巡り廻り巡り合わせ
中立都市…星都
月明かりと星の輝きがどこよりも美しい街。
ここは夜になると人々が動くという昼夜逆転が当然の街。
街の中心には巨大な碧色の巨石がそびえ立っており、そこから放たれる光が夜街を朝日のように照らしている
トウキ「うわあ…夜だっていうのに眩しい…
眠いのになんか朝みたいに明るいし…なんだか不思議な街だなぁ」
シン「そうだね…ってかあんなに寝てたのにまだ眠いのかい?」
フィリア「ここ、夜なのにお日さまみたいな匂いがする…ここ、好き!」
シン「ハハハ!気に入って貰えてよかったよ!この星都は大昔からあって、
大戦中は干渉せず・戦わずを終戦まで貫いた中立国家都市としても有名なんだ。
まぁ大戦が終わった今じゃ、フンゴさんが言ってたみたいに星空が近くに感じられるロマンチックで非日常を味わえる不思議な観光名所として広く認知されてる見たいだけどね…!」
フィリア「お星さま、いっぱい!おっきい!」
シン「さ、ひとまず二人共、新しい服を調達しよう!あとは腹ごしらえだ!」
そう言って服屋に入る。シンはフィリアと共に彼女の服を選びに行くが、
トウキは一足先に会計を済ませ、新しい服に袖を通した。店の向かいにある噴水で待っていると杖を持った一人の老人が話しかけてきた
老人「おや?おや?兄ちゃん、旅人かい?」
トウキ「はい。ついさっきここに着きまして。おじいさんも旅を?」
老人「いやいや。儂ゃこの街のモンじゃよ。
まぁこの街の管理人さんみたいなものじゃな。もし、お暇ならこの老いぼれの話し相手になってやくれないかい?」
トウキ「は、はぁ…仲間もまだ戻ってきませんし…大丈夫ですよ」
老人「そうかい。そうかい。連れがいるのかい。女の子達の服選びは結構時間がかかるからねぇ。
きっといい暇潰しになると思うぞい。」
トウキ「…?!なぜ、連れが女だと思うのです…?」
老人「そりゃ…年寄りの勘ってヤツじゃろうなぁ」
トウキ「(この只者じゃない感じ…。一体なんだ?この人は一体…)」
心の中でそんな疑惑を持ちながら無意識のうちに斬鮫を握ろうとする
老人「そう構えんでもよい。よい。それにしても人喰いの剣…。
相も変わらず不気味な形をしておるのぅ…まるで海を泳ぐサメのようじゃなぁ」
トウキ「?!」
斬鮫を見透かされたトウキは恐怖を覚え、後ろに跳んで距離をとる
老人「ふむ。ふむ。反応する動きは早いの。さすがは…
『鬼の子』じゃな」
一瞬で距離を詰められ、放たれたその言葉にトウキは言葉に出来ぬ恐怖を覚えた。
そして反射的に斬鮫で斬りかかってしまう
老人「ほぁ?!街中でそりゃ…危ないぞぃッ!」
不意にとはいえ力いっぱい斬鮫を振りかかってしまったが老人は斬鮫を手に持った杖でいなし、トウキの背後に回るとポンと背中を押して噴水に落としてしまう
トウキ「ぷはっ…あの身のこなし、この間の戦いで見たシンの動きと似てる…。
なんなんだアンタは一体…?!」
老人「ただのこの街の管理人…ウラヌスじゃよ」
シン「トウキ!なんだ今の物音は…って師匠?!ウラヌスのじっちゃん?!」
物音に誘われるように店から出てきたシンはその老人…ウラヌスに駆け寄る
トウキ「シン!危ない!その人は…」
ウラヌス「シン…?え?!」
