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16.意識してしまう【お互い】

わわわ。ポイントとブクマありがとうございます! 励みになります!

◇◆◇


 しっかし、青木くんの子どもの頃の写真可愛すぎたぁ。もう少し青木くんが戻るのが遅ければ、カメラをカシャカシャできたのになぁ。


 それと……このシャツ返したくないなぁ。

 紗枝は、ベッドの上でそのシャツをすぅーはぁーし、青木成分を摂取する。


「あぁ、鈴木さん。貸してたシャツは?」

「まだ洗えていなくて、ごめんね」


「ねぇ、鈴木さん、貸してたシャツは?」

「あ、えぇと」

「使いたいから、返してね!」

 んー、返したくないなぁ。


「明日返してね」

「今日雨降っているし、乾かないよ」

「洗わなくても良いから返して」


 そういうと、おずおず鈴木さんは、俺が貸したシャツを次の日、返してくれた。

 頭を何度も下げて謝っている。俺は、悪用は駄目だよといって、自分の鞄に返してもらったシャツを詰め込んだ。


 すっきりした気分で家に帰ったものの、シャツを袋から取り出したところで、俺は盛大に困った。


 なんだ。これは――。

 まず一つ、香りがやばい。俺のシャツは俺のシャツなのに俺の匂いがせず、何故か甘いフローラルな香りがする。

 もう一つ、洗っていないということは、と男子高校生ならではの妄想が捗ってしまう。直接このシャツが鈴木さんの肌に触れていたということは、つまりはこのシャツが青少年にとっての危険物であるということだ。


 青木は、自分がこのような邪念を抱いてしまうなら、いっそ鈴木さんにこのシャツをくれてやれば良かったと反省する。


 なんで、鈴木さんはあんなに無防備なんだろう! 悪用してしまいそうな自分が怖い。

 トラックに水をかけられた時だって、張り付いたシャツが透けて繊細なレースのブラジャーが見え目に毒だったし、俺のシャツをぶかぶかにして着ていた鈴木さんは、より一層幼く見え、視覚的にクるものがあった。


 その姿が忘れようとしても忘れられず、自分の頭がどうかしていると思った。

 もう一度、この甘い女の子の匂いを嗅ぎたいと本能が告げる。性欲に振り回されるのは、嫌だ。そう青木は思う。


 鈴木さんは、俺に甘い。優しい。カッコワルイ俺でも愛してくれる。そういうのが、本当に俺は嬉しくて――でも、自分が鈴木さんに夢中になるのはこわい。


 鈴木さんの、俺の心を占める割合は?



 ◇◆◇



 あれから、青木くんは少し余所余所しい。

 青木くんのシャツを中々返さなかったから、引かれてしまったのかもしれない。でも、ちゃんと返したよ。私。悪用してないよ!


「青木くん、ごめんね。なんか、私やらかした?」

 そりゃあ、いつも色々やらかしているよ。働いている所を覗きにいったり待ち伏せしたり、時々隠し撮りもしている。


「いや、ごめん。気にすんな。俺の問題だから」

「えぇ、私も青木くんの問題に参加したいよ!」

 そう張り切っていうと、楓ちゃんにぽんっと肩を叩かれる。

「そっとしてあげなよ」と、あきれたように話しかけられた。


 どうしよう。

 何があったんだろう。青木くんの心の変化の理由が分からない。

「紗枝って、自分に関することは本当に鈍いよね」

「ど、どどどど、どうしよう。青木くんに嫌われたかな」

 そう顔を青くしていうと、「それはないだろうから安心しなよ」と諭される。

「楓ちゃんに、分かって、なんで私には分からないの? ……ショック」


「鈴木さん、気にしないで。俺の心の整理ができていないだけだから」

 と青木くんは言う。心の整理ってなんだろう。まさか好きな人がいるとか? どうしよう。この私青木くんを好き続けていいのかな?


「もしかして、私のこと嫌? しつこい?」

 青木くんは首を横に振る。

 でも顔を近づけると、ぷいと背けられる。悲しい。



 そうだよね。青木くん、女性が苦手なんだし、当たり前かぁ。でも、胸が苦しいなぁ。そんなに、あからさまに避けなくとも。

 顔も近づけてくれないのかぁ……。

 お弁当も、しばらくの間は大丈夫と断られてしまった。



 それから、しばらく青木くんにそれとなーく避けられて、精神的にかなり落ちた。

 今までの想い出を胸にして、青木くんと距離を置いて過ごすしかないのかなぁとまで思いつめた。

 相手が嫌がることは、しちゃ駄目ってことぐらい、もちろん知っている。


 そのため、散歩のルートも変更した。

 胸がきゅーっと締め付けられるけど、時間が解決してくれるかもしれない。

 私は青木くん以外に夢中になれるものを探す。それは首からヒモでつるしているものだった。


 カメラで夢中になって色々なものを撮影した。

 青い空に白いうろこ雲。猫の逢瀬。夕日をあびた橋、家族や友達、タロウも。


 もうすぐ花火大会だなぁと思う。

 今年は誰と行こうと、思っていると、「最近、青木と仲良くしていないの?」とクラスの男の子に聞かれる。「えぇっと、勅使河原てしがわらくん。どうかした?」と話題をそらす。仲良くしていないなんて、口から吐いたらダメージを食らいそうで辛い。


 野球少年の勅使河原くんは、髪は刈り上げで、かなりさっぱりしているが、悪いヤツではない。底抜けに明るくて話していると楽しい。

「えーっと、楓から聞いたけど、青木と付き合ってないってことだよな……んーっと、じゃあ俺とさ、花火大会いかね?今度の」

 と、何と月末に行われる花火大会のお誘いだった。


 うぅーんと、悩む。予定はないけど、そんなに勅使河原くんと、そこまで仲良くないしなぁと思う。

 楓ちゃんが「いいなぁ、私も行きたい。ねぇ、紗枝も行こうよ」と案外ノリ気で断りづらくなった。

「うーん。楓ちゃんも一緒ならいいよ」というと、後ろから低めの声が割り込んできた。


「俺も――行く」久々に青木くんに話しかけられた。


 そんなに、青木くん花火大会いきたかったのか!久々に青木くんに話しかけられて嬉しくなる。これをきっかけに仲直りできるかもしれない。でも、勅使河原くんと青木くんって、そんな仲良かったっけ?


「え、あ、青木?」勅使河原くんは苦虫を潰したような少しバツの悪そうな顔をしている。楓ちゃんは「ははーーん」となんか嬉しそうにニヤけている。


 「駄目?」と珍しく甘えるような青木くんの動作に、勅使河原くんはうまく反応できていない。そして、青木くんは勅使河原君の肩に腕をまわし、「久々だな!遊ぶの」と楽し気である。勅使河原君は「あ、ああ」と肩を落としていた。

 青木くんが食いついてくるなんて花火大会がこの世に存在して良かったと思う。

 ちゃんと、仲直りできると良いなぁ。


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