第1話 グレイグ火山 《表紙あり》
コツ、コツ、、
ブーツの音が鳴る。
圧倒的な存在感。
クロニアの聖拍院に姿を現したのは彼だった。
「あ、来たわね
こっちよ!」
ジルが手を上げて呼び止める。
こちらを向き、その大柄な男は迫ってきた。
(おい、まさかこいつなのかよ…)
ライドンは落胆した。
彼の人生の中で、最も会いたくない奴。
「あれ、イーサップの制服…」
シュンは気づいた。
「そうよ、連盟に加入してもらったの
ご親族はちょっと乗り気じゃなかったけど、連盟としてはどうしてもほしい逸材だったからね」
「ジル、久しぶり」
「みんな、アーネスよ
イーサップでは大人を合わせても彼が一番の使い手だわ
シュン、スーノは同い年ね」
ライドンは明らかに敵意剥き出しの表情をしている。
アーネスは意に介さない様子だ。
「グレイグまでまた30キロくらいあるじゃない
アーネスがスリルガン家の馬車で来てくれたら、みんな楽かなと思って」
「俺をあてにしてたか
まあいいけど」
(誰がこいつの馬車になんか…)
と、言いたいが、そんなこどもじみたことは心に留めるライドン。
「アーネス、紹介するわ
クロニアのスーノ
プリーストのネリ
テンポスのライドンとシュン
テンポスの二人とは会ったことあるわよね?」
軽く一瞥するアーネス。
特に会釈するでもなく、ジルの方に向き直った。
それだけでもイライラが隠せないライドンだった。
「ジル、俺の成長のためにもなるメンバーって言ってたけど…」
「なるわ
一緒に戦ってみればわかるわよ」
アーネスにとっては同年代の使い手など皆取るに足らない存在と言えた。
おそらくジルがいなければ彼はここには来ていない。
「ふぅん…
あいつはいないのか?」
「あの子は連盟の律動師じゃないでしょ
こんなとこに連れてこれないわ」
二人の間で誰か特定のイメージがあるらしい。
でもこの会話に割って入れるメンバーはこの中にはいない。
「では説明するわね
グレイグレッサードラゴンは七月のある時期になると大量発生してふもとの集落に迷惑をかけるわ」
「こいつらの能力はそこまで高いわけじゃないんだけど、やっかいなのが
クビ、胴体、両サイド、尻尾でそれぞれ攻略のリズムが違うの
だから五人同時に戦う必要があるってわけ」
うなずく五人。
「それぞれの箇所でしっかりとダメージを与えて拍を整えてね
それが完遂すると彼らは数本の長い体毛に姿を変えるわ」
「毛…ですか?」
聞き返すシュン。
「そうよ、こいつらの正体は
グレイグドラゴンの首後ろの"鬣"よ
毛の生え替わりの時期に大量発生するのはそのせい」
「なるほど…」
「これが大変貴重なの
ドラゴンの霊毛と言われているわ
必ず持ち帰ってきてね」
「霊毛…
毛ですよね?何に使うんですか?」
何の気なしに聞くシュン。
「まあとても丈夫、というだけで使い道はいくらでもありそうだけど…
そうね、宗教儀式とか
まあ、あなたが聞いて何があるってこともないわよ」
ジルの真剣な表情に思わずゴクリと息を飲むシュン。
「ドラゴンの体毛よ
大きなエネルギーを秘めているのはわかるわよね
そして大きな力っていうのは使うものを強くもするけど、壊しもするわ」
「……」
「ま、そんなわけで、ネリ
やり方を教えるからあなたが持ち帰るのよ」
「そして、ここからが注意事項よ
絶対守ってね」
ジルの引き締まった表情に五人の緊張感は更に増した。




