ぼく達と大切な場所
夕です!
こうしてぼくは天界へ、カナタは魔界へ帰るのを阻止された。
「リ゛ュガーー、ガナダーーー、お前らがいなくなったら俺どうしようがど………」
涙と鼻水でぐしゃぐしゃな顔して、ガネルが飛びついてきた。
「「よるな」」
「ひどい………」
そう言いながらもガネルはへへっと笑っていた。
「しっかし、まんまと騙されたなー」
「だね。これはまたお返ししないと………」
「そしたらこっちのお返しするわよ」
「2人には負けませんよ」
この会話の意味。つまり、ずっと一緒にいるということ。
「そういえば、ここどこ?」
「寮の倉庫です」
「本格的だろ?」
復活したガネルが話に割り込んできた。
立ち直り早っ。
「いつまでも、こんなとこにいてもさー。場所変えよーぜ。どっちか転移して」
「あ、じゃあぼくが。ほれ、手繋いで。――――時間を繋ぎ我を導け――――《転移》」
ぱっと場所が変わる。
「きゃっ、ここ………屋根の上!?」
「そうだけど?」
「危なくないですか?見つかったら困りますし」
「俺達、よくここで話するけど見つかったことはないぞ」
まず1番にカナタが足を伸ばして座る。
ぼく、レナ、リルと続いて、最後に高いよー、怖いよーとカナタにくっつきながらガネルが座った。
「それにしても、2人が人間じゃないとはねー」
いきなり話を主題に持っていったのは、レナだ。
「ギオウがバラしちゃった時は、ビックリしたわよ」
「あの時は、もうこのままじゃいられないって思ったんですよ。でもね、ガネル君が言ってくれたんです。“あいつらはあいつらだろ?”って。確かにそうですよね」
「「??」」
よくわかんない………。
「次期神だろうが、魔王だろうが、一緒にいて楽しかったって事よ!!」
顔を真っ赤にしてレナはばくをドンッと押してきた。
「わっ……お、落ちるだろ!!」
それにしても、ガネルがそんなこと言ったのかー………。
ちょっと見直した?
「もう、リュカとカナタがいないないなんてありえないって言うか………」
ガネルも照れながら、言葉を繋いでいく。
「えと……なんて言ったらいいのかな………、ずっと一緒にいてください!!………?」
全員沈黙。
「え、え……と、今の告白?」
「違うわっ」
『何が違うんだ?』
そこへ誰かが後ろから声をかけてきた。
振り返ると。
「あ、ミオ」
「おー、お前も入るか?」
人型のミオが立っていた。
ぼくとカナタは人型を知ってるからいいんだけど、3人は頭に?を浮かべている。
「ミオって……あのミオ?」
「あの……ネコさんですよね?」
「ええっ?あのちっこいのがミオで、こっちもミオで!?あ、でも声は同じだから……!?」
あーあ、ガネルが壊れた。
『もう光の属性神とバレてしまったからな。ウィンドキャットはこりごりだ』
えー………、かわいかったのに。
『そういえば、ギオウも一緒なのだが……どこへ行った?ギオウのやつ、異界でだいぶ落ち込んでたぞ』
『ここだ』
声のしたほうにみんな一斉に顔を向ける。
ギオウがいたのは、ミオの頭の上。まだウォーターウルフの姿をしている。
「ギオウ、姿戻せば?」
カナタが言っても、ギオウはフルフル首を振るだけ。
『酒でおかしくなってるのを見られて、恥ずかしいらしいぞ』
みんな、ああ!!と納得する。
「えー?かわいかったですよ?」
リル様ー、火に油注いでますよー。
『むぅ………』
結局ギオウも元の姿に戻った。
だけどその際ミオの頭の上にいたもんだから、ミオが潰された。
『何をしている!!』
『元に戻っただけだが』
『私の上ではないだろう!!』
『なんとなく、潰してやりたかった』
『………えぇ!?』
やっぱ姿変わってもそのままだな。
そんな騒ぎが落ち着くころには夕日が沈もうとしていた。
「キレーだな………」
「人界サイコー!!」
「え、魔界とか天界って夕日ないのか?」
ガネルの質問には、
「「…………さあ、どうでしょう」」
答えてあげない。反応が面白いからね。
―――――と、また誰かの気配がした。
ここにいる7人以外の、そんなに強くない気配。
ぼくのよーーーーーーく知ってる気配。
「リューーーカーーーー!!」
「ぅげっ………」
やっぱり。向こうのほうから屋根の上を走ってくるのは、そう、親父だ。
親父ははぁはぁ息を切らしながら合流した。
「なぁーんでいるのかなぁ?」
「ベルを撒いてきたんだよ」
テヘッと笑う。わあ、またかよ☆
そこでリルがはっと気付いた。
「あの………リュカ君が次期神なら、グリルさんは現神様なんですか?」
「確かに、そうね」
「えー?この人が!?」
ガネルの言葉にしっかりショックを受けている、バカ親父。
「そうだよ………、僕が現神様だよ………」
また騒がしくなったのに、カナタだけは渋い表情になっているのに気付く。
「どしたの?」
「いやー、こんだけ集まったらぜぇっったいもう1人来るやつがいるよなーって」
そんな人いたっけ?
「りゅか、覚えてないな?いるだろ、名前忘れたけどあいつ………」
『私は覚えているぞ』
『我も覚えている』
えぇっ!?………あっ、あいつだ!!
レナ、リル、ガネルも加わる。バカ親父は知らないみたいだから置いといて。
「とりあえず、せーのっで名前呼ぶか?」
「いいわね」
「そうですね」
ガネルが掛け声をかける。
「せーーーーのっ!!」
「ビスコー!!」
「ヴィスカー!!」
「バスケットー!!」
「ビスケットさーん!!」
「ヴィーストー!!」
『ヴィルドー!!』
『バストー!!』
なんかいろんな名前が叫ばれましたよ?
暫くの間間があって………どこからか返事が返ってきた。
「私は、ヴィストだぁ!!」
たくさんの笑い声が響いた。
今日、ここにおかしな学園が出来上がりました。
そこは、仕事におわれた魔王様や、父親から逃げてきた次期神、吸血鬼や属性神、神までもが集まる学園です。
そしてこの学園は、全ての世界の者が笑いあえる、大切な、大切な場所なのです。
これにて完結!




