不幸の手紙
何もかもが順風満帆……とはいかない。
なにを思ったのか、最近、兵部卿の馬鹿宮が僕に自分の娘を勧めてくる。
兵部卿の馬鹿宮曰く、
「一人の女人ばかりを寵愛するのは宜しくありませんぞ。おお、そうだ。丁度、我が家には源氏の君と年回りがよい姫がいるのです。左大臣家の姫にも劣らない器量よしなのです。そろそろ妻を増やしては如何ですか。親の目から見ても大層美しく心優しい姫なのできっとお気に召すでしょう」
ときた。
ふざけてやがる。
おふざけは続き、兵部卿の馬鹿宮の娘から恋文が届いた。
この時代、普通、男の方から恋文を渡してから恋愛関係に発展するもんだとばかり思っていたけど、そうでもないく女性の方が積極的な部分があった(意外過ぎる)。
それはいい。
問題は、何で『父親代筆の恋文』なんだよ!
いらね!
これは恋文というよりも不幸の手紙だ!
不幸な手紙と一緒に馬鹿宮の邸宅を生ゴミ処理場にしてやった。四の君と違って僕には呪術の才能は無かったので(残念だが)物理で馬鹿宮をやり込めないといけない。おかしいぞ?僕は主人公のはずなのに。ヒーローと呼べる存在なのにチート能力がない。って言うか主人公クラス(明石の夫婦、四の君)が周囲にいるせいかな?僕ってモブになってない?気のせい?
まあ、邸宅が生ゴミ屋敷になったせいでカラスの被害が半端ないみたい。
そのせいかどうかは分からないけど、馬鹿宮の長女は鬱になったと聞いた(ざまぁみろ)。
カラスの溜まり場になり、虫が湧く邸宅を見た都人が慄いたのは言うまでもない。現代でも怖いしキモいからよく分かるよ。
「兵部卿の宮様は呪われている……この分では藤壺の女御様も同じように呪われているのではあるまいか?」
噂さって怖いね。
あっという間に都中に広まった。
そのせいで藤壺の女御は寝込んだ。
馬鹿で阿保な兄を持つと妹は苦労するな。




