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真説・公園の魔法使い  作者: 弐逸 玖
うつくしヶ丘高校の校舎裏 = “おかしい”のはどこだ! =
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女子高生サフランの激怒

 華ちゃんのすぐ横、脇腹を押さえて血を流しうずくまるカキツバタさんにヒイラギさんが全力疾走していく。

 華ちゃんが泥の中、彼の胸元に無造作に手を突っ込む。


「マジックシール、封緘ふうかんっ!。――その泥の服、重いでしょ? 土は見た目よりも重いの。それだって、たったそれだけで250キロはある。……今すぐアイテムを出しなさい。それともこの場で、地下30mに封じ込められたい?」

「う、……ぐぁ」


 答えが返ってこないのを見て、華ちゃんが彼の右手を持ち上げる。

「桜。おかしいのは、これ?」

「うん、それ」

「セクションパージ。リリース」

 彼女がそう言うと右手の泥だけが綺麗に無くなる。



「華さん、魔法は?」

「簡易封緘ですが仮封印しました。結界師とは言え所詮は野良、自分では一生解けないでしょう。大葉さんに引き渡すまでだと言うなら絶対です」


「ならば安心です。……バリアアウト」

 いつの間にか華ちゃんの隣にはあやめさんが立っている。

 目の前の呪術結界の雰囲気が消える。


 いかにもはっとした様子で、私を華ちゃんが振り返る。

「いけないっ! ……桜! 仁史君は!?」

「大丈夫、多分気絶してるだけ。焦げてるのも服だけだから」

「……そう、よかった」

 華ちゃんの肩から力が抜ける。

 コイツの事、そんなに心配してくれてたんだね。ありがとう。



「時に華さん、分断結界はもう解いても良いかしら?」

「あとは人払いだけで良いでしょう。それは私がやります」

「桜さんの負担、ですか……。話はわかりますが、力は戻ったのですか?」

「二割にも届きませんがその程度なら」 


 あやめさんは頷くと、ポケットからピストルのようなものを取り出し空へ向ける。

 パン!

 と、乾いた音がして数秒後上空に、――ポン。と赤い煙が不自然に丸く凄い勢いで広がる。

 そうか、結界の中は携帯、通じないもんね。

 初めから結界解除と連絡用を兼ねたアイテム、用意してたんだ。


 一気に大葉さんの結界の気配は無くなり、代わりに――クリーニングアウト。

 と呟いた華ちゃんに包まれる感じが広がる。

 私は急に足から力が抜けて座り込む



「桜さん、この右腕が本体なのですか? 入れ墨か何かでしょうか?」

 私はぺったりとお尻を付けて座り込み、気絶している仁史を羽交い締めの形で抱えたまま、多分服か腕に本を切りとったページがあるはずだ、とあやめさんに伝える。


「見えないように服地の裏側に縫いこんであるのですね、手の込んでいること。しかもシルクの糸でキチンと封印かがり。何処でこんな知識を身につけたのでしょう。華さん、面倒なので腕ごと切り落としてしまいましょうか?」

「お姉様、そもそも腕をもぎ取る必要性が無いのでは……」


「それもそうですね、言われてみれば腕そのものの必要などないですわ。多少感情が高ぶって、わたくしも考えが過激になっているのですかしら」

「お姉様らしくも無い……。“cast pearls before swine!”。――誰が投げたか知らないけれど、“真珠”は返して貰うから」

 華ちゃんは制服の腕の部分だけを、どうやったのか簡単に引きちぎる。



「さっき死ねば良かったのに。……おめおめ生き残るなど、恥知らずにも程がある」

「本の残りの部分が何処にあるかを聞かなくてはいけませんから、結果的には死なないでいて貰って助かりましたわね」



絞り上げる螺旋(コイル・アラウンド)っ……。さぁ、言いなさい! 本の残りは何処どこっ? ……握力増大(グラップ)!」

 みしっ! 右腕に砂の筋が巻き付き、締め上げる。



 直接魔法で脳みそを爆発させたりはできない。そう聞いた。

 つまりこれは、土が腕を締め上げている。と言う屁理屈だ。

 確かにさっき、誤魔化す事も必要。って華ちゃんが言ってたな。



「ひぎぃい!」

 締め上げは徐々に強くなる。質問でも尋問でも無い、これは拷問だ……。

 そして彼の悲鳴に、華ちゃんが。……キレた!?


「たったこれしきで言葉も喋れなくなる癖に……。よくも、よくも……! ひ、仁史君に、怪我を……! しかも、この私の目の前でなど……。おまえだけは絶対許さないっ! ……握り潰す砂(ファステン)っ!」

 バキンっ! 乾いた木の枝が折れるようなイヤな音。

 ……何が折れた音なのかは当然言わずもがな。しかもその腕は上がったまま。


「おがぁあっ!」

 見たことも無いような不機嫌な顔で華ちゃんが更に吐き捨て、その腕を思い切り蹴り上げる。

「あぎゃぁあああ!」

「外道の分際で意味の無い声を立てるな。お前の声は不快だとさっき言った……!」



 彼女の目の前に砂が集まっていく。――二度とその不快な口を開かないよう、私がこの手で首を落としてやる! 

「……待って華ちゃん!」

 私の声は届かない。


 集まった砂が、巨大な首狩り鎌の形になっていく。華ちゃんがそれに手を伸ばす直前、

「お辞めなさい……」

 あやめさんがそれのを触ると、首狩り鎌はただの土埃に戻って風に舞う。


 ――土は風に削られる。


 華ちゃんの魔法をものともしない凛とした風使い、あやめさん。

 お姉様と呼ばれるのは伊達では無いな……。

 少なくても、あんなやつのために華ちゃんが手を汚すのは阻止してくれた。


「華さん。腕一本ではご不満ですか? ……気持ちは理解しますが少し落ち着く事です。いくら何でも度が過ぎます」

「ですがお姉様、この男は……!」


「いいえ。この際、一切の口答えは許しませんっ! あなたがなにをどう言おうが、これ以上は執行部の仕事ではありません。……それともまた、たくさんの方々にご迷惑をかけた上で査問会を開いてそれにかけられたい、とでも言うつもりですか? ……すこし頭を冷やすことです!」


「…………確かにやり過ぎたかもしれませんが。それでも」

「もう一度だけ言いますから聞き分けなさい。口答えは許しません、もうおやめなさい!」

「……はい。……リリース」

 バサ。男の腕に巻き付いていた砂がかき消え、右腕が一部変な角度のまま地面に落ちる。

「あぎゃあ……っ!」

 ……まぁ痛いよな、あれ。絶対。


「それにこの男は後ほど。あのとき死んだ方がマシだった、と思うことになります。わかった上で秘密組織に仕掛けたのですから、当然の報いです」

 家族でさえも皆殺し。さっきアイリスさんの声がサラッと恐ろしい事を言っていたが。

 アレは何処まで本当なのだろう。


 エレメンタラーの本当の力、こうしてみると恐ろしい限り。友達で良かった。

 あれ。今さっき、仁史の名前が聞こえたような……

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