表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
仮想と現実  作者: 凜
3/5

学校の秘密

目を開けると…ヒナ…ではなく、母の顔があった。


夢…か…


どうやら昨日の停電のあと眠ってしまっていたらしい。

僕は公立の高校に通うごく普通の17歳。サラリーマンの父、専業主婦の母との3人暮らし。

別に生意気な妹がいる訳でも、男勝りな美人な姉がいる訳でもない。

僕は夢の余韻も覚めやらぬまま、母に急かされ、家を出た。


はっきり言って学校は嫌いだ。

母の手前、仕方なく通ってはいるが、本当は行きたくない。

僕には友達がほとんどいない。クラスでも浮いた存在だ。

話す相手といえば、小学校からの幼馴染のリクとハルカくらいのものだ。2人は社交的な性格でクラスでも友達も多いが、僕には変わらず話掛けてくれる。コミュ障の俺も2人には普通に会話ができる。こんな俺が今までイジメられなかったのは2人のお陰だ。その点に関しては感謝している。

ただ、休み時間毎に僕の机に来て話し掛けるのには閉口している。

僕は静かに過ごしたいだけなんだ。


「おい!うちの学校の秘密知ってるか?」

リクがまたいつもの様に興奮して話している。

バカバカしい。高校2年にもなって何を言ってるんだか…。

「学校に秘密の地下があるって話でしょ?そんなの本当にあるの?」

ハルカが喰いついた。

「ああ、地下は本当にあるらしい。うちの事務員さんから入口の場所も聞いてる。但し、今いる人は入った事が無いらしい。そこにはうちの学校の秘密があるとかないとか…。」

ますますもってバカらしい。



時刻は夜の9時

僕たちは学校の地下に通じていると言われている倉庫の前にいた。

リクと僕は高校のジャージ、ハルカはGパンに黒のTシャツに銀のネックレスをしていた。去年の誕生日に僕がプレゼントしたものだが、デザインが気に入ったとかでいつも付けてくれている。


結局誘いを断れずに来てしまった。

いつもそうだ。彼らに誘われるとロクなことにならない。


「では、行きますか。」

どこからくすねてきたのか、倉庫の鍵をジャラジャラさせながらリクは言った。


倉庫の隅にソレはあった。

何者をも拒むように錆び付いた鉄の蓋。

リクと僕が錆び付いた取っ手を握る。

「せ〜の!」


ズズズズズズ


蓋がひらいた。

同時に湿った冷たい空気が顔を撫でる。

開いた闇にライトを照らすと、梯子が見えた。

どうやら高さは10メートルほどあるようだ。

下は通路になっており、その先はここからは良く見えない。


最初にリク、次に僕、最後にハルカが梯子を降りた。

「カイトの変態!」

どうやら僕の手がハルカのお尻に触れてしまったらしい。

「誰が好き好んでハルカの尻なんか…イテッ!」

言い終わる前にハルカのローキックが炸裂した。

「バーカ!」

悶絶する僕の頭上から罵声が浴びせられる。どうやら気が済んだらしく、声は笑っている。

「おい!じゃれてないで早く行くぞ!」

リクの声に僕は立ち上がり、ノロノロと歩きだす。2人は俺を置いて、さっさと先に進んでいた。


急いで2人に追いつく、漆黒の闇の中では、ライトの光だけがたよりだ。3人揃うと、立ち止り、改めて周りを確認した。コンクリートで囲まれた横2メートル、高さは3メートル程の通路が真っ直ぐに続いている。点検用の通路だろうか、壁に残る黒いシミが人の顔のようで、恐怖を増幅させる。


ギュッ


ハルカが僕の服を掴んできた。その手が震えている。普段は勝気なハルカも一応女の子ということか…。


「おい、やっぱり止めようよ。なんかヤバイって。」

という僕の言葉が聞こえていないのか、リクはどんどん先へ進み始めた。早い!俺とハルカはついていくので精一杯だ。


代わり映えのしない通路が続いた後、突然開けた空間が広がっていた。通路は今歩いてきた通路の他に幾つかある。

「リク!お前いい加減にしろよ!」

イラついた僕が、リクの肩を掴んだその時…!


「ウウウゥゥ……」


誰かが呻く様な、泣く様な、そんな声が聞こえた。


「ウウゥゥ…タ…ス……ケテ」


声は、右の通路から聞こえてくる。僕は右の通路を進んだ。

今度は俺が先頭で2人は僕の後を無言で着いてくる。とはいうものの、2人の存在を示すのは、足音と2人が持つライトの光だけだ。


10メートル、いや、20メートルだろうか…、代わり映えのしない通路を歩き続けると、突然前方に錆び付いた鉄の扉が現れた。その光景は禍々しく、開けるのを躊躇わせた。だが、確かにこの中から声が聞こえてくる。


「ウウゥゥ…ダレ…カ…」

「モ…ォ…イヤ…」


僕はその声に導かれる様に扉を開けた。


ギィィィィ……


嫌な音をたて、扉が開く。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