第101話 ネリ 5 《挿し絵あり》
「シュン、あなたね
タルネだって大変だったのよ、死にかけたんだから
その心配もしてあげるべきじゃない?」
「タルネ、そうなのか?」
そうこうしてる間にネリは歩き出す。
「あ、ネリ!」
シュンはネリを追いかけた。イストはさっきまでの上機嫌から不機嫌MAXだ。
「あいつ何なのよ!
ただの女たらしじゃないの」
「しょうがないよ、ネリは今回シュンのことずいぶん助けてたんだから
結構親密な関係だったんだよ」
「シュン…そうだったの」
ライドンはタルネの気持ちなどつゆほども知らない。
「この一週間シュンとネリはずっと二人でいたんだよ
おれも今回は大変でシュンの世話まで出来なかったからさ
まあ、シュンにとってはネリが頼りだったんだよ」
「……」
なぜだろう、タルネは少し悲しくなる。
「タルネ、大丈夫?
シュンはそんなやつよ、相手にしなくていいのよ」
今度はタルネが涙を溜める番だった。
ライドンは気づかない。
「とりあえずおれはシュンを追うよ、飯に行く約束してたしさ
またな!」
タルネは自分の気持ちがよくわからない。
ネリが嫌いなわけじゃない。でも、なぜか胸が締め付けられて苦しい感覚に襲われていた。
「タルネ…
まったく、シュンのやつ
もう遊んでやらないわ!」
ーーーーーーーー
「ネリ、気にするなよ
とりあえずうまいもん食って、元気だせ」
沈んだ気持ちを霧散させるにはつづみ亭はちょうどいい場所だ。
男たちはネリの珍しい格好に興味を持って近寄ってくる。
ここテンポスには正規の制服を着た未成年の少女など一人もいない。
「お嬢ちゃん、これも食べな
うまいぞ」
「エールは飲んだか?注文してやるぞ」
ネリはいつもうつむき加減だが、よく見ると愛らしい姿をしている。
顔も整っているし、小さくてかわいい形の口をしていた。
後ろに結んだ三つ編みもチャームポイントだ。
「エール飲んでみようかな」
「え、ネリはお酒飲むの?」
シュンは驚いて聞き返す。
「ないです、でもなんとなく飲んでみたくなりました」
「そりゃいい、グイッと行こうぜ」
ライドンは若いくせに景気をつけるのが大好きだ。
「ネーリ!ネーリ!」
店のみんなでコールが始まった。
「ネーリ!ネーリ!」
ゴクゴクゴク…。
「ふぅ」
「…美味しいわ」
わっと湧き返る店内。ネリはもうこの店のヒロインと化していた。
ゴクゴクゴク…。
「いいぞーっ姉ちゃん!」
「もっといけーっ!」
男たちからの熱い声援。
場の盛り上がりは最高潮だ。
「ヒック…うーい」
ネリの目が座り出した。シュンは嫌な予感がする。
「うるせぇぞ、おめえたちっ!」
シーン…。一転して静まり返る店内。
「おい、空になったからよ
おかわり早く持ってこいよ」
「ウオーッ!!」
ネリは確実に場を支配していた。




