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Angels, or Not__  作者: 鬼王丸
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10/10

10.図書室

ここまでの登場人物


エンジュ:元気いっぱいの栗色ショートボブ。天然っぽい。たまになんか爆発する技が使えたりする。

シュスラン:エンジュの幼馴染。紺系のちょっとセミロングくらい。エンジュには当たりがキツイが、引っ込み思案で、ちょっと臆病。たまに手からビーム的なものが出たりする。

ホオズキ(鳳月舞):高校生くらいの明るい髪色の大人っぽい女の子。大人っぽさが眩しいらしい。足技が得意で、魔術の適性があるらしい。

アカネ(茅ヶ崎茜):くせっ毛の中3の野球・ソフトボール少女。自称美少女。エンジュにお腹を強打される(どうでもいい)。負けず嫌い。

図書室。というより、図書”館”といった方がいいだろうか。

国立の大図書館と言った様子だ。


「うわ! メッチャ広っ!」


アカネは部屋に入るなり感嘆の声を上げる。

アカネの上着がいつの間にか制服からジャージに変わっており、スカートにジャージという出で立ちになっている。

オレンジ色の肩にラインの入ったシンプルなものだ。


保健室にあったらしいので、いわゆる学校指定の運動着というやつなんだろう。

彼女いわく、制服は堅苦しいから嫌なんだそうだ。


今回この場所に来るにあたって、アカネの能力についてはそれなりに調査済みだ。


単純なパワーは一番高いであろうエンジュに次いで高く、

身のこなし、体の動かし方については一番成熟しているホオズキの次に高い。

丁度二人の間くらいの能力だと言える。


それに加えて、本人曰く「必殺技がある」ということらしい。

エンジュ、シュスランはまだ能動的に能力を使えるとは言い難いが、

本人がそういうということは、意図的にその能力を発現できるということなのだろう。

もしかしたら一番の戦力なのかもしれない。


シュスランはアカネに続いて図書室に入るなり言う。


「やっぱりおかしいです…。」


ここに来るまでの違和感の正体にやっと気がついて、そう口を開いた。


「あの気持ち悪い感じが無くなってる…。」

「無くなっている?」


ホオズキも室内に入りつつ話を促す。


「はい、そうです…。ここに来るまでに何かおかしいと思っていたんです…。」


この場所を怪しいと思った時は、扉の向こう側からもわかるような気配だったが、

今は綺麗さっぱりと、消えているのだという。


「じゃあどうすんの〜?」


アカネは頭の上で腕を組みながらいう。

確かに例の気配を辿ってここまで来ていたので、急に目標を失ってしまった感はある。


ホオズキはしばし考える。


「う〜ん。このまま帰ってしまうのもどうなのかしら…。

 もしかしたらここにも何か残っているかもしれないし。」

「んー、そだねー。じゃあそうしよっかー」


アカネはその決定にさほど重要視していない様子で返事をする。


4人はひとまず大まかに場所を把握しようと移動し始めた。


ここは図書室だけあって騒がしい感じではないようだ。

ただ一つ一つの本棚が高く、本棚の隙間に入ってしまうと視界自体は遮られてしまうが、

天井は高いので、いざとなれば、お行儀悪く本棚の上に乗っかってしまってもいいだろう。


構造から察するに、円形の構造で外周に本棚、中央が吹き抜けのような空間になっているようだった。

円の中心に向かっていくに連れ、すでに図書館にしては異形のものが目に映る。


「うわぁ、すごい木だねー!」


エンジュがそれを見て感嘆の声を上げる。

おそらく部屋の中央であろうという場所を貫いて、巨大な木が聳え立っている。


いや、これは木なのだろうか。

表面の質感は確かに木の根や幹の類に見えるが、

少なくとも見える範囲に枝や葉といった末端部分を確認できない。


アカネは近づいて、木の幹が貫いている地面を覗きに行こうとする。


「何この木。地面から生えてきちゃってんのかな?」


木の幹の隙間から見てみるが、ただただ暗黒が広がっており、中がどうなっているのかは確認できない。

少なくとも、すぐそこの地面に土があるような環境ではないらしい。


『誰かそこにいるの?』


突然声がアカネの耳に入ってきた。


「ん? 舞さん何か言った?」


アカネはホオズキのことを下の名前で呼ぶ。


「え? 私は何も…?」

「んー。今なにか聞こえた気がするんだよね。」

『誰かいるの?!』


今度は確実に聞こえた。ホオズキでも、ここにいる誰でもない声。

だかその声には、何か硬いものの中で反響したような、金属音ような響きが乗っていて、

やや聞き取りづらい。


「どこにいるんだよ。声が響いてよくわからないよ。」

『わからない…。真っ暗で何も見えない。』


だかアカネの耳には、それなりに近いところから聞こえてきているような感覚がある。

残りの3人も、その様子に近づいてくる。


『分からないけど、暗くて狭い場所で身動きが取れないの…。…助けて…。』


助けて、という言葉にアカネはピクリと反応する。

ホオズキもその声を聞いて、もしかして、と切り出す。


「木の中じゃないかしら。すごく近い距離にいる感じがするわ。」


それに気がついた瞬間、足元を大きく揺らして、目の前の木が動き出した!


