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ごめんなさいね、もう聖女やってられないんですよ   作者: まんぼうしおから
第三章・祖国没落

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108・出発準備と安全確保

 かくして弟子持ちの身となった、この私クリスティラ。

 それからは、特にこれといった出来事や揉め事もないまま数日がのんびりと過ぎ、


「──ということで、よろしく」


「分かりました。それで進めましょう」


 滞りなく、ウィレードラさんとの打ち合わせも細かいところまで終わり、豪邸から我が家へ戻り、


「はい、皆さん。以前から話していた、エターニアへのポーション運送、その護衛のお仕事ですが……三日後の朝からに決まりました」


 という事になりました。



 居残りは、ピオとミオ、サロメ、バーゲン。

 護衛として同行するのは、私、リューヤ、ギルハ、オレンティナ、ルミティス。

 事前に軽く話し合っていた通りの組み分けです。


 素早い攻めの要員として双子にも来てほしかったのですが、まあ本人達が乗り気ではないので無理強いはしませんでした。

 足の速さならリューヤもかなりのものがありますからね。その手の仕事は彼に任せましょう。

 それに対人戦ならギルハの針が猛威を振るいます。チクリとしたらもうお仕舞い。そこから先は操られるのみです。


 オレンティナとルミティスに関しては、心配すべき点はありません。

 元々ここまで一人旅してきたのですから、旅慣れしてるに決まってます。己の身に振りかかる火の粉を払った経験も何度かあるのではないでしょうか。

 実力も弟子入り前に確認しましたからね。二人とも十四歳の実力とは思えないレベルでした。

 あれだけこなせるなら問題なし。

 ただ、守護聖女を目指すのですから、これからは自分()()を守ることを重視せねばなりません。


「なので荷馬車や旅商の方々の護衛は、主にあなた達に任せます。いい修行になるのではないですか?」


「お任せ下さい」


「見事守りきって見せますわ」


 自信ありげに二人が一礼しました。

 失敗などあり得ないと、そう顔に書いてあるかのようです。


「なんでしたら、私一人だけで問題ありませんわね」


「そして尻拭いを僕に押しつけてくるのかな?」


「あら、私の手に余ることを、あなたにどうにかできると思ってるの? おめでたいわね」


「多分楽勝だと思うよ。君に出来ないことでも、僕には簡単なことだろうから」


 また始まりましたね。


「ほらほら、お止めなさい」


「大丈夫なのかこの二人。まだ旅立ってすらいないのにこれだぞ?」


 リューヤの疑問ももっともです。

 ですが、しかし片方だけ置き去りにするようなエコひいきもできません。二人とも置き去りにするのは本末転倒すぎます。

 旅の最中、こんな具合に荒れることになろうとそこは目をつぶって、どちらも同行させるしかないのです。

 幸いなことに、この二人は私を尊敬していますから、叱れば大人しくなります。

 聞き分けいいのは助かりますね。

 まあ、二人のうち一方は、尊敬以外の感情というか情欲というか、怪しげなものも宿していますが……。


「そこはまあ、楽しみにしてくださいな。指導者としての私の手腕をね。くふふっ」


 意気込みを兼ねて指をポキポキと鳴らすと、リューヤが小声で「手際じゃなくて腕力を見せつける気かよ」と言ったのが聞こえました。

 気のきいた反論でもしてやろうかと思いましたが思い浮かびません。私の素直で純朴な性格がここでアダとなりました。

 それでも、なんでもいいから言おうとしてもたついてると、サロメとバーゲンが会話に加わってきました。


「この家や薬草畑のことは任せなさい。私達で世話しておくからね」


「うむ。ここは我らが守るゆえ、大船に乗った気分でいろ」


「……そうですか」


 家はともかく、畑を魔神と野菜のお化けに任せるのは心強さと不安が半々ではありますが、しかし仕方ありません。

 何も起きないし起こしたりしないことを祈るばかりです。


 ……ところで、サロメはわかりますが、バーゲンはどうやって外敵や災害に対抗する気なのでしょうか。

 そこのところ聞いてみたいですが…………いや、やめておきましょう。なんか怖いし気持ち悪そうなので。

 偏見かもしれませんが、嫌な予感には従うのが私のスタンス。

 直感って意外と当たるものなんですよ。


「…………」


 ところで、祈りだけで対策完了するほど私も呑気ではありません。

 それとなく、無言で双子のほうに目配せします。

 すると、向こうも気づいて目を合わせてくれました。


「「…………」」


 あちらも無言のまま。

 なので、あえて語らず、少しだけ頷きます。


こくり


こくり×2


 以心伝心。

 私の言いたいことが言葉にせずとも伝わったようです。

 私のほうへ頷きを返す前に、二人ともサロメとバーゲンをチラ見しましたからね。一応後から確認しますが、多分わかってくれたんだと思います。



 こうして念には念を入れておくことで、我が家とその敷地の安全は確保されました。

 今やれることはこれが限度でしょう。


 あとは出かける準備です。


「行ったり来たり、どのくらいかかるだろうね、クリスさん」


 ギルハがそう聞いてきました。


「馬車と荷物がいっぱいありますからね」


 二人旅の時みたいにさっさと進むのは不可能です。


「運送期間は……往復で、ざっと二ヶ月くらいかかるとみていいでしょう。それも、何事もないまま無事に行き来ができたらという、楽観的な計算ですがね」


「んー、なら、僕が兄さん共々あの連中に雇われてた時と同じくらいかな? まあ、もっとすいすい行こうと思えば行けたんだろうけど……兵隊の頭数増やすために、寄り道してたから……」


「そういえば盗賊みたいな風体の連中いましたね」


「みたいなっていうか、そのものだったんだけどさ、ハハッ」


 本当に盗賊だったんですね。

 なら、共同で盗賊退治したようなことになるのかしら、この場合。


「なんたら盗賊団とか言ってたっけな。えっと、あいつら何だったっけ…………う~ん……」


「ハナから憶えてないのでは?」


「かもね」


「それで正解ですよ。そんな連中、いちいち憶える価値も必要もないですもの」


「ハハハッ、確かにそうだね」


「くふふふっ」





 ──と、楽しい会話を弾ませながら、数日間、準備を着々と進め。


 出発当日を迎えました。

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