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最終話 王都クロニア  《挿し絵あり》

クロニアの街は、まさに王都といった印象だった。

石造りの塔や高い建物が林立し、大聖堂のようにきらびやかな装飾を施された城が所狭しと立ち並んでいる。

中心部の王城に至っては、シュンの世界においてもなかなか見られないほどの巨大さだった。


中でもクロニアの聖拍院は、それらの豪華な建物に負けず劣らず立派な佇まいを見せていた。


聖拍院の外壁は、テンポスのそれの10倍はあろうかという高さを誇り、街の建物を完全に見下ろしていた。

まるで城壁のようなその内部には、巨大な女神像と、市民がくつろぐための広場が広がっている。

どうやらここは単なる施設ではなく、この街のシンボルかつ憩いの場のような雰囲気も兼ねているのかもしれない。


受付にて所属の確認を済ませ宿の手配を終えると、ここで2人はネリと別れることにした。

彼女は明朝のタスクのために今日は早めに休みたいらしい。


ライドンもクロニアに来るのは久しぶりらしく、興奮しているようだ。


「シュンが来てくれてからいいことばかりだよ

これまでテンポスから出られることだってあんまりなかったんだからさ

イーサップの街はあんまり良くなかったけど、ここクロニアは楽しいことだっていっぱいあるんだよね」


「それにしてもジルさんはどこに行ったんだろうな?

ムアーレにもいなかったし、ここにもいないし」


「師匠はひとつどころにとどまることを知らないからなあ

ただ、ムアーレにはクロニア連盟の人が代わりに入ってただろ?

同時に案件を抱えているから、そうやって人を使うことで複数の案件でも同時にさばくことができるんだよ」


「すごい人だな

見習わないと」


「冗談だろう?シュン

お前あんなに忙しくなりたいのか?まっぴらごめんだろ

今日はもうそんなに時間がないから、うまいもんでも食べに行こう

明日は早く起きて、遺跡を見に行こうぜ」


王都に来て、はしゃぎたい気持ちを抑えられないライドン。

真面目なシュンは、どうしても同意することができない。


「ライドン、明日は何かタスクをやった方がいいんじゃないか?何事も経験というしさ」


「シュン、経験と言うのであれば、遺跡を見に行くことがタスクより大事だと思わないのか?

そもそもこの間のタスクで結構なお金をもらっただろ?

金はいつでもここに来れば引き出せるんだから、おれたちはタスクなんかこなすより別のことでやはり経験値を積むべきなんじゃないか?」


方便に感じるけど、ライドンはたまにもっともなことを言うんだよなあ。とシュンは思った。


「まあとりあえずもういい時間だからさ、一旦宿まで荷物を置きに行くか」


聖拍院の大時計は三時を指している。

二人は大きな荷物袋を担いで街に出て行った。


王都の人々は、それぞれ生き生きと活動しているように見える。

テンポスと比べると、圧倒的に店の数が多く、洋服屋さんや金物屋さんなどもテンポスの店が霞んでしまうほどおしゃれに見受けられる。


何気なく街を歩く二人。ふとシュンは、店先に並ぶ樽の側面に刻まれた印に目を留めた。

丸みを帯びたDの字を模した紋章だった。

それは荷車の木板にも刻まれており、通りの向こうに見える倉庫の看板にも同じ印が掲げられている。


「……あれは何の印だろう?」


シュンが尋ねると、ライドンはちらりと視線を向け、ああ、と軽くうなずいた。


「あれはディアニルズ家の紋章だよ

この王都じゃ、よく見かけるだろ」


「どういうこと?家紋ってことかな」


「商家だよ

あそこら辺に並んでるのはだいたいディアニルズのものだってこと」


「え、それってすごいことじゃない?

さっきからDの字だらけじゃん、こんなにたくさん一つの家で…

独占禁止法にならないのかな」


「独占…なんだって?

よくわからなけど、ディアニルズはテンポスの街にも支部があるぞ

物流とかは他の家が入る余地はないんじゃないかな」


シュンは異世界の厳しい現実を知らされた。

独占禁止法が無いんじゃ新たに商売を立ち上げるのは本当に大変だ。


「そういえばライドンはさ、

前回いつクロニアに来たんだっけ?」


「半年以上前じゃないかな

あの時完全に師匠の付き添いというか、鞄持ちみたいな感じだったけど」


「ライドンはあんなに凄い人に何年も修行をつけてもらって、付き人までやらせてもらってるなんてうらやましいよな」


シュンにとってジルはもう完全に憧れの人だ。

彼女の口にした言葉は、何一つ忘れずに脳裏にこびりついている。


「……そういえば、ライドン

ジルさんが言ってたことだけど…

モンスター以外との戦いってどういうことだろう?」


シュンはずっと疑問に思っていたことを聞いた。

ライドンは、なんだそんなことかといった表情だ。


「シュン、師匠は今まで3つの勲章を得ている

ひとつがドラゴン討伐

ふたつめが治水事業の成功

みっつめが…」


「なんなの?」


「戦乱の平定だよ」


「それって…」


「まあ傭兵みたいなもんかな

シュン、律動連盟に入るってことはそういうことだよ

権力には逆らえない」

「戦場において飛んでくる矢を避けるためには、常に護りの光が必要だろ?」


シュンは背筋に悪寒を覚えた。


ーーーーーーーー


それからの10日間はあっという間だった。

二人はクロニアの遺跡を見に行ったり、巨大な美術館や博物館にも行った。

それ以外にもちろんタスクもこなして、滞在費も確保しながら過ごしている。

充実の日々だったと言えよう。


そんな中、その日は来た。 

ジルからの呼び出し。聖拍院に全員が集結する日だ。


「みんな、お待ちかねのタスクよ

体調は万全かしら?」


ジルのもとに集まったのは


シュン、ライドン、ネリ、スーノの4名だった。


「あれ、デコイはどうしたんですか?」


みんな不思議がる。

このタスクは五人組のはずだ。一人足りないと参加すらできない。


「デコイはね、ご親族に不幸があったのよ

事故とかそういうのじゃないから法事ね」


「でも、ジルさん

デコイさんがいなかったら、このタスクにチャレンジはできないんじゃないですか?」


ネリは不安がる。

一番タスクに参加したいのはネリだったから。


「それは大丈夫よ、代わりを用意してるから

やっぱり同じ位の年代の子がいいと思って声かけたの」


「そろそろ来てもおかしくないんだけれど…」


そのとき…、

聖拍院の前に高価な馬車が一台停まった。

乗車席には鷲に二つの剣が掲げられた紋章が刻まれている。


挿絵(By みてみん)






ーーーー第一部 完ーーーー

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