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花が満開の桜並木の歩道を、私──桜花 朝芽は新品の『浅木夢見市立魔法工学高等学校』の制服に身を包み意気揚々と歩く。
今日は入学式。
ぶっちゃけ、魔法工学にはまったく興味はないけど、
「──ふふ、やっぱり『浅木夢見魔工』の制服は可愛くて、私にぴったり♪」
制服目当てで、私は進学した。ショーウインドウのガラスに映る自身の姿にニンマリしながら、軽くポーズ。鏡と化したショーウインドウには、私以外にも“足を停めて、私を見ている同じく浅木夢見魔工の新入生”の姿が映る。
──ふふん♪ やっぱり、他の人も“この制服にぴったり”な私の姿に見蕩れてる♪
気分が良くなった私は自慢の長く伸ばした太陽の光に煌めく茶色の髪を翻し、颯爽と学校に向けて歩き出す。
学校に到着後、掲示板に貼り出されていたクラス割りを確認して、割り振られたクラスへ。
「──あら? 朝芽さんじゃない。高校まで同じクラスなんて、これってきっと運命に違いありませんわ!」
教室に入ると、私にいきなり話し掛けてきたのは、小学校からの友人の『田山 彩』。彼女の家は、“あちらこちらに魔法使いを派遣する”派遣会社を商っており、彩は正真正銘の社長令嬢だ。が、彼女のお嬢さまキャラははたして意図したものか素なのか、いまだに判断がつかない。
「あはは、そうだね。これからもヨロシクね。彩。」
テキトーに相づちを打って、私は空いている席に着く。それから、彩や前後左右の隣の席に座った初顔合わせのクラスメイトたちと、他愛ない話で暇をつぶした。
その後、チャイムとともに私たちのクラスの担任がやってきて、クラス担任の挨拶と入学式の注意事項などの説明を受けた。そして、私は入学式が行われる講堂への移動が始まったタイミングで、
「すみません、お手洗いに行ってきます」
担任の鹿島先生にそう告げる。
「もう、朝芽さん、そのような事は前もって済ませておくべきですわよ。と、いつも口を酸っぱく言ってきましたのに……」
──あんたは私のママか! などと、心の内でツッコミを入れながらも、彩の言葉はスルー。
そして、先生からの返事を待つことなく、私はクラスの列を離れる。
そうして、お手洗いに行くフリをした私は、入学式の式典をサボタージュ。
すっかり無人になった一年生の教室が並ぶ校舎本館の四階の廊下を独り占めし、私は一人で廊下の窓から正門側の校庭を見渡す。
どうやら、学校敷地内の講堂で入学式が行われているこの時間は、二年生・三年生の先輩たちは教室のテレビで入学式を観ているようだ。なぜ、分かるのかって? それは、廊下で屯する前に教室のベランダから、階下の様子を探っていたのだ。
開いた窓から吹き込む春風に、私は自分の髪を遊ばせながら、
「……キモチイイ……、……風……」
と、花盛りの春を感じつつ、なんとなしに今日からの学び舎たる『浅木夢見市立魔法工学高等学校』について、入学パンフに書いてあったようななかったような、うろ覚えの概要だったかもしれないナニかを思い返す。
──『魔法』。現在より約百五十年前に、科学的に構築された現代科学の最高技術にして究極の技能。魔法ができるより更に遡るとこと五十年前──現在からは約二百年前──に発見された“新エネルギー”──通称『魔力』を力の源とし、幾何学的紋様や物の配置といった『風水』にも通じる要素でもって空気中の魔力を集約して力場を作り、人の精神力を増幅するデバイスをトリガーとして魔法を発動する。
これを人類は『魔法工学』として、新たに一つの学問を確立したのだった。魔法工学の誕生は、新エネルギーの『魔力』の発見よりも“トンデモないパラダイムシフトを起こすだろう”と、予測された。が、蓋を開けみると、魔法が扱えるのは“大半の日本人”か“日本人を除いた残りの世界の総人口の一%にも満たない人たち”だけという、“遺伝子依存”のシステムだったのだ。
そして、魔法の誕生は核の傘と高度な自律型兵器によって築かれた世界の軍事バランスを根底から覆した──……あ、ここはどうでもいいからカットね。カット。
──んで、その魔法工学を一から学べるのが、ココ『浅木夢見魔工』をはじめとした“魔法工学科がある高校”というワケ。
思考が一区切り着いたところで、視線を講堂がある方角に向けると、入学式が終わったようで、新入生がぞろぞろと渡り廊下を歩いて校舎本館へと向かってきていた。私は再びお手洗いに身を潜め、同級生で廊下が賑わいだした頃合いを見計らって、何食わぬ顔でクラスメイトたちの中へ合流。
「朝芽さんったら、長いお花摘みでしたのね……」
彩の呆れ返った言葉を聞きながら、私は素知らぬ顔でそのまま教室へと入っていった。




