16.
適当に未来予想していると、いつの間にか前の2人がこちらをじっと見ていた。
え?何?
なんでこっち見てるの?
「大丈夫ですか?」
「ッ!!」
アークオーエンさん、その表情はワザとですか?
心配げにこっちを覗き込まないでくださいィィ。
最初に会った時のあの怜悧な表情はどうした。
どこに置いてきたんですか???
戻れ、戻ってくれ、戻ってきてください、お願いします。
はぁ、美形は存在するだけで人を殺せるわ。
事実、この数秒で私は不整脈になった。
帰ったら、CTと胃カメラと心電図受けないと。
ポーカーフェイスを装いましたが、心の中はこんな状態。
「急に黙り込んでしまわれたので、心配しました」
「自分の置かれている状況を把握するのに精一杯で……すみません」
何しろ地球に帰る時は、相当の覚悟が必要だという事が判ってしまったのだから。
頭の中はパニックだ。
「話を続けましょう」
流れを止めてしまった私が、こんな事を言うのもアレだけど。
取り敢えず、今後の待遇なぞ聞いてみようか。
「私の話ばかりで大変恐縮なのですが、今後自分はどういった待遇におかれますか?」
「そうですね、タダさ……いえ、ルイとお呼びしても?」
「え?はぁまぁ、お好きなようにお呼びいただいて構いませんよ?」
発音しにくいのかな?
「ではルイ、貴方の今後の事ですが……」
アークオーエンさんが話し始めてから、宗谷英規の顔がだんだん不機嫌になって行く。
所謂平謝り事件の時のような顔だ。
理由が判らないだけに、気持ちが落ち着かない。
やっぱ苦手だわ、この人昔から。
で、一方どんどん話続けていくアークオーエンさん。
要約するとこうなる。
宗谷英規は、宗谷奏楽の血縁であるため、国王預かりとなりここに滞在。
宗谷英規は、奏楽に与えられた身分をそのまま引き継ぐ事が決定されている。
私の身分は、容疑が晴れたばかりの為未確定。
暫く、この王宮で客人扱いを受けることになる。
何かの催しがあった場合は、出席してもらう事があるかもしれない。
異世界という概念がこの国に存在しないため、口外無用にと念押しされてしまった。
知っているのは、ある程度の地位のある者だけなので注意する事。
といった事だった。
私はこの国の知識をまず手に入れなくてはならないので、この待遇は少しというかかなり助かる。
ある程度知識が溜まったら、王宮を出て一人で暮らすのもいいのかもしれない。
宗谷英規?
一緒に行動をとる理由がないので、放置。
逆に、行動を共にしない理由ならいくつかあるけど。
一緒に行動すると地球に戻される可能性大で、地球に戻ったら死に至るかもしれないとか。
この人自身が苦手だとか……
当面の目標は、この国の知識を吸収し、1人でも生活できる環境に自分を持っていく事。
何しろ、王宮では私は何もできない、ただ飯食らいのお荷物だ。
切り捨てられるのも早かろう。
そうなる前に、何とかすべきだ。
では何ができるのか?
知識の吸収と職探し。
この2点に尽きるだろう。
まぁ、探せばもっと色々出てくると思うが。
「解りました。アークオーエン様、説明ありがとうございます」
当面の方向性が決まった事で、安堵の溜息をつく。
「……。いえ、お役にたてて何よりです」
ちょっと、アークオーエンさんの雰囲気がしょんぼりしているのは気のせいか?
逆に宗谷英規の表情が、元に戻っている。
「では、そろそろ私はこれで」
そう言って、アークオーエンさんが立ちあがる。
なので、私も立ち上がった。
「あの、一つルイにお願いがあります」
凄ーく色っぽい顔でこちらを見るものだから、一歩半ほど後ず去る。
正確には横にだけど。
「な、なんでしょう?」
声が変になっていなかった事を祈る。
「私をファインと呼んではくださらないでしょうか?」
気付いた時には私の目の前に立ち、覗き込むようにこちらを見ていた。
ひぃっ
キースに引き続きアークオーエンさんの様子が微妙です。
これからの彼の動向が気になるところです。
では、ここまで読んでくださった皆様に感謝を込めて。