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真説・公園の魔法使い  作者: 弐逸 玖
うつくしヶ丘高校 本校舎三階の図書室
41/66

魔法使いのワーキングランチ

「言葉が半分、分からなかった、とそこだけ嘘を吐いたの。あとはもう一度教えて貰って、やれば出来るじゃ無いか。初めからそうしなさいと褒められた」


「必要以上に虐められた様子もないし、内容も理解出来たなら良かったな、サフラン」

「はい。……数学は本当に仁史君のお陰なの。ありがとうございます」

「いや、はは……、俺は特にはなんにも。元々サフランの出来が良いんじゃねーの」


 なんか農家の会話みたいになってるぞ。今年のサフランは出来が良くってねぇ。見たいな。

 ……鼻の下伸ばしやがって。



 時間的にはいつものお昼休みより少し遅い時間。

 図書室のある特別学習棟Aの横。日陰にあるベンチ。

 既に大葉さんが人数分の缶ジュースを並べて待っていてくれた。



「ガス欠のアイテムを持ち歩いてる、かぁ。考えは悪くない。だが種類がわからんとかえって厄介だぁな」

「そうと決まったわけでも無いのですけれど。但し、仮にそうだとすると魔法被害の計算がまるで立たなくなりますわ。それこそ何かの拍子に魔力吸収が始まってしまえば……」


「なにしろその辺は“百人殺しの魔道書”だ。そうなりゃ、人知れず処理をする訳には行かなくなるぜ? ……困ったもんだ」

 あっと言う間にコンビニ弁当を平らげた大葉さんは、おにぎりの封を切る。



「あそこって場所としてはどうなんですか? なんか魔法を使いやすい的な……」


「ところが何もぇんだな。ごく普通。第2体育館裏の方がよほど良い感じにパワーが集まる。人が来ねぇって言ったら、あっちの方は不良さえ行かねぇからな。直接見える窓もねぇ、完全な死角だ。魔法陣を仕掛けるなら、俺ならあっちを使うね。まぁ日も当たらねぇ、風通しも悪ぃってんで、今んとこナメクジとダンゴムシしか居ねぇんだけど」


「今日は図書館から気配だけを探っていました、そこで一つだけ。気になることがあったのですが」

 あやめさんは、小さな漆塗りのお弁当箱を包みながらそう言うと、ポーチから手帳を出して簡単に地図を書き始める。


 なんて分かり易いメモだろう、字もやたら綺麗だ。

 この人達、何処まで才能にあふれているの。一緒にいると折れたりヘコんだり。

 こっちは毎日大変なんですが、その辺は……。


「この辺りです。いわゆる古代陰陽道様式の民間変態系では無いかと思うのですが、魔術痕を感じました。正規表現でもありませんし、何より学校ですからコックリさん的な何かを過去に行った時に偶然魔力が乗っただけ、なのかも知れませんが」

「わかった。メシ食ったら調べてみよう。あとはなんかあるか?」



 ――大葉さん教えて? 私が手を挙げたのを大葉さんは不思議そうに見る。

「なんだ? 神代ちゃん」

「アイテムを充電する時って必ず魔法使いでないとイケないの?」


「魔力充填の方法、な。ん~。色々、だなぁ、スマホ、タブレット、モバイルPC。似たようなもんだがみんなアダプターやケーブルの太さ、差込の形とか違うだろ? そう言うもんだと思ってくれ。魔法使いのみが必要な物もあれば、魔法使いは全く必要でない物もある。一口には言えねぇんだよ」

「桜、何を気にしているの?」


「うん、本当は魔法使いが吸い上げたエネルギーは、その場で使うんだろうけど。もしも魔法使い無しで携帯バッテリーみたく保存出来たら、あとでまとめて急速充電出来るよね? 魔法を発動するのでは無くてあくまでバッテリーに保存するだけなら」

 大葉さんは、空弁当とビニールを袋にしまって袋の口を縛る手を止める。



「面白ぇな、神代ちゃん。……魔力マジカルの落とし穴(・ピットフォール)か。近所を歩く人間からほんの少しずつ意思を吸い取らせる。効率が悪すぎるから普通は使わねぇが、結界術の初歩さえ知ってて材料が揃えば術自体は簡単だ。ならば時空の傷やら魔術痕やらを探しても何も見つからねぇ、確かにな。しかも発動しているんなら結界や封印ですら無ぇ。それこそ落とし穴だ」


「もしそうだとして、媒体はどうするのです? 学生が簡単に入手出来るものなのですか? マジカルピットフォールは確か正式にはひのきの一枚板に封入陣を……」


「あぁ、アヤメちゃん辺りは知らんかも知んねぇな。俺が振興会に来た辺りの頃だ。アメリカの廃校になったハイスクールで大規模な魔法爆発があった。公式には不良の悪戯によるガスボンベの爆発として処理されたが、実際には校内に放置されたウィジャボードを媒体として偶然マジカルピットフォールの回路が形成され、たまりにたまった魔力が容量限界で吹き出したのが原因だった」


 ゴミを入れたコンビニ袋を一度テーブルの上に置く。

「特になにも魔法処理なんかされてない、単なるウジャボードと、そして偶然貯蔵庫になった、ただのロッカー。それが建物一つ吹き飛ばしたんだよ。まぁ、あーゆー場所は洋の東西を問わず、若者は大好きだからな。時間をかけて良いなら、人さえ来れば魔力はどんどんたまる。特に暗い思念がバンバン穴に落ちていく」

「……つまり」



「あぁ、仮説はこうだ。……誰かがデカめに落とし穴を掘った、そして魔力反応が消えたんじゃ無く、アイテムの封印をあえて切り、充電されていた魔力をその穴に移した。吸い込ませたって方が表現としては近いかね。その瞬間だけ魔力が感じられたと言う事だ。結界の反応がチャチいのも説明がつく。大規模に魔力を突っ込んだピットフォールが吹っ飛ばねぇ様に制御するだけなら素人に毛が生えたくらいでも……」


 その場の全員、言葉を失う。

 思いつきで言ってみたことではあるけれど、……つながった?

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