盾士に……
「…………」
(……ケイゴって……体力ないわね……)
「……だぁはぁ……はぁ……はぁ……ゴクゴク……」
盾師匠が見下ろしているのは、噴水を50周して、地面にダランと座って、水をがぶ飲みするケイゴだった。
「……お疲れ様……あなた……普段から運動してないでしょ……」
「……はぁ……はぁ……そ、そうでぇすねぇ……全くしてないです……」
ケイゴは、汗だくの赤く火照った顔を盾師匠に向ける。
「……でしょうね……はぁ……まだやろうかと思ったけど……10分休憩したら掃除を始めるわよ?」
「……は、はい!」
ケイゴは、辛そうに返事をした。
「……先に戻ってるわ……」
「……はい!」
盾師匠は、浮遊して屋敷の扉を開け入った。
「……私も……お爺様のような……
……最強の盾士になろうと指導してもらったっけ……」
盾師匠は、自分の盾を見た。
「……お爺様! またですか!?」
盾師匠……盾師匠の大人になる前の可愛らしい姿……盾師匠ちゃんが目の前のおじいちゃんに怒る。
「……ま、孫……なぜここにおるんじゃ……」
その対面にいるおじいちゃんは、慌てた様子で言う。
「……いつもいつも……いい加減やめて下さい!……
……こう言うところ来るの!」
盾師匠ちゃんは、おじいちゃんの横にいる人を指差す。
「……あら……最強の盾士様に、こんな可愛らしいお孫さんがいたのですね♪」
「……最強の盾士様、ダメですよ?子供を連れてきちゃ〜♪
……ふふ♪」
お爺様の両サイドには、綺麗な女性が座っていた……女性たちとお話しの出来る素晴らしい場所……
……お金を引き換えに……
「……そうじゃろ♪ そうじゃろ♪ ワシの孫はとても可愛いじゃ♪」
お爺様は、顔のシワを深め、嬉しそうに二人の女性に言う。
「……話を聞いて下さい! お爺様!!」
ドン!
盾師匠ちゃんは、机を両手で叩きお爺様を睨む。
「………孫よ……聞くのだ……」
お爺様は、急にいつもの指導時の顔を作る。
「……は、はい!」
盾師匠ちゃんは、メモと書くものを取り出し身構えた。
「……盾士は、戦場ではどうだと教えたんじゃ?」
お爺様は、隣の女性にウインクをしてからそう言った。
「……戦場では、守る前に前進しろと……前に出れば攻撃が後ろに行く範囲が減ると……」
「……そうじゃ……盾士とは、前進する事で守る職業じゃ……ワシは今もなお……前に進み続けておる……こうやって酒をな?」
お爺様は、真剣な表情で、隣の女性の肩に手を回そうとしたが……
ペシッ!
ニコニコした女性がその手を払う。
「……当店では、お触り禁止ですよ?」
黒服の男が、その席の近くに寄った。
「…………」
「……お爺様……誤魔化そうとしないでください!! ほら! 帰りますよ!」
盾師匠ちゃんは、メモをしまうと、お爺様の手を掴み店の外に出る。
「……ちょ、待つのじゃ……ワシはまだ飲みたいんじゃぁ〜!!」
お爺様は、手を店の方に伸ばしながらそう叫んだ。
「……最強の盾士なのよね……あのおじいちゃん……」
「……えぇ……そうよね……そうなんでしょ?」
ニコニコ女性は、近くに寄った黒服の男に言う。
「……あぁ……もし、あのお方とやり合うことになったとして俺は……
……手も足も出ない……正直……マジ怖かった……」
黒服の男は、眉を下げ、安堵するように言う。
「……そんなに強いの? あのおじいちゃん……」
「……あのお方は……盾士の中の盾士……
……今まで盾士は不遇職……そう言われていたのを変えた人だ……
……もちろん俺も盾士だ……マジかっこいいお方なのだ……」
黒服の男は、キメ顔で言った。
「…………」
「…………」
((……あなたがキメてどうすんのよ……))
「……孫よ……聞くのだ……」
お爺様は、盾師匠ちゃんに手を引かれながらそう言う。
「…………その手には、もう引っかかりません!」
「……賢くなったの〜孫よ♪ ダァッハッハッ♪」
お爺様は、嬉しそうに笑った。
「……全然嬉しくないです……」
盾師匠ちゃんは、ムッとした顔でお爺様を見た。
「……お爺様は……お祖母様がいるではありませんか……」
「…………そうじゃなぁ……」
お爺様は、笑顔から普通の状態に戻る。
「……お祖母様とお話しして良いですか? お爺様……」
「……いいとも……その方が、あいつも喜ぶわい……」
「…………」
「…………」
盾師匠ちゃんとお爺様は、大きな屋敷の中に入って行った。
「……お祖母様! またお爺様が夜遊びしてましたよ……いつもやめてって言っているのに……お祖母様からも言ってください!」
「…………」
「……そしてまた……孫よ……聞くのだって言って誤魔化そうとしたんです! お爺様は意地悪になってしまったんです……
……お祖母様……」
「…………」
