第107話 雨上がり 《挿し絵あり》
昨日の激しい雨が嘘のように、朝から快晴だった。
ボスからクロニア行きの許可をもらったシュンとライドン。
そうと決まれば朝早くから準備をしなければならない。
「なんかさ、結局クロニアに行くんだったらわざわざ一旦テンポスに戻らなくても、ムアーレからそのまま行っちゃえばよかったな」
「いや、レッサーとはいえドラゴンの討伐もあるんだろう?
危険もあるだろうし、やっぱり家族に伝える必要があるんじゃないか?」
「…そういえばライドンはこの1ヵ月ずっとおれと一緒にいるけど、実家には帰らなくていいの?」
想像していない質問だったのか、不思議そうな顔でシュンを見るライドン。
「農村から出て行った息子がそんなにしょっちゅう家に帰らないよ
まぁ、年に3回ぐらいは顔見せに行ってるからそれでいいって感じかな?」
「そうなんだ でもさ、イストもタルネも実家で親と暮らしてるんだろう?」
「シュン、女の子が一人暮らしできるわけないだろう?
ジルとかステラみたいな化け物ばっかりだったら、話は別だけどさ」
「ネリは一人で生活してるみたいだったけど」
「……まぁ律動連盟の正規律動師となると、世の中からの信用が大きく変わってくるんだよな
あの制服着てるだけでとりあえず物理的に結構強いやつって見られるからな」
ライドンは自慢げな口ぶりだ。
「まあこのビジスとかプロスの宿がなかったら、おれも実家から通ってたんだよ、きっと
ここの宿は、衣類から貴重品から何もかも預かってくれるだろう?
しかも、宿代は連盟が8割負担してくれるという
ここから出られなくなるわけだよ」
「え、そうだったの?
おれ何も知らずに、律動連盟に入る前からこんなに安く泊まらせてもらってたってことなのかな?」
「そうだよ、この"わたくし"の紹介ですので」
「ライドン、本当にありがとう以外の言葉が見つからないよ」
「さぁ、行くぞ
いざ、クロニアへの観光旅行へ!」
(おい、ドラゴン討伐じゃないのかよ)
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タルネとステラは聖拍院にいた。
もう朝9時になろうとしている。
1時間以上待っているが、シュンとライドンの来る様子は無い。
タルネはうつむいて悲しそうな表情だ。
もしかしたらもうシュンと会えないかもしれない。そんな想像もしているくらいに…。
しびれを切らしたステラは直接2階にいるボスに会いに行った。
「ボス失礼します」
「一体なんだ突然
何かあったのか?」
「いえ、そういうわけではありませんが
シュンの姿が見えないので、どうしたんでしょうか?」
「シュンか?やつは今頃クロニアに向かってると思うぞ。
昨日、雨の中ライドンがクロニア行きの申請をしてたからな
こっちとしても今の時期は大してタスクも多くないし、ジルと一緒にいてもらった方が実力がつくからOKしたんだよ」
「なんですって?
だったらそうと、なんで受付に伝えてくれなかったんですか?」
「?」
「全く、女心というものを全くわからないおじさんはこれだから」
「おじさん?」
「タルネの未来に何かあったら責任取れるの?って話」
「タルネさん…?
あ!ツキヨリは再来週じゃないか、まずいシュンをクロニアに行かせてしまっては」
「失礼しました」
ステラは急ぎ足でロビーへ降りた。
目に涙をいっぱい貯めて顔を上げるタルネ。
「タルネ、行くわよ
走れるわね?」