「わ、わぁ!」


地面が割れて、前にいた二人と、エンジュ、そしてシュスランがバラバラに分断されてしまう。


木は一本の幹、あるいは根のように見えていたが、複数に別れて上方に伸びていく。

登っていく別れた根(と表現するが)の隙間、少し瘤になっている部分に何かが反射して見えた。


『た、助けて!』

その隙間から見えた声と光を、アカネは見逃さなかった。


「そこっ! 任せとけ!」


叫びと共に、右手を振りかぶると、その手の中に黒い光が生まれた。

そのうちに木の根は何かを察知したか、加速して一気に上昇する!


「行かせるかよぉぉーーーー!!!」


手に持ったそれを野球の投球フォームよろしく、かなり大きく踏み出して、

弓のように思い切り腕をしならせて全力で投げつける。

一閃、まさに一条の黒い光となって、まっすぐにその何か見えた間隙を貫いていた。


それは着弾と同時に、なにか黒い塊となる。

ドン!と鈍い音がしたかと思うと、一瞬にして周囲の木はバキバキと音を立ててひしゃげていく…。

何か非常に重いものにでも押しつぶされるように。

その重力球が投げつけられた場所から、木が完全に上下に切断された。


「ちょっっ! そこまでやって大丈夫!?」


これで確かに上方に運ばれてしまうことは止められたようだが、

ホオズキは、そこにいるであろう声の主を心配する。


「大丈夫だよ、ほら。よく見て!」


そういってアカネは着弾地点を指す。

そこには、何か半透明な球体の中に閉じ込められている少女の姿があった。

その球体は木の幹よりもかなり頑丈らしく、重力球が触れていても傷がついている様子はない。

むしろ重力に押し込まれ、吹き飛ばすに済んでいるようだった。


「ウチ結構目がいいんだよね!」

「もう! そういうことは先に言ってください!」

「いちいち言ってたら間に合わないよ〜」


そうこうしてるうちに、二人の間を何かの影が遮る。

見れば、木の根がうねり、今も振り下ろさんがばかりだった。


「おっと! 危ない!」


振り下ろされるその木の根に、二人はきれいに二手に別れて回避する。

この木は、確実に意識を持ってこちらを狙ってきている。


2度、3度とホオズキとアカネを狙って根が振り下ろされるが、

二人は身軽に難なく回避する。


その間にホオズキは横目で閉じ込められていた少女を確認するが、

どうやら標的がこちらに移っているらしく、重力球は消えているものの、先ほどとほとんど変わらない状態を維持している。


あの障壁は、なんのためにあの少女を囲っているのかパッと思いつかなかったが、

ともかくかなり頑丈なようなので、外傷という点については問題はなさそうではある。


しかしながら、今こうやって何らかの意識を持って狙って来ているところを考えると、

閉じ込めるように囲われていたあの少女は、意図的に狙われていたのだろう。


また攻撃を数回を回避したとき__


「シュスラン! 躱して!」


エンジュの叫び声が聞こえた。


しまった!っと、ホオズキがシュスランのほうを見るが、今にも振り下ろされんばかりの状態だった。

しかも、すでに何度か回避したあとなのか、シュスランは躓いてしまっている。

あれは絶対に本人では躱せない。


(なんで気づかなかったの? バカだ!)


自分自身の間抜けさに呆れながらも、

自分の速さなら、もしかしたら間に合うかもしれないと、ただその思いだけでシュスランの方に全力で蹴り出した。


その瞬間、何かが聞こえた。


__輝かしき者よ、祈りを__


ホオズキは、体が軽くなったような気がした。


木の根がひときわ力強く打ち下ろされたその瞬間。


「大丈夫?」


間に合った。

ホオズキはシュスランを抱きかかえて、滑り込むようにその衝撃の瞬間を回避していた。


シュスランが目を丸くして、ホオズキのことを見ている。

かなり驚いている様子だ。


「?」


確かに間に合ったのは意外だったかもしれないし、自分も間に合うとは思っていなかったが…、

そんなに驚かれるものだろうか?

ホオズキは、間に合ったことに安堵しつつも、その表情を不思議に思っていると。


「ホオズキさん…その背中…」

「? 背中?」


ホオズキは、そう言われて自分の背中を見てみる。


その背中には、翼が生えていた。

純白の、眩しいほど真っ白な翼が生えていた。


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