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影の勇者の再冒険 ~~Re-Tale of the Brave~~  作者: ヒマジン
第98章 演習編

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第4036話 雷の試練編 ――保管庫――

 瞬の強化のため、雷の聖域へと訪れていたカイト。そんな彼らがたどり着いた雷の聖域で待ち受けていたのはカイトも見た事がないという、とある世界を模したらしい宇宙港と、再びとなる地球側の面々との合流であった。

 そうしてたどり着いた遠未来の宇宙港の一角にある低温エリアに足を踏み入れたカイト達だったが、そんな彼らを待ち受けていたのはエリア全体に広がる氷塊であった。

 というわけでひとまず凍結した低温エリアの調査を進める一同であったが、イヴよりこの異常が予備の動力炉の非常停止に引きずられる形で引き起こされた可能性が示唆。

 凍結したエリアの回復を目指して、予備の動力炉の再起動するべく行動を開始するわけだが、その最中案の定エリア一帯の凍結が動力炉の非常停止によるものだと判明。排管の中を動く生物兵器の襲撃を受けながらも、なんとか動力炉の再稼働。更に防衛兵力として用意されたドロイド達に動力炉の防衛を任せると、自分達は改めて低温エリアの調査に乗り出していた。


「はぁ……どっちもどっちだな」

『何がでありますか?』

「改造兵共も生物兵器も……いや、ある意味倫理観というか筋は通ってるか」


 見るだけで気分が悪い。カイトは実験体保管庫の中で凍結したまま死んだ改造兵達を見ながら、どこか呆れるように首を振る。


『通るようには思えないでありますが』

「自分達も他の生物も、それこそ魔物だろうと須らく改造すんだぞ。筋通ってるじゃねぇか」

『……確かに』


 自分達であろうと生物であろうと関係なく改造しているのだ。それを考えればモルモットのように人間以外の生き物を実験に使う地球の方が、まだ悪いと言えるかもしれなかった。

 というわけでカイトの指摘に生物か否かという一点で全てを同等に扱う共和国連合に一本の筋を見出しつそうになったイヴであるが、すぐに首を振る。


『ただまぁ、確かに筋は通ってるでありますが。こんな通し方はないであります』

「ごもっともで……こんなもん、もう化物と一緒だ」


 因子を後天的に付与して、魔物のコアを移植する。それは間違いなく精神に良くない影響を与えるだろう。それを抑制しようとすれば様々な投薬やらが必要になる事は明白で、コンソールに表示される情報によると、普通であれば中毒死しかねない状態らしかった。


「まぁ、ただこれを見るに薬学と生物学に関して言えば、連中のが上そうだな。こんなん普通死ぬぞ」

『それは間違いなく……ただ連邦でこんなことした日には、速攻首に刃が押し当てられると思うであります。こんなものは本官らから言わせれば、倫理観を無視したから出来た事であります』

「だーろうな。ウチだと何が飛ぶのが早いか、ってレベルだろうなぁ……」


 基本的にマクダウェル家は人体実験を非常に嫌っている。それは成り立ちから当然だったし、嫌っているのが元々カイトがマクダウェル家を興すより前から彼と共に居た古参達だ。

 そして彼に傅く古い異族達にとって自分達の因子を抽出し、他に注いで人工的に異族化する行為は禁忌に近い。特に大精霊の眷属達になれば、反乱を起こされても不思議のない行為だ。彼が何が飛ぶのが早いか、というのは本当に何が飛んでも不思議がないからだった。


「やれやれ……ソレイユ、とりあえず先輩の方は問題なさそうか?」

『ないっぽいよー。多分このエリア全体ほとんど死んでる』

「だろうな」


 これ以上は見る必要もなさそうか。カイトはソレイユの言葉にため息混じりに首を振る。というわけでため息混じりだったカイトに、ユリィが口を開いた。


『カイトー。浬ちゃんかなり暇っぽいけどどしたの?』

「あー……状況が状況だから通信は切ってる。イヴにも言って気付かないようにさせてる」

『これはまだ十代半ばの女の子に見せて良いものではないでありますからなぁ……本来は立ち入りも禁止とすべきであります。まぁ、本来そうなんでありますが、こういう事態は想定されていなかったと言うべきか……』


 本来ここは一般人が立ち入らないエリアだ。そこに来ている以上、こうなったとしても仕方がない所はあったのだろう。というわけでイヴもため息混じりだったが、そこでカイトが通信機を起動する。


「先輩。そういえば酒呑童子は大丈夫そうか?」

『なに? 酒呑童子? 何故今ここで奴の名が出る』

「そうか……それなら良いんだが」

『ん? ああ、いや……どういうことだ? まぁ、話はするが……』


 何もないなら何もないで良いが。そんな様子で通話を終わらせようとしたカイトだが、どうやらそういう事でもなかったらしい。瞬は少しだけ困惑した様子で、カイトへと酒呑童子の言葉をそのまま伝える。


『どうにもその程度の奴を見るのは気分が悪いが、気遣いには感謝しよう、とかなんとか……』

「そ、そうか。流石酒呑童子で」

『どういうことだ?』

「古い異族だと、他種の因子を他種に注ぐような行為は嫌う。それで酒呑童子もそうじゃないか、と思ってな……だがどうやら、酒呑童子にとってそんな行為に頼らねばならない程度の輩は気にかける価値もない、という所だったんだろう」

