現状でできること
「見ていらっしゃい! わたくし達ににそんな口を聞いたこと、すぐに後悔させて差し上げましてよ!」
「やってみろよ! ほれ! 喰い付かれたらストリップだぜ!?」
「クラスレス風情が、なんの根拠も無く大きな口を、叩くものでは、有りませんこと。よ! ――魔法の回復が早いのはどうしたことなのでしょう……。休みの学校、条件は最悪だというの、……にっ!」
彼に対峙する形のあやめさんとカキツバタさん、一歩下がってヒイラギさん。
そして更にその後ろ、私を庇う形で立つのは、さっき全力の結界を正面から叩き潰され、肉体的にも精神的にも大ダメージの上、充電切れで大きな魔法の使えない華ちゃん。
――桜。私の前の華ちゃんから声がかかる。
「おかしいところ、見つけた? ――探しているのでしょ?」
まだ足下は怪しいけれど、土埃を身に纏った華ちゃん。
右手に持った砂の柄、そこに少しずつ砂で出来た刃が伸びていく。
「私はあなたと仁史君を守る剣。桜が捜し物を見つけるまで。私が桜との友情にかけて。……この身と引き替えてでも。絶対に、間違い無くあなたたちを守る。だから桜は捜し物に集中して。――私を、信じて……!」
それは、クロッカス。……あなたの花言葉そのものなんだよ、華ちゃん。
……もちろん初めから信じてる。華ちゃんを疑ったことなんか、無いもの。
「桜……。アイテムは、――それの形は本当に本なの? それなら場所さえわかれば二つに切りとばすのは、今の私でも簡単なことだから……」
形、そして魔法。
強力な魔法だと紙単体では持たないと言ってたが、アイテム自体は本だと聞いた。
そして強力すぎる魔法はクラスレス程度では当然手に負えないはず。
「カキツバタさん、援護を! ……ダート!」
あやめさんの声と共に、空気が凝縮され風の羽を纏った無数のダーツがニヤニヤ笑いの男へと飛ぶが、当たる直前に全てただの空気へと戻る。
さっきのカキツバタさんのウォーターランスも。
相殺ではもちろん無く、破壊でも無く、弾いている。
「へっへ……。だからどうにもなんねぇんだって!」
「アヤメ、左っ! ヒイラギ、あたしの正面を焼けっ! ――アヤメ、大丈夫か? ちくしょうっ! 力の出所が見えねぇ!」
自身への攻撃を躱しながらも私の前に耐呪術用の結界を張り、ほんの少しでは有るが効果がある為に、それを補修し張り続けている。
あやめさんの消耗が目に見えて大きくなってきた。
「華ちゃん、アイツのアレは魔法用の結界なんだよね?」
「そう。カキツバタのウォーターランスまで弾くなんてグレード3並み。でも、そこまで能力が高いなら、逆にキチンと教育を受けない限り高位魔法と高位結界、両方なんて使えないはずなのに」
「野良で発生する可能性が低い?」
「四元素魔法と時空魔法は同時発動すると、論理的に矛盾するの。発動時に理論衝突した時の誤魔化し方がわからなければ、両方同時には使えない。……勉強と修行は絶対必要になる。一人では難しい」
魔法使いや結界師の使うエネルギーは人の意思。そして当然術を使えばそれだけ減る。
でも自分の得意な術を使う限り消耗は最低で済むんじゃないか?
ニヤニヤ笑いながら相当にレベルの高い結界を張り続けるとすれば。
それは結界師なんじゃないか?。
「対魔法結界と言う事は、単純に石を投げたらあたるって事?」
「うん。ただ当たる前に魔法で打ち落とされる。アイテムからの魔法、それから派生した結界だとすれば、無意識下コントロールの自動迎撃回路くらいは備わってるのが普通なの」
そんな面倒くさい機能があるのか……。さすがは一〇〇人殺した呪いのアイテム。
「せめてアイツの属性とアイテムの場所さえわかれば、私とお姉様に加えて、カキツバタまで居る。それこそどうとでもなる」
振興会のエース三人そろい踏み。
なのに、私と仁史のお荷物二人を抱えこんで、手を出しあぐねてる……。
仁史は気を失って完全にお荷物状態だけれど、これだって華ちゃんとあやめさんを、身体を張って守った末のこと。
おかしなところを“見る”ことができなきゃ、私は本当にただのお荷物じゃないか!
華ちゃんのバディだというならば。
なにが問題か考えろ、私!
おかしい、と思うことができなければ。おかしく無いなら、気がつけない。
見ることができないんだから。
仁史は確かに現状、お荷物だけど。でも会長が期待した役割はもう果たしてる。
私は……!




