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友情割引で世界が確変される物語  作者: 央艿 尚
序章:そして友達割引は締結された
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前回までのあらすじ;玉蘭の能力について剣竜が色々と講釈を垂れた

 身を乗り出して遠目に画面を覗き込むと、手配書が表示されていた。


…手配書?!?!!


 連と猫火は慌ててタブレットを手に取り、じっくりと見る。

 ご丁寧に、猫火・連・玉蘭・剣竜…と並んで顔写真が並んでおり、写真の下に“生死問わず”と、懸賞金額が表示されている。

「な???!なななな………」

「な……???!」


「「なんだこれ???!?!!??!!」」


 絶叫がワンフロアいっぱいに響いた。




 「こう来たか…」

 剣竜が手配書を眺め、タブレットをヒラヒラと振って見せる。

「1000万…700万…100万…と来て、1億だって!!!」

 左から賞金額を読んで爆笑している剣竜の目の前で、猫火と連は蒼白を通り越して、まだらの土気色の顔色になっている。

 状況がよく判っていないとはいえ、この場の雰囲気は良くないと、玉蘭はキャップが別室へ連れ出している。


 「しっかし、賞金首と来たか~…

思っていたより、MZA(やつら)の手は早かった上に、ここまで浸透しているか。」

 一通り笑い終えた剣竜が、タブレットに表示された手配書

qを眺めながら少し真顔になって言う。

 笑い飛ばす余裕すら無かった連だが、剣竜の爆笑で少しだけ落ち着いたのか、顔色の無いままにブツブツと呟いている。

「……だとしても…いや……だから………

けれど…………」


 しばらく口ので呟き廻し、連はぱっと顔を上げて言う。

「よし!!!皆で逃げよう!」


「なんで?」


 即答した剣竜に連の笑顔が凍りつく。

「ぇ…?」

「言っておくが、別に俺は賞金を掛けられるのは、初めてでは無いから驚くほどの事でも無いし、直ぐに尻尾巻いて逃げる理由も無いからな?」

「それでも、玉蘭の持っている能力が有用だと思ったから、今まで守っていてくれて居たんだろ??!」

「そうだ。そう思っていた。

……視覚感知のパスを繋いだと言っただろう?」

「身近な者には、“暴露”の能力が共有できるって……。」

「お前ら、身近な者には共有出来ても、俺には共有出来ない。」

 無表情に剣竜は続ける。

「パスを繋いでの能力の共有が出来ない。

 無意識下で能力が発動されているという事は、こちら側での精密な操作(コントロール)も難儀なんだよ。

 それが判った以上、玉蘭の能力は俺にとって、稀有ではあるが使い勝手が悪い道具(アイテム)と一緒なんだよ。」


 さらりと用無しだと宣言され、連の頭に血がのぼる。


 「じゃあ!!なんでオレを助けたんだよ??!」

「何度も言わせるな。

 玉蘭の能力が俺にとって有用だと思ったから、兄であるお前を生かしておけば便利だと思ったからだ。

 それ以上、それ以下でも無い。」

 にべもなく言い放つ剣竜に、掴みかかりそうになる連を猫火が咄嗟に押さえる。

「連くん!!!」

「要らないと思ったらポイ捨てかよ!!よくもそんな事が出来るな!」

「よくもも何も、元々から俺はお前ら家族の問題とは無関係の第三者だぞ?

 たまたま、事の成り行きでお前らが俺と一緒にいるだけだ。

 どこで見切りを付けて別れようと、俺の自由だ。」


 言い返す言葉を無くし、グッとおし黙る連を猫火がなだめ諭す。

 「剣竜さんの仰る通りです。

元々、もっと早くお別れするつもりで話が進んでいました。

 今までお世話になったのは、剣竜さんのご好意に他なりません。」

 それはそうかも知れない…だが……

 「玉蘭は…」

 妹の顔を思い浮かべ、連は拳を握る。

手配書には“生死問わず”とあった。MZAの連中に狙われたら?賞金稼ぎに狙われたら?賞金目当てに誰が何が襲って来るかわからない。

 自分や猫火に守れるのか?……握っていた手を開き、自分の掌をじっと見る。


 込み上がる感情をぐっと飲み込み、連は剣竜に向き直る。

「玉蘭の護衛を頼みたい。

ハンターなんだろ?いくらぐらい掛かるんだ?」

「まぁ見知った誼だ。100万ぐらいに負けとく、日額な。」

 日額、100万??!!?

予想以上の高額に、つい口から文句が飛び出そうになるが、グッと堪える。


「わかりました。契約をお願いします。

ただし、精霊界へ送り届けて欲しい。それまでの道中を頼みたい。」

 猫火が即座に申し出る。

「いいだろう。」

 剣竜がタブレット端末に指を滑らせると、魔術陣のかかった証文が表示された。猫火に差し出すと、目を通しサインをした。

 猫火のサインに魔術式を重ねながら、剣竜は言う。

「玉蘭の護衛は引き受けると言ったが、お前らの事は含まれてないからな。せいぜい後ろから刺されないように、自分の身は守れよ?」

「……元からそのつもりだよ。」

 ムスッと連が答える。

 元よりそのつもりだったが、上から目線の剣竜の物言いに苛立つ。

「どーだか。

お前、考えの甘いボンボンっぽいからな。あわよくば玉蘭のついでに安全確保しようとか思ってても、俺は依頼はこなすが、お前に矢が飛んで来ても守らないからな。」

「そんな事、考えてねーよ!!!

オレだって、魔術だって使えるし、武闘の心得だってあるんだ! 自分の身ぐらい守れる!!」

「使える事と実戦は違げーよ。

そう言うのはな、戦ってから言え。ぼんくら。」

 そこまで言われ、堪えていたものが、怒りとなって連の口から噴き出す。


「……ーっ!! お前、絶対ッ……友達居ないだろ!!!!!」

「居るように見えるか?

生憎だが、体良く“友達割引”とか言いだされたら、素気無く出来ないからな。

最初(はなっ)から作ろうとも思わない。」


 (……ん?)

 今、よくわからない単語が剣竜の口から出た気がする。

精一杯の嫌味のつもりだったが、微妙に頭が冷えた連は、恐るおそる尋ねる。


「………?!友達割引…あんの?」

「あるよ。」

「!??……今から友達になっても、その割引使えんの?」

「いいよ。」



………………え?????



 勢いついでに言ったとは言え、連は我が耳を疑う。

ついでに、自分でも何言ってるんだかわからない。

 横で猫火も、何が何だか理解の追いつかない顔をしている。


 「剣竜・ディ・セイラムだ。」

 連と猫火の混乱を全く気にすることなく、至って真顔で、改めて宜しくと言わんばかりに、剣竜が掌を差し出す。

「ぁ?!ぇ……。連・キルナです…。よ、よろしく???」

 つい、つられて連も手を差し出し、握手した。


 握手をしながら、剣竜は猫火に向かって尋ねる。

「友情割引ってどんな割引だっけ?」

「は??!…え、ええと……通信料金が無料になるプランとか見た事がありますが……。」

 突然、話を振られてしどろもどろになりながら、猫火が何故か通信機器の料金の話をしだす。

 混乱から抜け出せていない様だ。



「………ふぅん。じゃ、いいよ無料(タダ)で。」



 剣竜が、表情を変えず言い放った。


ようやく序章終了です。

次回から、本筋のお話が始まります。

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