トウキ「え?!」
シン「お久しぶりです!師匠!」
トウキ「え!?」
ウラヌスの手を握りブンブン振るシンは今まで見た事がないくらいの笑顔で喜んでいた
ウラヌス「ふむ。ふむ。…シンという知り合いはおらんハズじゃ。しかしこの儂を師匠と呼ぶのは2人しかおらんし、じっちゃんと呼んだのはただ1人だけだったよのぉ…もしやお主…アルマリアの…」
シン「…ええ。今は訳あってシンと名乗っております。」
ウラヌス「そうかい。そうかい…あの子がねぇ…。しかしまぁ身なりもまるで男…いやぁ驚く驚く。この老いぼれは息をするのをしばらく忘れてしまったぞ…。久々に会ったというのに…いやはや…心臓に良くない良くない…」
シン「すみません…。驚かせるつもりはなかったんですが…。それよりもわたしの仲間がとんだご無礼を…。」
トウキの濡れた頭を掴み無理やり頭を下げさせる
ウラヌス「よい。よい。焚き付けたのはこちらよ。いやはや…その旅人の待ち人がよもや男の身なりをした儂の弟子とはなぁ」
トウキ「シン!ちょっ…頭…痛いってば…離せ!離…ぐあッ!?」
頚椎に手刀を放たれたトウキは沈黙し倒れた
ウラヌス「容赦がないのぉ…」
シン「いえ。いえ。彼、体は丈夫なので平気ですよ。それにこのままじゃまともに話も聞かないと思うので…。というより師匠、彼…トウキに何を言ったんですか?かなり取り乱した様子でしたが…?」
ウラヌス「いやぁちょいと揶揄っただけよ」
シン「はぁ…。相変わらずいい性格をしてらっしゃる」
ウラヌス「フォッフォッフォ…さてシン…だったかの。ずぶ濡れの彼のことも含め、お茶でも飲みながら話でもしようかの。隠れてるオオカミ亜人の子も一緒にどうじゃい?」
シン「ええ。ここじゃ人の目もありますし…。フィリア、大丈夫だからこっちへおいで」
入り口で震えていたフィリアを手招きする
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トウキは目を覚ますと数々の彫刻が並ぶ部屋の中にいた。
首には鈍い痛みが続いているが、心地いい光が差し込んでいる。そして買ってすぐにずぶ濡れになった服が干されている。
どうやら長時間眠っていたのであろう。既にほとんど乾いていた。
着替えて外に出るとフィリアが大きい犬と小さな犬と共に芝の上を走り回って遊んでいる
フィリア「あ!お兄ちゃん!おきた!シンお姉ちゃん!トウキお兄ちゃん起きたよ!」
シン「やあ!やあ!トウキ!さっきは手荒な真似をしてすまなかった…。改めて紹介するよ。こちらは俺の師匠で星の声を聴くことが出来る星都の守護者…ウラヌスさんだ!」
ウラヌス「守護者なんて大袈裟な…儂ゃただの街の管理人さんじゃよ」
トウキ「そんなのどっちでもいい!あなたには聞きたいことが山ほどあるんだ!」
トウキはシンの言葉を聞き流しウラヌスへ詰め寄る
ウラヌス「ぬふぅ…よい。よい。ではこうしよう。これから儂はお主に課題を2つ出す。その両方をクリアできたら答えてやるわい」
トウキ「何だってんだ!さっきから一方的に!」
シン「トウキ、落ち着いてくれ!確かに人の話を聞かないのはじっちゃんの悪い癖だ。
だが斬鮫のことをじっちゃんに相談したら修行をつけてくれることになったんだ!
