第十八話 秘めた力
海俊を失ったことで悲しみに暮れる紅蘭。彼女はふと、自身の過去に思いを馳せる。
* * *
今から数年前のことになる。私・紅蘭は山奥の小さな孤児院で育った。親がいた頃の記憶はない。私の育て親は、その孤児院で働く村の長だ。
彼の名は晩師。白い髭を生やした長老のような見た目の優しい村の長だ。私の育て親であり、身寄りのない子どもらのために孤児院を経営している。
晩師が私を助けたのは、私が齢およそ三の時になる。私は胸に大きな傷を負い、深い森の中に一人倒れていたと聞く。
晩師はその後、私を村に連れて行き、胸の傷を治すための妖術を施した。私はそれで回復したが、代わりに少々記憶を失ったそうな。
そして月日が経ち、私は彼の勤める孤児院で育ち、彼に妖術を教えてもらった。
妖術を学べば自らの身を守ることができる上、誰かを危険から守ることだってできる。妖術は素晴らしいものだと、晩師は言った。
* * *
ーー現在。
晩師が私の胸の傷を治すために施した妖術とは何だったのか、幼き日の記憶を無くした私には分からぬが、私の胸には秘めた力が宿っている。
蒼大蛇の攻撃から私を守ったその妖術の正体は、一体どういったものか。
また、妖術故に、私の乳房はどういうことか少々豊満気味だ。年頃の乙女としてやや気になる。天国にいる晩師には、それだけ少し怒っておきたい。




