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カナリスのガルニド邸で、夜に行われたパーティー会場に、ドレスアップと変装をしたキャットは居た。
大勢の客たちをさりげなく観察していると館の主、50代前半のガルニドが近づいてくる。
「お嬢さん」
彼は脂ぎった顔を綻ばせ、話しかけてきた。
「上手く化けているね」
「ありがとう」
キャットは慌てない。
これから起こることは折り込み済みだった。
「フリーメン4」
ガルニドが肩をすくめる。
「なかなか尻尾を掴めずに苦労したよ」
彼がウェイターの差し出した飲み物を取り、キャットに渡す。
キャットは受け取ったが、飲みはしなかった。
「やっと特定した君を捕まえようとしたが、マゼラムではまんまと逃げられてしまったね」
ガルニドが、フッフッと笑う。
「今回は絶対に逃がさんよ。お嬢さんを捕まえて、他の3人を引きずり出す。弟の仇は必ず討つ」
彼の双眸が、ギラッと光った。
「ボディチェックで武器は持ち込めなかったろう? 噂に聞くタイガーという男なら、素手でも何とか戦えるかもしれないがね。否、彼でも無理だろうな」
ガルニドがパチッと指を鳴らすと、会場の全ての客がキャットに銃を向けた。
「大人しくしなさい」
「これは悪手じゃないかしら?」
キャットが微笑んだ。
その屈託の無さに、ガルニドが呆れる。
「どういうことかな?」
「わたしを囲めば、味方同士で流れ弾に当たるわ」
「抵抗するつもりか?」
ガルニドの両眉が吊り上がった。
素早くキャットと彼の間に入った手下たちの後ろに退がる。
「かまわん。歯向かったら殺せ」
ガルニドが会場の手下全員に命じた。
その時。
照明が消えた。
レイによる、屋敷の管理コンピューターのハッキングだ。
「殺せ! 殺せ!」
半ばパニックとなったガルニドが叫ぶ。
手下たちの銃が、一斉に火を吹いた。
しかし、闇の中、キャットはすでに移動している。
タイガーが手近な1人の男をぶん殴り、銃を奪った。
手下たちの位置を教える銃の発射光へ、ジャガーが銃弾をお見舞いする。
撃ち倒した敵の銃を拾った彼の2丁拳銃が、次々とガルニドの手先を屠った。
照明が復活する。
会場に立っているのは、フリーメン4とガルニドだけだった。
「そ、そんな…」
ガルニドは怯えた。
「バカな…お前は! お前はいったい!?」
ジャガーの撃った弾丸が、ガルニドの額を貫き、絶命させた。
フリーメン4の銃担当は弾の無くなった武器を投げ捨て、新しい1丁を拾い、会場を出る。
エアカーに乗った。
ハンドルを握ったチーターが「どちらまで?」と、笑って訊いた。
タイガーとキャットも笑いだす。
ジャガーは無言だが、瞳は笑っていた。
いくつかあるアジトのひとつで、レイはタブレットの画面を見つめていた。
今はフリーメン4について調べている。
昔、ハイブリッドソルジャーというプロジェクトが存在した。
すさまじい戦闘能力を持つ兵士の開発計画だ。
彼らは名うての傭兵「ジロモキュ」のジローと逮捕収監されている1人を除き、全員が死亡した。
ほぼ同時期、ハイブリッドソルジャーに類似した計画が複数あった。
そのひとつが、異なる適性を1人の人物に集めるマルチソルジャー計画だ。
様々なアプローチの中、特に異質だったのは、1人の人格を専門性ごとに分割する実験だった。
フリーメン4のキャットは、その完成体で、銃のスペシャリスト・ジャガー、格闘のプロ・タイガー、ドライビングの天才チーター、3人の別人格を持っている。
といっても、彼らは同じ部屋をシェアする者同士のような関係だ。
互いに話し合い、いつでもキャットの身体を使用できる。
体内のナノマシンが適切な処理を行い、それぞれの反射神経、筋力などを変化させ、各人格の能力を100%引き出す。
これによって、キャットの肉体とは最も対極であるタイガーの人格時には、あり得ざるレベルの超怪力が発揮可能なのだ。
彼女は他の3人格の能力を瞬時に使用できるのである。
計画の中止とともに、キャットは野に放たれた。
これが、レイが知り得たフリーメン4の正体。
この事実は、誰にも教えはしない。
彼女、否、彼らとレイ(16歳、丸眼鏡、緑色ミドルヘア女性)の関係は、今のところ良好だ。
互いの利害は一致している。
フリーメン4の秘密の維持は、レイに取っても都合が良い。
考えたくはないが、もしも彼らと敵対する時が来たなら、その時はこの事実を最大限に利用して戦うまでだ。
レイはタブレットを操作し、キャット、否、フリーメン4に次の仕事依頼を送った。
この広い宇宙には、まだ始末しなければならない悪党どもがウジャウジャとのさばっているのだ。
ターゲットの武器商人のアジトで、ジャガーの銃とタイガーの格闘を存分に活かして暴れ回ったフリーメン4は、敵のエアカーを奪って発進した。
残った荒くれ共は、数台の車で追ってくる。
敵の改造車はこちらのエアカーに迫り、たまたま当たった追っ手の銃弾が故障を引き起こした。
「あらら! こいつはダメだな! 別の車、プリーズ!」
チーターが、おどける。
「その辺で停めろ。オレが奴らを全員、ぶちのめしてやる!」
タイガーが吼えた。
「わたしも引っ掻いてやるわ!」
キャットが笑った。
チーターが道横にエアカーを停める。
敵の車も次々と停まり、バラバラと車を降りた男たちが、フリーメン4を包囲した。
「けっこう居るわね」
キャットが片眉を上げる。
「大丈夫だ」
ジャガーが銃を構える。
「4人なら、おれたちは」
キャットのかわいらしい唇から「「「「無敵だ!」」」」と、4人の声がした。
おわり
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大感謝です\(^o^)/