『……そうらしいな。笑ってやがった』

「あはは……ま、先輩とてそれはわかるだろう」

『確かにな……これはある種のドーピングみたいなものなんだろう。なんとなくだが嫌だな……いや、だからと否定する気はないが。勝つために必要ならやるのも手だろう』

「そりゃまた」


 おそらく酒呑童子が歯牙にも掛けない態度だからだろうな。カイトは自身の言葉に少し慌てて付け加える瞬に笑う。とはいえ、その瞬自身、こういった改造行為は嫌らしい。


「ま、良いや。どうせここら一帯この後ブラックホールに飲まれる。始末する必要もないか」

『そ、そうか……いや、確かにそうか。ここも俺達の試練が終わった後には、か』


 この施設全体がもう少しすれば崩壊する。瞬は試練のために時間が止まったような状況で留め置かれているだけなのだと改めて思い出す。というわけでそんな事を話していると、気付けばエリア一帯の軽い探索は終わったようだ。

 元々エリア全体が広いので、そこまで本格的に探索はしていない。一応なにか不審な点はないか、敵が動きそうな様子はないか、という確認だけだ。一時間かそこらで探索は終わっていた。


「これで終わりか……よし。イヴ、物品保管庫の方はどうだ?」

『実験室共々、解凍終わってるであります』

「よし……じゃ、あっちに行くか」


 これ以上ここに居た所で改造兵共の情報しかないか。カイトはとりあえず物品保管庫に向かう事にしたらしい。というわけで実験体保管庫を出る一同だが、そこで懸念された事態が起きる事になる。


『にぃ』

「あいあい……こっちでやるわ。ちょっと憂さ晴らししたい」


 ソレイユの言葉に、カイトは手出し無用と手で制する。そして直後、がこんっ、という音と共に排管の一部が斬り裂かれて、中から小型の生物兵器が飛び出した。といっても、飛び出した所でという所ではあったのだが。


「……」


 おそらく飛び出してくるタイミングも、飛び出した後に移動する軌道も全てカイトには読まれていたのだろう。飛び出した生物兵器の先にまるで置くように剣戟が走っており、まるでそれが一連の流れかのように両断され、そのまま壁に激突して消し飛んだ。そして当然、それは一度や二度では終わらない。


『……凄いであります』

『ああ』


 見てからではなく、見る前に。機械生命体にさえ感嘆され、騎士に興奮される絶技。カイトの攻撃はまるで未来予知かのように正確に、しかも一瞬先に放たれている。そうしてただの一太刀も外す事なく、飛び出した全ての生物兵器を斬り捨てる。


「ふぅ……ま、こんなもんだな」

『いえ、相変わらず流石でした』

「褒めても何も出んよ」


 イミナの言葉にカイトは少しだけ恥ずかしげだ。というわけで生物兵器の襲撃をカイト一人で切り抜けたわけだが、やはり想定された通りの展開になってカイトはすぐに話を切り上げさせる。


「っと、それはそれとしてだ。とりあえずもう一つの保管庫に行くぞ。あっちに何もなかったら、他のエリアの探索になるからな」

『ってなわけで、皆駆け足!』

「お前が音頭取るのかよ」


 ユリィの言葉に、カイトは楽しげに笑いながらも少しだけ駆け足で移動を開始する。向かうのはここと正反対の、自分達が担当したエリアだ。というわけで数分で通路を逆側の端まで移動すると、解凍の終わったらしい扉を開いて中に入る。


「これは……実験道具の予備やら何やらか。特になにかがあるようには思えんが……」

『まぁ、それは探してみないとなんとも、だろう』

「それもそうだな……とはいえ、部屋もそこまで広くない。全員で探せばすぐに終わるだろ」


 瞬の言葉に、カイトが首を鳴らしながら応ずる。部屋の広さとしては燃料貯蔵庫と同じぐらいの広さだ。そこに幾つもの実験道具が片付けられていた。というわけで手分けして部屋の中を確認するわけだが、カイトの言う通り全員で探せばすぐに遺失物が見付かった。


『あ』

「どした?」

『これ、権限のアップデートに使う奴に似てる』

「うん? これは……確かに小型の端末か」


 浬から差し出された小指ほどの大きさの小型端末に、カイトは一つ頷いて中身を確認する。幸い宇宙服とリンクさせているおかげで、手に取るだけで自動でヘッドマウントディスプレイに内容が表示された。


「……うん、正解っぽいな。これをこうして、と」


 中身に間違いがない事を確認したカイトは、そのまま端末を腕の腕輪に接続。そこから権限のアップデートを行う。


「よし……全員、こっちで小型端末が見付かった。権限のアップデートも……あれ? これ権限のアップデートじゃないな」

『そうなの?』

「ああ……これは単に研究エリアの実験室や一部の保管庫に入るための鍵だ。まぁ、似たようなものだが……なるほど。こちらだと権限とは別に鍵も必要なのか」


 小首を傾げる浬に、カイトは彼女の腕輪にも端末を接続しながら答える。というわけで一同同じように鍵の権限を付与すると、瞬が口を開いた。


『まぁ、とはいえ。これでひとまず他の実験室やらにも入れるようになったか』

「そうだな……とはいえ、今日はもうこのぐらいにしておくべきだろう」

『そう……だな。確かに気付けばもうこの時間か』


 今日の作業としては動力炉の修理と再稼働。その後は実験体保管庫の探索と、この物品保管庫の探索。これらを全て終わらせて気付けばもう予定の三時間が経過しつつあった。

 ここから戻れば、場合によっては予定時間をオーバーする可能性もあるだろう。というわけで、この日はこの後は探索せず、そのまま拠点へと帰還するのだった。

 お読み頂きありがとうございました。

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