初めての学校 初授業
「……改めて言って置きますが、これはこの先、考え方として非常に大切になるから間違いなくノートを取って、後で自分でもう一度見返しておくこと。私の体で見えなかった人も居るでしょうから、黒板を消すまで2分だけ待ちます」
静かな教室、紙とシャープペンやら鉛筆の芯が擦れる音と消しゴムをかけて机がカタカタ揺れる音。
とてもそうは見えないと、事あるごとに毎回言われてその都度、心外なんだけど。
私は字が綺麗で書くのも早くかつ、書きながら先生の話だって(重要と思われる部分のみ)キチンと聞いて、板書以外もノートに書いていたりする。
だから既にノートは取り終わっている。
あとで見た時思い出せるように、マーカーで色付けて分かり易くしておくか。
なんとなく右隣を覗く。
学校、初めてだって言ってたけど。
華ちゃん、大丈夫かな?
ノートを開いてシャープペンを握ってあまり綺麗とはいえない字で
『きほんてきな考えかた』
と左隅にかかれたノートを開いたまま、姿勢良く微動だにせず座っている。
『あの、華ちゃん?』
小声で話しかけてみる。
もしかすると、高校程度の勉強なんか莫迦らしくてやってられないのかも知れない。
昨日だって。
水蒸気爆発の規模と爆発方向を計算した上で水の玉を制御し、爆発で新たに発生した水分で被害が広範囲に広がらないように膜を作りつつ、更に飛び散った水でダーツを作って、しかもそれが致命傷にならないように視界ゼロの中、軌道を誘導して野良魔法使いの動きを止めた。
言葉にするだけでこれだけ長ったらしくなることを。1秒以下で全てやってのける。
しかもその水の魔法は彼女の専門外と言う。
普通に考えてもそんなの、普通高校の物理や数学がなんかの役に立つとは思えないが。
『桜、あの』
『なに? 気分が悪いとか?』
私と仁史の護衛も結構だが、自分をないがしろにしがちな彼女である。
そこは私が面倒見てあげなくちゃ。
『いいえ、あの。……何をすれば良いのかわからなくて』
そうだよ! 彼女、学校は初めてなんだ!
と言うことは。ノートの取り方だって、知ってるわけがない。
今、書いてあることだって、約10分前に、
「ノートを新しいページにして“基本的な考え方”と書きなさい。これから説明する部分はこの先も非常に重要だから何度も見返せるように間違いなくノートを取るように」
と言われた、その冒頭部分だけ理解して書いたんだな、これ。
「神代さん。私語は慎みなさい。……? どうかしましたか?」
「いえ、先生。華ちゃ、……サフランさんが書き取りにちょっと難があるので……」
「内容の問題ではないのですね? ――よろしい。では机を寄せて大きな声にならないように教えてあげなさい。板書はもう少し残します、皆さんは次のページを開いて」




