陰ながらの応援に感謝を。
感想をいただいて思いついた小話をもったいない精神であげます。
他の方々も、感想ありがとうございます!
短いです。
「副団長、それ変わった匂いのお茶ですね」
直属の部下から声をかけられ、私は胃が痛くなるような書類から顔を上げる。
確かに今ティーカップから香るのは、嗅ぎ慣れない香りかも知れない。
「異国の薬草で、センブリ……という名だそうですよ」
「へぇ、異国の薬草ですか。通りで嗅いだ事のない匂いな訳ですね~」
私が薬草に添えられた手紙を読みながら答える間も、好奇心旺盛な部下は、ティーカップをチラチラ見ている。
わかりやすい部下の姿に私はクスクスと笑い、
「飲んでみますか?」
と、声をかける。
「いいんですか!? あ、でも、貴重な物なんじゃ……」
「構いませんよ。せっかくの頂き物ですから」
本音九割、悪戯心一割で、私は部下のために新たにセンブリのお茶を入れて、ティーカップを差し出す。
「ありがとうございます! いただきます!」
礼儀正しい挨拶をしてから、ふぅふぅと冷ましたティーカップの中身を一気に飲み干す部下の姿に、一瞬私は固まる。
笑顔だった部下の表情が、徐々に苦々しげに歪んでいく。
「に…………がっ! 何ですか、これ? とんでもなく苦いです!」
相当苦かったらしく、べーと舌を出して騒いでいる部下に、私は苦笑しながら、メルディ様から頂いた焼き菓子を差し出す。
「薬草ですからね。まさか、一気にいくとは思いませんでしたよ。口直しにどうぞ、メルディ様からの差し入れだそうですよ」
「あぁ、もうそんな時期でしたか。そう言えば、団長が上機嫌ででしたね」
色々と納得した様子で、部下は美味しそうな笑顔で焼き菓子を頬張っているが、私としてはあまり笑っていられない。
「今年は十人でした」
先ほどまで見ていた報告書を思い出し、ポツリと呟く。
部下は意味がわからなかったのか、無言で首を傾げている。
「上機嫌なオーガストの笑顔を見て、気絶した貴族様の数ですよ」
心臓麻痺が出なかっただけ去年よりましですかね~、と力なく笑っていると、部下が空になった私のティーカップを慌てて持ち上げる。
「紅茶入れましょうか? 砂糖とミルクたっぷりで!」
「あ、いえ、その薬草茶の方でお願い出来ますか?」
「え、いいんですか?」
私の言葉に、部下は意外そうな表情をするが、すぐ新たなお茶を入れてくれた。
「…………これ、胃痛に効くらしいんです」
不思議そうな部下にそう伝えたら、部下は無言でお代わりを作り、飲み干していた。
『お気遣いありがとうございます』
センブリの贈り主への手紙を書きながら、私は部下が入れてくれた新たなセンブリ茶をゆっくりと飲み干した。
遠くで聞こえる、魔王がご乱心だー! という悲鳴と怒号はしばらく無視しようと思いながら。
ありがとうございます!
センブリいただいたので(笑)