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42話


 藤は避けるどころか、剣を横に構えた。

 迎え撃つ気だ。


 「っ、無茶だ」


 双樹は思わず飛び出した。

 だが第七機が到着する前に、セルファは第三機の目の前まで迫る。

 藤はふっ、と一つ息を詰めた。


 『切れ』


 大剣は、敵の口元から尾までを真っ二つに切り落とした。

 塊は花棺を通り越して、弧を描いたまま水中に落ちていく。


 「……」


 双樹はその光景に目を見張った。

 洗練された身のこなしはとても美しく、そして彼の経験値を物語っていた。

 悠然と空に立つ藍の花棺と目が合うと、身が震えずにはいられない。


 「っ冬夜さすが……」


 双樹は気のまま三機に近づいた。

 藤はそれに気づき、慌てて声を上げる。


 『双樹離れて!!』

 「え……?」


 咄嗟に藤は第七機の腕を掴んで遠くへ引く。


 『さっきのはその場しのぎで、奴もすぐに復活するはずだ!』


 引っ張られながら後方を向いた双樹はあっと声を漏らした。


 『各機、左右へ展開!』

 『……!』

 「っ左……!」


 朝桐の指示に、二体は弾かれるように横へ旋回。

 その間を鋭い水の槍が通り過ぎた。


 『油断せずそのまま距離をとって、作戦開始位置まで後退』

 「はい」


 両機は朝桐の指示に沿って軌道を戻し、セルファの様子を伺いながらも仮拠点へ降り立った。

 双樹はほっと息をつく。


 『一旦立て直しだね』


 だが、双樹はすぐに背筋が伸びた。

 ここから見えるセルファは明らかに興奮状態に陥っている。


 『やはり水中に身を隠されるのがネックだな。負けそうになる度逃げられれば埒が明かない』


 ならばと双樹は聞いてみた。


 「花棺は水中じゃ戦えないんですか?」


 それに藤が唸った。


 『できないことはないんだよ。ただ……』

 『その選択肢が浮かぶのは当然だ。しかし実行しない理由が二点ある』


 今度は朝桐が双樹のために説明を始めた。


 『一つは、水中となると敵より花棺の動きが鈍くなり、負ける可能性が高いこと。二つ目は、花棺にも呼吸器官が搭載されているが、まだ性能が未完成で長くは保たないこと』

 『以前の白木島での一戦を受けて薊さんが水の中でも戦えるようにしてくれたんだけど何せ急だったから。多分、数分しか呼吸器官を使えないんじゃないかな?』


 藤の補足まで聞いて双樹は納得する。


 「でも、それじゃあどうやって敵を討つんですか?」


 数秒の沈黙の後、朝桐が答えた。


 『……たとえ二機がそれぞれ核の対角線上に構えたとしても、攻撃範囲は広がるだけだろう。核も瞬時に別の場所へ移動するはずだ。ならば、最も動きやすくするには二機が同じ位置にある方が有利かもしれない』

 『じゃあ俺が攻撃、双樹が守備だね』

 『ああ、私もそう考えていた』


 双樹は足早な二人の会話を嚙み砕くように整理してみる。


 「俺はなるべく冬夜と共に行動して、第三機が核を撃つ隙を狙えるように守ればいいんですよね」

 『そうだ。ただし、無理はし過ぎるな。百パーセント防ぎ切ろうとは思わなくていい』

 「はい。分かりました」


 羽を休めていた第三機は再び動き出した。

 藤が司令室に伝える。


 『花棺第三機、武器へエネルギー出力』

 『了解。出力を確認』

 『双樹、討つよ』


 その一言に、双樹はぐっと拳を握りしめ、第七機も空へ飛び上がった。


 「俺に出来ること、全力で」

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