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真説・公園の魔法使い  作者: 弐逸 玖
特殊技術産業振興会二階の応接室
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アルバイトの勧誘

「火急の用件でなければ後にして頂けますか?」

「お姉様、クロッカスです。戻りました」

「ふぅ。……良いでしょう、お入りなさい」

「失礼、します」 


 ごく普通に、――実は監理課の報告を受けて総務から記憶処理に一部変更の。と言いながらクロッカスが戻って来るが、その後ろ。

 扉が閉まりきる前に、いきなりノックと共に扉が全開になる。




「ただいま! アヤメちゃん、お客さんはもう返しちゃった?」

「思ったよりも遅くなってしまった。すまんね、アヤメ君。……政治向きの仕事はこれだから。私の勤務時間は9時5時だと何回も言っているのに……」


 ふわふわのウェイブのかかった金髪に碧眼、パンツスーツのお姉さんと、スーツにネクタイの人の良さそうなおじさんがドアをくぐる。



「お疲れ様でございます、会長。お帰りなさいませ。……わたくし一人ではどう対処して良いものか、対応に苦慮をしておりました。助かります」

 アヤメさんは立ち上がってお辞儀をすると、そのままソファの前からどけて、クロッカスの隣へと下がる。


「アヤメ君、色々ご苦労様。――話は来る道すがら聞いた。キミ達が神代さんと南光くんだね。私がここの責任者、会長の松埜まつのだ」

 おじさんはそう名乗ると、それまでアヤメさんの座っていたソファに座る。


「私はイリス・ホランダリカ。アイリスって呼んでね。一応会長の次ってことになるのかしら、その辺の序列はウチは適当なんだけど。一応役職は東京本部長、経理と総務の部長も兼ねるってことになってるの、よろしく」

 金髪のお姉さんも、会長に続けてそう言うと隣に収まる。……外人さん?


「ところでアヤメ、カキツバタは?」

「今のところは戻られていません、状況から鑑みてまだ京都なのではないかと」


 金髪碧眼でナイスバディ。と言うと、やたらにけばけばしいイメージだが、実際の第一印象は白い肌も相まって逆に質素。

 なんでだろう、顔立ちが東洋人だからか? ハーフ、なのかなぁ……。


 とにかくそのアイリスさんが目の前、会長を名乗った松埜さんの隣に座り、背もたれに体を預けて足を組む。




 やったのはそれだけ。行動を取り出せば全くおかしくない。

 のだけれど、目の前にいるのはナイスバディのアイリスさん。


 シャツはボタンが二つ開いているのにそれでもまだ窮屈そうだし、上着の会わせも、座るときボタンを外さなかったので、完全に浮き上がってる。

 こんなすごいおっぱいを、こんなに間近で見たのは始めてだ。

 女の私だって思わずに気に掛かる。仁史の目はもう釘付けだ。


 なんなんだ、ここんちは! 

 美人に美少女のテンプレートを次から次と出してきてさ。


 私になんか恨みでもあるわけ?

 私の心を直接へし折りに来てるの? 

 ここはモデル事務所かなんかじゃないの? 本当は。


 それだと。私が連れて来られた意味が、本格的にわかんないけどさ……。




「昨日終わったって言ってたのに。まだ何かやってんのかな、あの子。――ところで会長、早く段取りを付けないと。まもなく七時ですよ?」

「あぁ、そうだった。――もう今日はこんな時間だ。アヤメ君。まずは車を2台用意して、二人を家まで送ってあげる段取りを。細かい話は明日以降で良いだろう」


「但しクロッカス、あなたはたった今から神代さんに同行して。24時間体制で護衛をお願いするわ。――アヤメも構わないわね? 予定を前倒しして先ほど入学手続は済んだから明日から学校も一緒。ごり押ししてクラスも一緒にしておいた。寝る場所は、護衛なのだし取りあえず当面、神代さんのアパートの玄関でも貸して貰いなさい」


「はい、その辺りはどうとでも。――でも。しかしアイリス、桜さんの都合も……」

「暫くは諦めて貰うほかないわ。ごめんなさいね神代さん。――クロッカス、直ぐに準備を始めて? そうで無いと神代さんが帰れなくなってしまうでしょ?」

 ――はい、すぐに。そう言ってクロッカスは応接から姿を消す。


「あ、あの私は全然……」

 玄関って、犬じゃあるまいし。……六畳と四畳半、2kの我が家。昨日たまたま掃除しておいて良かった。

 お客さん用の布団なんか無いけど、どうしよう。


 ……でも、護衛?



「それとアヤメ」

「なんでしょうか?」

「あなたも編入手続き書類の受理が間に合った。明日からうつくしヶ丘へ通学しなさい。あなたは学校に居る時は当初の予定通り。そのほか南光君の登下校時の護衛もお願い。……諜報課とは別行動で内定を。接触の必要は無い。むしろ基本的に接触は避けて」


「わかりましたアイリスさん。――会長、興味本位でお伺いします。もしかすると会長は、このお二人の事を?」

「まさかね。知らんよ。……ただ二人の様な存在が顕現するという予言、と言うか予想はだいぶ前からあった。まさか我が国のこの時代、此所とは思わなかったが」


 会長と呼ばれた優しそうなおじさんは、口元に手をやって考え込む。


「それと二人は、明日から振興会うちに“アルバイト”に来てくれないかな。――申請だけすれば、学校にはこちらから話をするから心配はしなくて良い。5時から8時までの3時間だ。基本的に何も仕事は無いのだが、当面はなるべく我々の近所に居てくれた方が良いと思うんだ」


「あの、会長さん。……さっきの護衛というのは」


「言葉通りの意味だよ。アヤメ君から聞いたと思うがキミ達は希有な存在なんだ。まだ誰も力の発現には気が付いているまいが、いろいろ知ったうえで、慣れておいて貰わないと有事の際に守り切れない。キミ達はある意味秘密兵器なのでね。キミ達に守って貰う局面だって最終的にはあるかも知らんしな。……いずれ、関係者全員が顔見知りの方が良い」


「何かがあるとも思わないけど、先ずは魔法使いのいる環境に慣れておいて貰わないとね。――そうだ。アヤメ、紙とペンを二組。うん、ありがと。……二人共、ここに住所と、電話は携帯で良いわ、それと漢字で名前を書いてふりがなも。あとSNSのIDね。銀行の口座は持ってるかな? ――うんじゃあ今、銀行のカードはもってる? ……そう、それそれ。その番号、電番の下に書いてくれる?」


 なんとなく二人共、アイリスさんの勢いに押されて名前と住所をコピー用紙に書き込む。

「これは、いったい」


「実法学院はうるさいから、アルバイトを雇用した旨、お役所ではんこ貰って学校に報告しないといけないの。何よりキミ達にお給料、払わなくっちゃいけないしね。15日締めでお給料日は23日ね。……今日の分もカウントするから。――ん? あぁ。これでも私、振興会ここでは事務屋さんのトップなのよね」

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