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召喚士が召喚した召喚士 ~基礎から始める召喚マネジメント講座~  作者: KEI
第14.5話 盗賊は竜の寝息を聞いた

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(五)まだ生きている

◆ 二十 金を置く


 その夜、統領は金を持って隠れ家を出た。


 商人から得た金だった。


 袋は重い。


 だが、あの輪より軽かった。


 村へ向かった。


 魔物大移動で危険にさらされた村。


 赤竜に燃やされた村。


 避難民のいる仮設の集落。


 昼ではない。


 夜に行った。


 正面からではない。


 裏から入った。


 壊れた家の戸口。


 焼け残った納屋。


 井戸の陰。


 祠の裏。


 避難所の食料箱。


 そこに金を置いていく。


 声はかけない。


 名乗らない。


 謝らない。


 謝罪で済むことではない。


 捕まりに行くわけでもない。


 統領は、そんなにきれいな人間ではなかった。


 ただ、置かないよりはましだと思いたかった。


「誰だ」


 ある村で、声がした。


 統領は答えない。


「そこにいるのか」


 影に沈む。


 子供の声がした。


「母ちゃん、袋がある」


「袋?」


「金、入ってる」


「誰が……」


 統領はもういなかった。


 贖罪ではない。


 救済でもない。


 責任感と逃避と危険欲求が、絡み合っただけの行動だった。


 それでも、置かないよりはましだと思いたかった。


◆ 二十一 統領ではなくなる


 夜明け前、統領は隠れ家へ戻った。


 金の多くは消えていた。


 部下たちはすぐに気づいた。


「統領、どういうことです」


「抜ける」


「盗賊団を?」


「ああ」


「俺たちを置いて?」


「お前たちは好きにしろ」


「好きにしろで済むと思ってるんですか」


「済まないだろうな」


「なら」


「追えばいい」


 部下たちは黙った。


 怒る者がいた。


 理解できない者がいた。


 寂しさを隠す者もいた。


 盗賊団は、統領一人のものではない。


 残された者には、残された者の事情がある。


 裏切りだと言う者がいて当然だった。


「統領、本当に死にたいんですか」


 部下の一人が、低い声で聞いた。


 統領は首を振った。


「違う」


「じゃあ何なんです」


「生きていたいんだ」


「俺たちには、同じに聞こえます」


「だろうな」


 統領は背を向けた。


 追う側でいるより、追われる側の方が近い。


 死に。


 そして、生に。


◆ 二十二 まだ生きている


 統領は、倒木の陰で目を開けた。


 追っ手の気配は遠い。


 だが、完全には消えていない。


 昔の部下かもしれない。


 賞金稼ぎかもしれない。


 あるいは、まだ誰も追っていないのに、自分がそう感じているだけかもしれない。


 遠くに、焼けた森の匂いが残っていた。


 統領は倒木の下から出た。


 黒いマントについた土を払わず、そのまま歩き出す。


 夜明けの森は薄い。


 鳥が鳴いた。


 統領は一瞬だけ背後を振り返った。


 誰も見えない。


 それでも、追われている気がする。


 その感覚に、少しだけ息がしやすくなった。


 赤竜の寝息ほどではない。


 それでも、背後から迫るかもしれない足音は、統領に自分がまだ生きていることを教えてくれた。



作者個人サイトでは、人物相関図・各話アイキャッチ・用語メモなどの補足資料を公開しています。

※ネタバレ範囲にご注意ください。


https://www.simulationroom999.com/blog/summoning-management-course-basic-top/

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