、ありがとうございます。




