第1話 拍の力 《挿し絵あり》
ドン!タ!ド!ドン!タン!
シュンは力いっぱいドラムを打ち鳴らした。
叩き出された音は空気を震わせ、光となって敵へと襲いかかる。
だが、
そのドラゴンはただ悠然とシュンを見下ろし、ゆっくりと首を左右に振るだけだった。
(効いていないのか……?)
これまでメトルの森でもクロニアのタスクにおいても、シュンはこの攻撃で大概のモンスターを蹴散らしてきた。
それでも今回の相手は、微動だにしない。
シュンは思わず横を見る。
相棒のライドンは片腕を負傷し、もはやリズムを刻めない。
スーノは全身を震わせ、楽器の具現化すらできずにいた。
一昨年の、王立学院首席。
その彼女でさえ、この巨大なドラゴンの前では足がすくんでいる。
《拍》は精神の戦い。
楽器を出せなくなった時点で、戦線復帰は不可能だった。
ドーンドターンド!
ドーンドターンド!
ドラゴンの背後から、リーダーのネリが攻撃を仕掛ける。
彼女が持つのは、壺型の楽器の《ドゥンバ》。
振り落とされる掌の動きに呼応して、重い音の波をその背に叩きつけた。
「お願い……効いて……」
だが、その一撃も、ドラゴンの鬣をわずかに揺らしただけだった。
「ゴアアッ!」
次の瞬間…
ドガッ!!
ドラゴンの尾が薙ぎ払う。
その射程に入っていたネリは、咄嗟に岩陰へと転がり込んだ。
「シュンさん!もう一度、いきます!」
「ああ……!」
それしかない。
今、戦えるのは自分とネリだけ。
だが…
(手応えが、まるでない……)
「ゴアアッッ!!」
来る。
横薙ぎの頭突き。
「わっ!」
体が宙を舞い、地面へ叩きつけられる。
なんとか受け身は取れたが、
視界の端で、ドラムセットが霧のように消えていく。
「シュンさん!」
遠くでネリの声が響く。
(クソ……どうしてこうなった……)
(もう……だめなのか?)