質問はその後でも遅くはないんじゃないかな?」
トウキ「…わかったよ。んで?その課題っていうのは一体なんだい?早く終わらせようよ」
機嫌が悪いようにトウキはため息をつきながら問いかける
ウラヌス「まず1つは知識。つまりお勉強じゃ。もう1つがお主の持つ剣との調和。これをマスターするのじゃ。」
トウキ「は…はぁ…。よかった。意外と普通な課題だった…。僕はてっきり彫刻でも掘らされるのかと思ったよ…」
ウラヌス「ほほぉ…なるほど。なるほど。さて、では…早速準備をしよう。オオカミの娘さんや…えぇーっと…フィリアちゃん!遊びはおしまいじゃ。こっちへおいで」
指をパチンと鳴らすとフィリアと遊んでいた2匹の犬達は星屑が散るように跡形もなく消え去った
トウキ「い、犬が…消えた?!」
シン「言ったろ?先生は星の声を聴くことができるって。これがじっちゃんの持つ杖の力…星詠だよ!」
ウラヌス「この部屋も一旦しまうぞい」
再び指を鳴らすとさっきまでトウキが眠っていた彫刻が並ぶ部屋も一瞬のうちに消え去る。そして…
シン「あ…」
トウキ「ん?」
フィリア「ウラヌスのおじいちゃん、あたま、まぶしい!」
なぜかウラヌスの頭部の髪も一瞬にして消え去った…髪の毛1本も残らない頭部は光り輝き、周りを一層眩しくする
ウラヌス「ありゃ。ありゃ…こりゃ失敬。つい勢いでこっちまで消してしもうたわい…フォッフォッフォ…」
ウラヌスは咳払いをし、改めて指を鳴らすと髪は一瞬で元に戻る
トウキ「手品か何か?」
シン「…いや、じっちゃんは…その…」
ウラヌス「…ゴホン!儂の星詠は空に浮かぶ星を結んだ姿…つまり星座の力を借りることができるんじゃよ。さっきの2匹は、こいぬ座とおおかみ座。同じオオカミ型の亜人種であるフィリアちゃんの遊び相手になってもらっておっての。あ、ちなみにさっきまでいた部屋はちょうこく座とちょうこくぐ座に借りた儂の趣味で使うアトリエってやつじゃ。」
トウキ「んで、頭にはヅラ座…ですか?」
ウラヌス「…かみのけ座じゃ。ほれ頭、こっちに向けぃ」
トウキ「髪ならあげませんよ」
ウラヌス「たわけが。んなボサボサ髪なんぞいらんわい。ただの課題の準備じゃ!」
杖の先にある球体でトウキの頭を叩いたのち、トウキの額を球体に触れさせる
ウラヌス「彼の心と体を分けたまえ…限界突破・星詠…ふたご座!双子」
トウキ「うわ!」
閃光に包まれるとトウキは2人に分裂した
トウキA「なんだこりゃ!」
トウキB「僕が2人に?!」
ウラヌス「せっかくなら効率よくやろうではないか。さてさて、もう一度…。星詠…ふたご座!双子!」
続いてウラヌスも分身する
ウラヌスA「この分身は」
ウラヌスB「意識も!得た経験も!」
ウラヌスAとB「「共有される!のじゃ。」」
シン「だから2つのことを一気にやってしまおうってわけさ!師匠、修行の間、星の文書庫をお借りしても良いでしょうか?!」
ウラヌスB「んー、よい。よい。じゃがジェミニは双子の星座故、一度に2度しか使えん。更なる分身を作って効率化する事はできんが、それでもよいか?」
シン「もちろんです。龍脈の件も含め調べたいことがあるので…助かります。」
ウラヌスA「うむ。では、では、お勉強組はこちらへ」
フィリア「はーい!」
トウキA「え?!フィリアもやるの?!」
フィリア「うん!ウラヌスのおじいちゃんにおべんきょう、おしえてもらうの!」
ウラヌスA「奴隷の証でもある彼女の右手についている枷は、いつでも外すことできる。じゃが、生きる上で学びは重要じゃ。仮に別の場所で生きることになったとしても、強かに生きるために知識は不可欠じゃ。」
フィリア「よくわかんないけどフィリア、がんばる!」
トウキA「(…そうだ。フィリアはこの間まで獣車を引くために無理矢理連れてこられた奴隷だったんだ…。なのに今は前向きに頑張ろうと…。それに比べて僕は…。なにを不貞腐れていたんだ…)」
ウラヌスB「…おや、おや、どうやら覚悟ができたようじゃな」
トウキA「ええ。よろしくお願いします。ウラヌス先生」
ウラヌスB「よい。よい。では…始めるとしようかの」
トウキの課題クリアに付き合う形でそれぞれは目的の場所へ向かうのであった
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