第7話 適正
「シュン
今度はさ、パラメータを思い浮かべてみて」
「パラメータ?」
「ええ、ぼんやりでいいわ」
シュンは半信半疑のまま、目を閉じた。
意識を内側に向ける。
次の瞬間、あの半透明の表示が、はっきりと浮かび上がった。
⸻
STATUS
Reproducibility(再現性) :F
Ensemble(アンサンブル力) :F
Groove :F
Delicacy(繊細性) :F
Power(豪快さ) :F
Mentality(精神力) :F
Adaptability(適応力) :F
Beat Affinity(拍適正) :A
⸻
「…………」
シュンは、言葉を失った。
「……え、ちょっと」
もう一度、上から順に確認する。
何度見ても、結果は同じだった。
「全部Fじゃん」
思わず、声が低くなる。
「レベル120もあって
モンスターもしっかり助けれるのに、
なのに……これ?」
シュンは頭を掻いた。
「なんで、能力とレベルは関係ないの?
そこそこ強いって言ってくれてたのに」
ユウナは空中で静かに漂ったまま、淡々と言う。
「そう見えるわね」
「……」
シュンは表示の下の一行に目を止めた。
「……これ」
Beat Affinity(拍適正):A
「これだけ、Aだね」
Fが並ぶ中で、ひとつだけ違う評価。
まるで、間違いみたいに。
「拍適正って、もちろんぼくらの世界の拍ではないよね
ワン、ツー、スリー、フォーの」
「そうよ、数じゃない
リズムでもない」
ユウナは草原を渡る風に視線を向ける。
「もっと、自然そのものに近いもの」
シュンは黙ったまま、表示を消した。
レベル120。
能力はほぼ全部F。
ただ、謎の拍適正だけA。
「……拍って、うまく操るコツとかあるのかな?」
ユウナは答えなかった。
ただ、静かに微笑んでいる。
(早く行けって言われてるみたい)
シュンは小さく息を吐き、再び歩き出した。
街道の先で、空気が微かに揺れている。
理由はわからない。
けれど――
その揺れが、なぜか気になって仕方がなかった。
(あの子、レベルの上限ってどれほどと思ってるのかしら……
とても言えないわね、前の転生者は転生時点でレベル10,000超えてたなんて)




