第3959話 雷の試練編 ――刷新――
瞬の強化のため、雷の聖域へと訪れていたカイト。そんな彼らがたどり着いた雷の聖域だが、これはカイトも見た事がないという、近未来の施設のような構造であった。そうして攻略を行う前の小休止を挟んでいたカイト達であったが、そこに響いたのは妹の浬の声であった。
そうして宇宙港に似た場所を進んでいた一同であったが、手に入れた地図に表示される巨大ドームを目指して進むも、その到着直前にまるでこれから試練の本番と言わんばかりに幾つかの隊に分けて飛ばされる事になるも、幾つかの部屋を調査してなんとか戻れるだろう道を発見。テレポーテーション装置を使って、最初の拠点を設置した場所へと帰還。その後、同じようにここまでたどり着いたソラ達と軽く調査を行って、再び司令室へと戻っていた。
『ああ、なるほど。そちらはそういう判断を』
「ああ……そういうわけだから、やはりあの場所に戻れると考えて良さそうだ」
『わかりました。それでしたら、この司令室で話し合う必要もありませんね。一度全員拠点に戻り、そこで話し合う事にしましょう。瞬もそれで良いですね?』
『ああ。こちらもそれで問題はない』
アイナディスの問いかけに、瞬は一つはっきりと頷いた。結局の所なのだが、やはりカイトの読み通りアイナディスはカイト達より少し遅く、ソラ達より少し早いぐらいの時間で司令室に戻っていたようだ。だがその後はテレポーテーション装置を見付けたものの、トラップを警戒して一旦情報を集めようとなったようであった。
というわけで拠点に戻れるのならばわざわざ司令室で通信機を使う必要もない、と判断した一同は各々が手に入れた情報を手に、一度拠点へと戻る事にする。だが、全員がテレポーテーション装置を使えるようになった事で、異変が生ずる事になっていた。
「というわけで戻ったわけですが」
「なんだこれ?」
「さぁ?」
ソラの問いかけに、カイトは困ったように笑う。さて戻り着いた拠点だが、ここは最初ただなにもない広い空間だった。これは試練にありがちで、ここに荷物などを置いて簡易の拠点として攻略するように、という形式になっていた。
というわけでその流れに従ってカイト――この場合地球側に残した使い魔だが――は浬らにテントなどの一式を持たせていたわけなのだが、それは綺麗に片付けられて壁際に纏められていたのであった。
「おい、雷華。これ片付けたのお前か?」
『大変だったぞ、私一人で片付けるのは』
『そうそう。わざわざ分裂して片付けたんだから』
「大精霊の裏技をこんな事で使うなよ……」
自身の言葉に応じた二つの声に、カイトはがっくりと肩を落とす。これにアイナディスが首を傾げる。
「大精霊様の裏技? 私も寡聞にして聞いた事がないのですが」
「どこにでも居て」
「どこにも居ないという裏技だ」
「「「はい?」」」
片や大学生程度の女性。片や高校生程度の女の子。二人の女が姿を露わにして、全員が首を傾げる。前者はエネフィア側の面々は見慣れた雷華だが、地球側の面々はその前者に首を傾げ、後者は逆に地球側の面々は見た事があるのか特に気にならない様子で、前者に首を傾げていた。これに両方を見知っているカイトが苦笑しつつも説明してくれた。
「両方とも雷華だ……分身というか分裂というか。大精霊はどこにでも居る。それを利用して、地球とエネフィア両方の姿を顕現させたんだよ」
「そんなことが?」
「大精霊の裏技って言っただろ。というか、それが出来ないとどこかの世界で異変が生じて、また別のどこかで異変が生じ、またどこかの異世界では契約者が、となった時に対応出来ないだろ? そもそも、オレ達が試練に挑んでいるタイミングで他の誰も試練に挑んでない、って言い切れるかという話にもなるし……てか、こうやって二つの別々のパーティの試練を一個に纏めるって本来は駄目なんだからな」
「「……」」
あ、逃げた。二人の雷華はカイトの目が段々と据わっていくのを見て、このままだとお説教になりかねないと思ったようだ。一瞬顔を見合わせると、そのまま消え去った。これにカイトはため息を吐いた。
「はぁ……まぁ、そんな塩梅で大精霊達は分裂というか、分身というか……何人でも同時に顕現出来る。てか、出来ないとマズいってか」
「なるほど……確かに大精霊様のお仕事を考えた際、それは出来て当然というより出来なければ、という所ですか。ですがあのお姿は? いつもの大精霊様のお姿とも違う様子でしたが」
「これはオレも地球に渡るまで知らなかったんだが、大精霊は世界によって姿が変わる。その世界の風潮というか、そういうのに合わせて若干性質が変わる、という所というか……まぁ、そういう感じで性格と性質が変わるから、それに応じて姿も変わるんだ。確かセレスの所でもそうだったな?」
「はい……そういえばお見かけする風の大精霊様もソラ達が話しやすいから、敢えてエネフィアの姿を取られていたと伺っておりました」
「なるほど……」
基本ベースはその世界に合わせているが、別の世界の姿も取れるということか。アイナディスはセレスティアの返答を聞き、やはり大精霊は格が違うと思ったようだ。というわけで感心する彼女だが、同時にソラは自身も分身を操ればこそ一つ気になった事があったようだ。
「でもそれ、大丈夫なのか? 無茶苦茶大変じゃないのか? 分身って無茶苦茶キャパシティ使うだろ?」
「そもそも全部の世界を司ってる大精霊だぞ。そのキャパシティは一人二人……いや、幾千幾万に分裂した所であり余ってる。やる必要もないからやらないだけだな」
「そのやる必要がない事をここでやった……と」
「そ……はぁ。雷華、どっちでも良いが怒らないからなんで片付けたか説明だけはせい」
ソラの言葉に頷きつつ、カイトは雷華に改めての説明を求める。なお、キャパシティというのは個人がどれだけ処理出来るか、という意味だ。それが大きければ大きいほど幾つもの分身を同時に、そして複雑に操れる、というわけであった。閑話休題。というわけでカイトの問いかけに、地球側の雷華が答えた。
『うーん……見ての通りだけど』
「見ての通り、ねぇ……えらくリビング感が出たんだが?」
『リビングだけど?』
「……」
『ごめんなさいごめんなさい』
どこか小悪魔的な返答が返ってきたのだが、それにカイトが僅かに苛立たしげに頬を引き攣らせて笑うと、地球側の雷華がすぐに謝罪する。
『いつもいつも試練で皆大変にしてるから、今回はきちんとした休憩所を作ってあげただけだよ。近未来的な構造にしたから、せっかくだから、というのもあるけど』
「ってことは、扉とかは」
『まぁ、見てみなよ。損はさせないから』
「ふーん……」
どうやら少し自信作という所なのだろう。地球側の雷華の声にはどこか自信が滲んでいた。なお、こういう時エネフィアの雷華であれば鼻高々という塩梅なので、やはり地球とエネフィアの雷華では性格と性質は異なっている、という所なのだろう。
「まぁ、とりあえず。一度会議の前に全体を確認してみるか」
おそらくこのリビングで話し合う事も出来るのだろうし、この様子だと端末を使った打ち合わせが出来る会議室のような部屋もあるのだろう。カイトは雷華の様子から、それを察したようだ。もちろん、それ以外にもカイトの趣向に合わせるのならお風呂なども用意されていた可能性はあった。
というわけで、一同はとりあえずなにかを話し合うよりも前に、と刷新された拠点の調査を行う事にするのだった。
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