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自称現実主義者の異世界トリップ  作者: GUOREN
現実主義者(自称)が異世界トリップ?
14/228

14.

ナリアッテさんが去った後、隊長たちに連れられて藍の間に向かった。

てっきり隣の部屋かと思っていたが、そうではなくさらに奥に向かって進んで行く。

奥へ奥へと進むにつれ、絨毯やら壁やらが豪華になって行く。

それにつれ、自分の今の恰好がどうにもこうにもそぐわない。

スーツに安物のバッグ。

私の存在だけが、異物としてそこにあるようだ。

2分ほど進んだだろうか、隊長が立ち止まる。

どうやらここが目的地らしい。

キースが扉をノックする。

「レイ=タダノ=オカシズキー=ド=ジャポン様をお連れいたしました」

様付きで名前を呼ばれてしまった。

今までキースは、"あれ"とか"それ"とかしか言った事なかったのに、様付き。

うーん、違和感。

「お入りください」

この声は、アークオーエンさんの声だね。

キースが扉を開く。

中に入ったら、扉が閉められた。

ふと、振り返るとあの2人がいない。

あれ?

少し戸惑っていると、アークオーエンさんが「心配せずとも外で待っていますよ」と教えてくれた。

いや、心配ではなく疑問なんだけど。

とりあえず、頭を切り替える。

「お待たせして、申しわけありません」

と言って、アークオーエンさんに頭を下げた。

「いえ、それほど待ってはいません。お気になさらずに」

相変わらずの丁寧さだ。

そして、ちらりとこの部屋を観察する。

さすが、藍の間と呼ばれるだけあって、ここの調度関係はブルーが基調となっている。

ロイヤルブルーの絨毯に、コバルトブルーを多く使った絵、マイセンを思わせる陶器の飾り、中央にはふかふかのソファ。

もちろん、そのソファも青。

この部屋は晴れた日に見るのが一番美しいのだろうと、思った。

そして、窓際に立っている上から下まで黒い縦長の物体……

黒??

「ジャポンさん、こちらへ」

アークオーエンさんが、私をソファの方へと誘導する。

私は、それに従い腰をかける。

黒い物体……人が動きその人も向かい側に着席する。

私はその人に釘付けになっていた。

「ジャポンさん、ご紹介します。彼はエィキ=ソヤです」

微妙に発音が違うが、もしかして。

宗谷英規(ソウヤエイキ)だ」

ひ~、やっぱり。


宗谷英規。

SOYA Air.inc、執行役員責任者。

COOとCIOを兼任する切れ者。

次の代表取締役をとの声も高く、一目おかれる存在。

若い事が難の34歳。

1年前にアメリカの経済紙(TIME)の何かの特集で、宗谷英規の写真が載っていた。

それを見た女の子がイケメンと騒いでいた。

が、現在うちの社で騒ぐ奴はいない。

我が社が、SOYAの機嫌を損ねたからだ。

ちょっとしたトラブルから発展した亀裂。

その修復の為、SOYAに謝罪に行ったのだが、あえなく撃沈。

この謝罪騒動に私は駆り出された。

この件に関わっていなかったのに。

謎だ。

SOYA本社に着くと、この男が待ち受けていた。

今回の件で、宗谷英規が出てきた事で、皆覚悟した。

修復は不可能だと。

取り敢えず、これ以上傷口が広がらないように私たちはひたすら謝り続けた。

あの時の絶対零度の眼差しは、なかなか迫力があったと思う。

強者で知られた部長が、蒼白になった程だ。

やるなぁ。

この日の事は、我が社の汚点として、語られている。

いや、声に出す事もタブーか。


「で、こちらが、レイ=タダノ=オカシズキー=ド=ジャポン様です」

こちらの内心を知らず、にこやかに紹介するアークオーエンさん。

ひー。

相手の顔を見るのが怖い。

顔を覚えられている事が?

いやいや!

数日で忘れられる自分の顔の事よりも、こっちで名乗った名前!

こっちの方が大問題。

まさか同郷の人間も来ているとは。

明らかな偽名、しかもジャポン。

あーもっとましな名前にすれば~。

ソローっと顔を見る。

あちゃー、やっぱり変な顔をしてるよ。

取り敢えず覚悟を決めて名乗る。

はじめまして(・・・・・・)。宗谷さん。多田琉生(タダルイ)と申します」

まるで初対面です、というようににこやかに自己紹介をし、ポケットに入れていた名刺入れから名刺を差し出した。

もちろん、社名入りの。

ああ、胃がキュッとなるなぁ。

地球に帰ったら、CTと胃カメラを見てもらわないと。

て、帰れるのか?

いや帰らないと色々困った事になるんだけどね?

「ああ」

そういって宗谷英規は名刺を受け取った後、自分の名刺を渡してきた。

「あ、どうもありがとうございます」

私はその名刺を名刺入れの上に置き、アークオーエンさんに向き直った。

宗谷英規はというと、じーっと何か物言いたげにこちらを見ていた。

解ってますよ名前の事でしょ?

取り敢えず、奴の反応は無視だ無視。


「あー、アークオーエン様。実はお話ししておきたい事があります」

居た堪れないので、事実を話す事にした。

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