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真説・公園の魔法使い  作者: 弐逸 玖
特殊技術産業振興会二階の応接室
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魔法の概念

「だから。なまじ魔法の使い方を知っていた私は、お姉様には心の底から絶対服従を誓わされたし、それを認めて貰えるまで。それはもう、言葉にできないような目にあった」

 ……言葉にできないって。

 そういう表現がフィットするような目にあったの? マジで?


「でもそれは、桜が眠れなくなってしまうから話さない。……うふふ」

 アヤメさんの『お黙りなさい!』の声が耳の中に蘇る。

 うふふ。じゃないよ……。そんな怖い話。絶対聞かない、聞きたくない!



 ――ふむ。でもさ。

「それなりに対抗出来たんじゃないの? 華ちゃんだったら」

 さっきだって得意じゃ無い、全力じゃ無いと言いながら。

 野良の彼を簡単に吹っ飛ばしている。


「それは寝る前にするには結構面倒くさい話なのだけれど」

「そこは聞かなきゃ、もう気になって眠れないよ!」



「うーん。簡単に魔法の属性のことはエレメントと言って、……土、風、火、水の4大元素エレメント、これに時空のエレメントで基本5種。魔法の理論はこれを基盤に考える。これが大原則。良い?」

「五種類、あるんだね?」


「そう。……時空のエレメントは結界師の使う結界術のことでもあるけれど、これの説明は、今はしない」

「あれ? でも華ちゃんは結界も使うんだよね?」

「だからランクに+が付いてる。結界師はまた別に階級があるの。まあ、それはそれとして。――4エレメントの4すくみって言ってね……」




 ――土は水を吸い込む。だから水の魔法は土に飲み込まれる。

 ――水は火を消す。だから火の魔法は水に打ち消される。

 ――火は風で勢い付く。だから風の魔法は火に取り込まれる。

 ――風は土を削る。だから土の魔法は風にそぎ取られる。




「さっきの野良は炎使い。だから私の事を自分より少し力の強い風使いだと思って居たので余裕があった、と言う事」

「なるほど。で、アヤメさんの封印破っちゃったから、実際には人間とアブラムシくらいの差があった」


「その話はもう……。それに、実力差はパワーだけでは無いし」

「でもお陰で私達に矛先が向かずに助かった、そう言うの、ちゃんと言った方が良いよ? 私からも言っておくよ。誰に言えば良いの? アヤメさん?」

 ――その時はお願いします。封印の話になると、途端に萎縮しちゃう華ちゃんなのだった。


「力の差をおけば、逆属性以外は公園で華ちゃんが言ってたみたいに、フィフティフィフティなんだよね?」

「き、聞いてたの……。まぁ、それならそれで話が早い。そう、その場合。普通は単純な力比べになる。実はそれも技術介入の余地は大きくあるけど、表面上は。ね」


「でも華ちゃんは四つ全部使える、強い!」

「あそこでも言ったけれど、水と火が得意で無いのは本当よ。制御が完全に意のままに出来る魔法については力の大小に限らずエレメンタラーを名乗るの。私は元々、土のエレメンタラー」


「でも風のエレメンタラーでもあるんだよね?」

「そこで私が約3年前に非道い目に遭った話に戻る。私は風の魔法をお姉様に教えて貰った」

「土は風にそぎ取られる。だっけ? ……って事は、つまり」


「あの男と同じく、あの頃の私は逃げ切る自信があった。なんなら鬱陶しいから返り討ちにしてやろうくらいには思ってた。自分で言うのもなんだけど、素の状態でも力はかなり強かったし、見破られたこともないと思ってた」



 マーケットで、大の大人を向こうに回して大立ち回りができたのは、魔法が使えたから。

 しかもかなり強力であるのだが、彼女を追う大人達は魔法が使われている。

 などとはそもそも、考えさえしない。


 但し一部の人間は気が付いて、日本の振興会に話が届いた。

 マーケットに野良魔法使いの日本語を話す女の子がいる、と。

 アヤメさんはそれを確かめに行ったのか。



「でも大原則は揺るがない。土は風に削られる。……お姉様は当時でもクラスB+。その頃から4元素に加えて結界まで、全てを使いこなせてほぼマルチエレメンタラーだったけれど、一番の属性は風使い」


「つまり華ちゃんの土の魔法が効かなかったと」

「もうまるで。……あとは何処をどう話しても“恐ろしい話”にしかならないから話はここでお終い、ということね」

 そう言うと華ちゃんは仰向けになって身体の力を抜いた。



「桜、もう寝ましょう。近いとはいえ明日は少し早めに行かなければいけないのだし、私は学校とかそう言う所は初めてだから。少し体力を温存しておきたい――それに」


 すうっ。優しく華ちゃんが私の頬を撫でる。

「きっと桜は凄く疲れているはず。無理はしない方が良い。……明日も結局、私のことで苦労をかけてしまうのだし」


「そんな事無いって。……でも、確かに疲れてるんだろうな。――うん、おやすみ」

 照明のリモコン。全消灯ボタンを押す。


 電気を付けっぱなしで寝ることもしばしばなんだけど、今日は華ちゃんが居てくれるから真っ暗でも怖くない。


「おやすみなさい」

 布団の中、手を伸ばすと華ちゃんはそっと、優しく手を握ってくれた。

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