「……ま、また……お話し……しに来ます……お祖母様がいないと……お爺様は……ダメなんです……」
盾師匠ちゃんは、涙を流す……彼女の前には……
……楽しそうに笑う女性の写真みたいなのがあった……
「……おやすみなさい……お祖母様……」
盾師匠ちゃんは、その部屋から出た。
「……孫よ……ちぃとこっち来なさい……」
「……はい? 何でしょうか……」
時刻は、夜遅く……お爺様は、椅子の隣をポンポンして呼ぶ。
「…………」
盾師匠ちゃんは、その場所に座る……ほとんど密着した状態で。
「……お前は……本当に盾士になりたいのかの?」
「……はい! お爺様みたいな最強の盾士に」
盾師匠ちゃんは、明るく言う。
「…………う〜む……しかしの……お前は女性じゃ……ほかにいっぱ「お爺様までそんなこと言うんですか!! 私は盾士になりたいんです!」……そ、そうかぁ……ワシが悪かったから……落ち着きなさい」
盾師匠ちゃんは、椅子を立ち上がり、肩で息する。お爺様も立ち上がり盾師匠ちゃんの両肩に手を優しく乗せ座らせた。
「…………」
「…………」
「……私……女性初の……最強の盾士になるって……お爺様も賛同してくださったのに……」
盾師匠ちゃんは、お爺様との距離をとった。
「……すまんのぉ……ワシが一番理解してやらなきゃいけなかったんだが……息子が、うるさく言うんじゃ……女性が盾士になるのは無理だと……ワシはそうは思わんが……お前の幸せがどうかと考えると……」
お爺様は、肩を落とし、申し訳なさそうに言う。
「……私の幸せは、私が決めます! お爺様!」
盾師匠ちゃんは、椅子から立ち上がると、お爺様の前に行き片膝をつき頭を下げた。
「……私は……最強の盾士になるのが夢……お爺様の様な盾士になりたいのです……
……どうか……私を盾士にしてください……
……お願いします」
「…………」
「…………」
盾師匠ちゃんは、頭を下げ続けた。
「……本気なんじゃな……」
「…………」
「……最強の盾士になるにはある必須スキルがあるの〜……それは何じゃ?」
「……頑丈夫です」
「……持っておるか?」
「……いいえ……ありません……」
「……なら……最強になれないか?」
「……いいえ……ありえません……だって……
……お爺様は、持ってないですから♪」
盾師匠ちゃんは、顔を上げ笑う。
「……目の前にいるワシは何じゃ?」
「……ふふ♪ 最強の盾士です!」
「……そうじゃろ♪ そうじゃろ〜♪ ワシは、頑丈夫を持っていない最強の盾士じゃ! このワシがなれたんじゃ……お前がなれないわけがない……そうじゃろ?」
お爺様は、くしゃっと笑う。
「……ありがとうございます! お爺様♪」
盾師匠ちゃんは、お爺様に抱きついた。
「ダァッハッハッ♪ ワシについてこい! 孫よ……必ず……最強の盾士にしてやるぞ♪」
「……はい!」
二人は楽しそうに、更に1時間くらい盾士についての話をしていた。
それから2年後……
「……ワシが教えられる事は全部教えた……
……頑張ってこい……孫よ……」
お爺様は、微笑みながら言った。
屋敷の扉の前に、お爺様と盾師匠の父と母もいた。
「……はい!」
盾師匠は、笑顔で答えた。
「……盾士必須 1 身だしなみはいつも正しくじゃ……今日もとても可愛いの〜♪ 昔の妻にそっくりじゃ……」
「……そうですか? ありがとうございますお爺様♪」
すると……
「……ルタ……やはり……盾士は……」
父が心配するように言う。
「……お父様……私は、最強の盾士の孫……この2年私は盾士になるために生きて来ました……わたしを案じてくださっている事は分かります……ですが! これが、この盾士になる事こそが私の幸せなのです……お父様」
盾師匠……ルタは、お父様の顔を真剣な表情で見つめる。
「……あなた……ルタちゃんは本気なのよ……私も心配だわ……盾士は……一番怪我する職業よ……でも……あなたがお爺様と特訓をしている姿を見て……送り出すことが出来るの……頑張って……ルタちゃん」
お父様の手を握り、母は、微笑みながら言った。
「……俺も……見ていた……ルタの頑張る姿を……すまなかった……頑張ってこい! いつでも帰ってきていいからな……ルダァ……
……やっばりぃ……いがないでぐれぇ……」
お父様は、最初普通だったが、泣き出してしまった。
「……お父様……お母様……お爺様……
……今までお世話になりました……行って来ます!」
ルタは、お父様の涙を拭きながら言うと、歩き出した。
「……ルダァ〜!! ルダァ〜!!」
「……あなた! ルタちゃんが困るでしょ!」
「…………」
親と最強の盾士のお爺様に見送られながらルタは、最強の盾士になるための冒険に出た。
「……最強の盾士に……」
これは……盾士ルタが最強の盾士を目指す物語……
……そして……終わりまでの物語……




